64 おうちデート③

 目が覚めたのは深夜の三時……、なぜか先生に襲われる夢を見てこんな時間に起きてしまった。そういえば、今日は一緒に寝ようって言われて、先生のそばで寝てたよな。だから、あんな夢を見たのか。このピンク色の部屋にはまだ慣れてないけど、先生の匂いがするからなんか落ち着く。


「…………」


 そう。先生がそばにいてくれると落ち着く、それは否定できない。

 だから、俺にキスをした時も……避けられなかった。

 そして先生には言えなかったけど、正直「もうちょっと」って言いたかった。みおとやった時と全然違う。もしみなみさんが教師じゃなかったら、もし俺が生徒じゃなかったら、そのまま「付き合ってください」と先生に告白をしたかもしれない。それほど、先生とのキスは気持ちよかった。


 まだ……あの時の感触が残ってるような気がする。


「全く……、俺なんかじゃなくてもっとカッコいい人とあんなことをやってくださいよ。みなみさん……」


 でも、そういうのはただの妄想だから……叶うわけない。

 いつか……、先生も行っちゃうんだろう。遠いところに。


「あかねくん〜」

「うわっ、びっくりしたぁ……」

「なんか急に寂しくなってね……。目が覚めちゃった……」

「えっ? 急に寂しくなったって……なんですか?」

「寝る時にはいつもあかねくんと手を繋いでたから……、いなくなるとすぐ分かる」

「へえ……」


 そして、水を飲んでいた俺に抱きつく先生。

 なんか眠そうに見えるけど、我慢してるのかな……?


「あかねくん、眠れないの?」

「それはこっちのセリフですけどぉ……」

「私はあかねくんがそばにいてくれないと眠れない。あかねくんは……?」


 ええ……、堂々と言ってるし。

 まあ、先生はいつもこんな感じだから……。


「あっ、俺もそうです」

「ふふっ♡」

「なんか嬉しそうに見えますけど……」

「今の生活が、すごく楽しくてたまらないよ……。こうやって好きな人と一緒にいるのが好き。すっごく好き! あかねくんがいる毎日が好き……!」

「好きが多いですよ。みなみさん」

「いいじゃん……。好きだから」


 全く、生徒に好きって言葉を使ってもいいのかよ。


「…………嫌?」

「いいえ……」

「ふふっ」


 俺も先生と過ごすこの生活は好き。一人ぼっちは楽だけど、それが楽しいとは絶対言えない。だから、俺もずっと寂しかった。萩原にずっと声をかけられても、俺はあのグループに入れない。あの陽キャたちと友達になれるわけないから、ぼっちの方がいいと思っていた。


 今はあの萩原と絶交し、完全にぼっちになったけど……。

 俺の学校生活はあまり変わらなかった。そのまま。


「ねえ、キスしよっか?」

「い、いきなり……キス……ですか?」

「たま〜に、たまにね!」

「はい……」

「一人で悩んでるような気がして、それが心配になる!」

「ああ……、癖ですよ。癖……。一人暮らしをしていた時、半年くらい……全然寝られなかった時期があって。あの時の癖です。心配しなくてもいいと思いますよ」

「そうなの……? でも、ちょっと悲しそうに見えたから」

「いいえ。大丈夫です」


 それが顔に出てたのか……、もっと注意しないと。


「寝る前にキスがしたい……」

「ダメです……。みなみさん、そんなことをしたら俺……絶対寝れませんから」

「へえ……。私にドキドキして寝れないってことかな?」

「そんなこと、言わなくてもいいです!」

「ふふっ、一緒に夜更かしをするのも楽しそう!」

「ダメです。早く寝てください……」


 急いでその場から逃げようとしたけど、後ろから俺の手首を掴む先生にまたやられてしまう。


「…………あっ、は……っ。ちょっと! みなみさん! いきなりそんなこと……」

「あかねくんのこと、独り占めしたい!」

「は、はい……?」


 なんか、先生の目怖いんだけど……?


「いいじゃん〜。私が全部忘れさせてあげる!」

「…………」


 いや、ちょっと……。


「悩みがあるなら、すぐ聞いてあげるつもりだったけど。あかねくん……、話したくないって顔してたから……。今はね、それを聞かないけど、いつか話したくなったら私に話して……」

「なんで……、それを知ってるんですか」

「分かるよ。あかねくんのことなら……」

「ええ……、でもっ———」


 すると、人差し指で俺の唇を押す先生。


「いいよ、そんなこと。今は私に集中して……」

「…………」

「やり方、覚えてるよね? ちゃんと教えてあげたから……」

「し、知らない……」

「じゃあ、もう一度教えてあげようかな? あかねくんならいつでもいいよ」

「す、すみません……。冗談です……」

「ふふっ。じゃあ、私をベッドまで連れてて」

「…………はいはい」


 こんな時間に先生とキスだなんて、キスだなんて…………。

 俺たち、次は何をやるんだろう。

 これ以上のことも、いつかやるのか……? 頭の中に先生のことでいっぱいで何も思い出せない俺だった。とろけるような甘い囁きと唇の温かい感触。俺、先生とやってはいけないことをやってる。


 でも、嫌いじゃない……。


「…………」


 あれ……?

 そこは…………。


「ちょ、ちょっとみなみさん? 何を? な、何を……してるんですか?」

「ああ……、週末だし。いいよね?」

「えっ?」

「みおのキスマーク、こっちだったかな……?」

「…………何を」

「私もやってみたかったよ……。好きな人にキスマークをつけること」

「それは……っ。よくないです……」


 これじゃ……ただの恋人だろ。


「似合う。可愛いよ、あかねくん」


 それはあっという間だった。

 先生に襲われて、首筋にキスマークをつけてもらった。

 すごくエロい……。


「…………」

「真っ赤なキスマーク……」

「…………っ」

「ふふっ♡」

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