63 おうちデート②

 マジですか……?

 いやいや、先生……ゲームめっちゃ上手いんだけど……?

 こんなことがあってもいいのかよ……。


「よっし! 勝ったぁ〜! ふふっ、弱いね〜。あかねくんは」

「ええ……、先生今日初めてって……」

「うん。初めてだよ?」


 勉強だけじゃなくてゲームにも才能があったってことか。

 やっと操作を覚えたのに……、先生がカッコいい技を使っててすごい実力差を感じる。最初から勝つのは無理だったかもしれないな。でも、全部負けるなんて……俺こんなに下手くそだったのか。そばからニヤニヤしている先生を見ると、なぜか悔しくなる。


 で、俺に何をさせるつもりだろう……。


「またやる?」

「いいえ、俺の完敗です」

「ふふっ♡」

「みなみさん……、なんか嬉しそうに見えますけど……?」

「あははっ、そうかな? でも、事実だから仕方ないね〜。あはははっ」


 てか、めっちゃ笑ってるし……。

 何を考えているのかよく分からないけど……、なんかやばいことを言い出しそうな気がする。


 先生の顔、今めっちゃやばい。


「じゃあ、私が勝ったから何にしようかな〜?」


 さりげなく手を重ねてくる先生。


「…………」

「うん! じゃあ、頬にチューして!」

「…………」

「ダメ?」

「はい……。ダメです……。それはちょっと……」


 先生、今何を言ってるのか分かってるのかな……?

 頬にチューだなんて……、できるわけないだろ。


「そう……? ダメなんだ……」

「…………」


 また、あの顔……どうしよう。

 俺が断ると、先生はすぐネガティブモードになってしまうからな……。まさか、頬にキスされたくて頑張ったんじゃないよな……? いつもと違って今日はテンションが高かったから……。そして、今は膝を抱えたまま俺のそばでじっとしている。


 ええ……、そんな恥ずかしいことをさせるなんて……。


「…………なんか、死にたくなった。どうして生きてるのかもう分からなくなってきたぁ……」

「ええ……? い、いきなり!? み、みなみさん……?」

「だって……、頬にチューされたくてめっちゃ頑張ったのにぃ……。ダメって言われたから……」


 ちょっと……、泣きそうな顔をしてそんなこと言わないでくださいよぉ……。

 やっぱりやるしかないのかぁ……。


「生きがいを失っちゃった……」

「はいはいはいはい! やります! やりますから! そんなこと言わないでください!」

「本当に!? やってくれるの? じゃあ、両方お願いします!」

「片方だけですよ」

「ええ……。せっかくだし……」

「みなみさん、それ以上言ったらなかったことにします……」

「うん!」


 いつも緊張して目を閉じてしまうから……、この距離で先生の顔を見るのは少し苦手だった。本当に綺麗な人だ。肌も綺麗し、長いまつ毛とか、薄桃色の唇とか、これはやばすぎる。どうして、星宮先生はこんなに綺麗なんだろう……。


 うわ……、恥ずかしすぎて死にそう。

 そして、なんか暑くなってきた。


「じゃあ、本当にこれだけですよ。それ以上はダメです……」

「は〜い」

「…………」


 彼女でもない人に……。しかも、学校の先生に……キスを。

 数秒間、息ができなかった。

 唇が触れた時のその感触はなんっていうか、すごく不思議で……心が痛い……。先生のこと、俺は……やっぱり先生のこと好きかもしれない。先生はみおと違って、俺の家族じゃないから……、先生と一緒にいる時は、その時だけは……、別の世界にいるような気がした。


 先生の優しさに……惹かれる。

 なんで、こうなってしまったんだろう。


「…………えっ?」

「…………」


 頬にキスをしてすぐ先生から離れようとしたけど、なぜか俺の首に腕を回す。

 近い……、これじゃ離れないけど?


「み、みなみさん……?」

「あのね。あかねくん」

「は、はい……」

「もし、ここであかねくんにキスをしたらあかねくんはどうする……?」


 これ以上は本当にやばいと思ってすぐ先生から離れようとしたけど、足が滑って床に倒れてしまった。

 マジかよ。もっとやばい状況になったような……。


「ふふっ」


 先生に襲われて、先生の髪の毛が俺の顔に落ちる。


「あら……、ちょっと恥ずかしい体勢になったよね?」

「あ、あの……。す、すみません」

「どうして謝るの? 謝らなくてもいいよ……」

「は、はい……」


 空気が重い、そして先生は俺に何をするつもりだろう……。


「実はね……。さっき、あかねくんの半裸を見た時……、ちょっと……」

「えっ?」

「こんなことよくないって知ってるけど、それでもね……。すっごくドキドキしたから、それが頭の中から消えないの」

「…………」


 この体勢でそんなことを言うんですかぁ……。


「み、みなみさんは何が……したいんですか? 今…………」

「ゲームをする前には……。チューしてくれるだけでいいと思ってたのに、もっとやりたいっていうか……。我慢できないっていうか……。えっと……、あかねくんのことがもっと知りたいっていうか……」

「…………それって、つまり……」

「このままキスしたい……。あかねくんはどう……?」

「…………えっ?」


 先生の家でキスだなんて……、それはドラマとかでよく出る。あのキスだよな。

 さっきのことと違って、唇と唇が……触れる大人のキス。


 待って、マジかよぉ……。


「あかねくん」

「は、はい」

「どうしたい?」

「お、俺は……。その…………」


 どうしたらいいんだろう。

 それはダメって……、それ以上はダメって、先生にちゃんと言わないと……。


「ふふっ。私がこんなことをするの時はいつもダメですって言ってたのに、なんで今はすぐダメって言わないの? それって……」

「…………」

「やってもいいってことだよね?」

「…………」


 本当にどうしたらいいのか分からなかった。


「…………っ」


 何も言えなかった。

 そして、先生にキスされる。

 俺は目を閉じた。


「…………」


 なんか……、すごく温かくて癒されるような……そんな感覚に抵抗できなかった。


「可愛いね。あかねくんは……♡」


 そして先生と目を合った時、またキスされる。

 ずっとキスをした。先生が止まるまで二人のキスは終わらなかった。なんか、先生に食べられてるような気がする……。主導権を握ってるのは先生の方だ。だから、俺にできるのは何もない。ただ、そこでキスをするだけ。


「…………」


 なんで、こんなに気持ちいいんだろう。

 本当にやばい。これは……やばすぎる。


「はあ……♡ 気持ちいい〜」


 あの夜、俺は先生と一線を越えてしまった。

 また……こんなことを……。


「…………」

「好き。あかねくんのこと大好き……!」

「そ、そこまで……! もうダメです! 勘弁してください……」

「ふふっ♡」


 そして、先生は俺の唇を拭いてくれた。


「そろそろ寝ようかな〜? 同じベッドで♡」

「は、はい……」

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