40 友達関係③
気のせいかもしれないけど……、最近のあかねくんは前より忙しくなったような気がする。いつもバイトばっかりで私が誘ってもずっと断ってきたけど、最近はそれだけじゃないって感じ……。
私はあかねくんの友達だけど、あかねくんのすべてを知ってるわけじゃない。
でも、些細な変化ならすぐ見えるから……それだけは分かる。
あかねくんにはきっと……大切な誰かができたと、私は一人で推測していた。
そして、あの日……。
また馬鹿馬鹿しいことを言う安田に飽きて、すぐあかねくんのところに行ってみたけど……。そこで私が聞いたのは「心配させないでよ。バカ」だった。上の階にいたから顔は見えなかったけど、声だけで分かる。下の階ではあかねくんと星宮先生が話していた。
どうして、あの二人がそんなに仲良く話しているのか分からなかった。
いつの間に…………?
もしかして、あかねくんも先生のことが好きになったの……? なら、今までずっと忙しかったのも、星宮先生と二人で……何かを。私もそんなことないって否定したいけど、あまりにも優しそうに話してる二人に確信してしまう。
二人は…………。
「委員長〜」
「…………」
「委員長!」
「あっ。う、うん……。どうした? 安田」
「なんだよ。ぼーっとしてたのか?」
「ああ、ちょっと……」
「前の話、考えてみた?」
「前の話って?」
「俺、委員長に興味あるからさ……」
「ねえ、私は興味ないからその話はもうやめて」
「…………本当に? あのさ、九条は委員長に興味ないって言っただろ? それでも九条のことを……」
いろんな女の子と付き合って、幸せな人生を送ってるはずなのに……。
どうして、私みたいな女の子にそんなことを言うのかな……。分からない。
「その話はもういい……」
「い、委員長!」
それより私は……確かめたい、星宮先生とあかねくんの関係を。
もし、二人がそういう関係なら……。
あかねくんらしくないお弁当とか、シフトも入ってないのに忙しいって言ってることとか、全部……星宮先生と関わっているかもしれない。
それだけは絶対嫌だ。
……
放課後、私は誰もいない教室の中でずっと考えていた。
あかねくんについて何も知らないはずの先生がどうしてそんな風に話せるのか、それがすごく気になる。
「あれ……? 萩原さん。どうして教室に残ってるんですか?」
そして、先生に声をかけられた。
「あの、星宮先生!」
「はい。萩原さん、どうしましたか?」
「先生……」
「はい」
「この前に、あかねくんと二人で話しましたよね?」
「ああ……、そうですね」
「先生は……、あかねくんとどんな関係ですか?」
「…………はい? どんな関係って……?」
ダメだぁ……。他の言い方が思いつかない……。
「先生は……あかねくんと仲がいいですよね? 二人でよく話してるし……」
「ああ。確かに、最近……よく遅刻しますから……」
「それだけですか?」
「はい……? あの……、萩原さんは何が言いたいんですか?」
気になる。
気になる。
「先生はあかねくんの話なら……なんでも聞いてあげるんですか?」
「…………」
「いつもありがとうってあかねくんもそう言ってたし……、二人の関係が気になります」
「あはははっ。まさか、私と九条くんがそんな関係だと誤解してるんですか? 萩原さん」
「違いますか? その話はどう考えても……」
強がってるのかな……?
先生は笑みを浮かべながら私の方を見ていた。本当に綺麗な人……。
「ふーん。確かに、そう見えるかもしれませんね。九条くんよく呼ばれますし」
そして二人っきりの時は「あかねくん」だったのに、今は「九条くん」になっている。なぜ、あの時と呼び方が違うの……?
「たまに反省文を出すから知らないうちに九条くんと仲良くなりましたけど、そんなことで疑わられるなんて……。話の件は、以前私と相談したことがあって。もし、またそれについて相談したいならいつでもできますって答えただけですよ?」
「そうですか? じゃあ、先生はあかねくんに興味ないってことですね?」
「…………」
「先生?」
「はい?」
「興味ないですよね? あかねくんに……」
「はい。生徒ですし……。あっ、もしかして! 萩原さん、あ……、九条くんのこと好きですか?」
「…………えっ?」
いきなり、そんなことを聞くなんて……。
「私は……、す! 好きです! あかねくんのこと、ずっと好きだったから……。先生と仲良く話すのが羨ましくて、嫉妬してしまいました……」
「そうですか? 青春ですね」
「あの! いきなり、変なことを聞いてすみません……」
「いいえ、こちらこそ。なんか、誤解させたような気がしてすみません。萩原さん」
「いいえ!」
先生はあかねくんに興味ないって言ったから一応安心したけど、今度はあかねくんの方が気になる。私がどれだけ努力をしても、あかねくんにはただの友達。私はあかねくんとそれ以上の関係になりたかったのに、あかねくんは私と安田の関係を応援していた。
その場でショックを受けて何も言えなかったけど、すごく悲しかった。
私は好きなのに……、あかねくんはそれに気づいてくれない。
このままじゃ誰かに取られるかもしれないから、すごく怖い。
「早く帰ってください。私も職員室に戻りますので」
「はい。あの……! 星宮先生!」
「はい?」
「私、勇気を出してあかねくんに告白します!」
「…………」
念の為、先生にはっきり言っておいたけど、これめっちゃ恥ずかしい……。
顔がどんどん熱くなる。
「はい! お、応援します。萩原さん!」
「は、はい……! ありがとうございます!」
そして、忘れ物を取りに来た安田が偶然二人の話を聞いてしまう。
「ふーん。そんなことがあったんだ……」
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