　僕がどうして無理になったか、あなたにはわからないでしょう

　一言で言うなら、あなたが困っていなかったから

　僕が困っていることで、あなたは困っていなかったから

　僕が痣を作っていることは、あなたもとっくに知っていた

　僕が血を流している理由をあなたはもちろんわかっていた

　あなたが歩く動線に僕がたまたまいたのが悪い

　あなたが腹いせに投げたナイフの軌道に僕が入ったのが悪い

　僕が豆腐くらいの硬度のままに甘んじていたのが悪い

　僕の痛みはあなたの痛みではないから

　あなたは何も困らない

　困ってもいないのに習慣を変えなきゃいけないなんて、理不尽で面倒で、僕の身勝手な要求でしょう

　あなたが通るこの位置にしか

　ナイフが届くこの位置にしか

　僕が身を置ける場所はない

　重い鎧は僕を潰してしまうから、僕は裸でいるしかない

　どうか僕を踏まないでください、ナイフを投げないでくださいと

　上目遣いに懇願するだけ

　困っているのは僕一人

　あなたは全然困っていない

　僕を救えるのはあなただけ

　困っていないあなただけ

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。（ログインが必要です）

新規登録で充実の読書を

マイページ: 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる; 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める; フォローしたユーザーの活動を追える
通知: 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴: 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい