三、真冬
11 素朴な疑問
月曜日の朝、今日は遅刻確定だ。
朝から「おはよう、九条くん!」とラ〇ンがきたけど、昨日先生のせいで全然寝られなかったから返事をする力がない。そして、日曜日の夜は一人でのんびりしたかったのに……。また深夜まで先生と電話をして……、ベッドでうとうとしている俺だった。
それに、あくびも出るし……。
「ダメだ。早く行かないと……」
あ、まずい。また委員長に一言言われそう……。
なぜか、俺にだけ厳しいからな。
「あかねくん、遅刻はダメってそんなに言ったのにぃ———!」
「ご、ごめん……。委員長……」
「次は容赦しないからね!」
「は、はい……」
やっぱり、こうなるのか。
「…………」
そういえば、先生めっちゃ喜んでたよな……。
時計を見たらいつの間にか深夜の一時になって、そのまま寝落ちしたような気がする。とはいえ、先生ずっと映画の話ばっかりだったよな……。きっと一人で家にいるのが寂しくて、俺と電話をしたかったかもしれない。カップルの話とか、キュンキュンするシーンとか、そんな彼氏が欲しいとか、先生とそういう話をしていた……。
まあ、寂しくなるのは仕方がないと思う……。
そして、俺は先生の友達だから……。
友達……、そう友達…………。うん。
「で、友達……ってなんだろう」
「うん? あかねくん、どうした?」
「委員長……」
「うん?」
「友達ってなんだろう……?」
「友達は……友達だよね?」
俺は委員長に何を聞いてるんだろう……。
てか、眠い……。
「寝不足……?」
「あ、うん……」
「週末、バイトなかったじゃん?」
「えっ? どうして、委員長がそれを知ってるんだ……?」
「お店に行ったら、その前に書いてたよ」
「そっか……」
店長、仕事まだ終わってないから日曜日までダメって言ってたよな……。
おかげで、二日連続休みだったけど、やっぱり俺は働かないといけないタイプの人間だ。それに休みって言われても一人の時間より先生と過ごした時間がもっと長かったから……。問題は深夜〇時の電話……、俺は土曜日も日曜日も先生と電話をしていた。その結果、今すぐ倒れてもおかしくない状態になっている……。
だから、机に突っ伏してじっと壁の時計を見つめていた。
「そういえば、あかねくんは週末何してたの?」
「週末は……せっ……」
待って、あかね……! お前、今先生って……。
もっと気をつけないと……。
「勉強かな……?」
「うん? 九条くん、寝不足?」
「はい……」
よりによって、こんなタイミングに……。
てか、先生だけぐっすり眠ったような気がするけど……? 俺と同じ時間に寝たんじゃなかったのか……? どうして、一人だけ……そんなに元気なんだろう。やっぱり、先生のことはよく分からない。
「星宮先生! おはようございまーす」
「おはようございます。萩原さん」
「はい〜」
「あかねくん、起きて!」
「そして、九条くん……! そろそろ、授業始まりますから! 起きてください!」
「はい……」
あかねを見て微笑むみなみ、そしてのあがその顔を見ていた。
「はあ……、また雪降ってる……」
「…………あのね、あかねくん」
「うん?」
「なんか、最近星宮先生と仲よくなった気がするけど…………」
「そ、そんな……。……その、この前に荷物を運んであげたからさ」
ちらっと、のあの方を見るみなみ。
彼女はずっと二人の話を聞いていた。
「あかねくん……か」
なんか、委員長に疑われてるような気がする。
てか、委員長って中学生の時からずっとそんな風に聞いてたよな……? それでも俺より俺のことを心配してくれる人だし、定期的にノートも見せてくれるから、そんな委員長には何も言えない俺だった。
もし委員長がいなかったら、きっと赤点ばっかり取ったはず……。
彼女は俺の唯一の友達、女の子だけどな。
「そういえば、私ね」
「うん?」
「今日、友達とカラオケに行くけど……。あかねくんも来ない?」
「カラオケか……」
廊下で二人の話を聞いているみなみ。
「…………」
「あっ、星宮先生。そこで何してるんですか?」
「い、いいえ……! ちょっと忘れ物があって……」
「行きましょう。そろそろ職員会議です」
「はい!」
……
昼休み、俺は静かなところでお弁当を食べていた。
普段はパンを食べるけど、先生が作ってくれたおかずがまだたくさん残っていて今日はお弁当を食べることにした。てか、いつ食べても先生のおかずは旨い……、特にこの肉じゃががめっちゃ旨い! この旨いおかずを作る先生もきっとこうなるためにめっちゃ頑張ったはずだよな……。
旨いおかずを食べただけなのに、幸せになる……。
先生、本当にありがとうございます。
「あっ、ここにいたんだ。あかねくん!」
「委員長? 今日はどうした? いつも、クラスの人たちと食べてたんじゃ……」
「今日は久しぶりにあかねくんと食べたい!」
「そ、そっか?」
「うん! あれ……? あかねくん、お弁当? いつもパンだったのに、ええ……! 料理始めたの?」
「い、いや……。これは……なんっていうか、たまに食べたくなるっていうか」
「そうなんだ……。じゃあ、一緒に食べよう!」
「うん」
そして委員長とお昼を食べる時、先生からラ〇ンが来た。
なんで、今……?
『お昼、ちゃんと食べてる?』
『はい。先生のおかげで今日はお弁当を作ってきました』
『いいね〜。一人で食べてるの?』
『いいえ、今は委員長と食べてます』
「…………ん?」
あれ……? 俺が送ったラ〇ンが既読にならない。
それから三分くらい待ってみたけど、返事来ないからお昼食べてもいいかな……?
先生はすぐラ〇ンを確認するからちょっと変だったけど、先生だから仕事があるかもしれないし……。そんなことは気にしなくてもいいと思っていた。
今はお昼を食べよう。
「…………」
そして、じっとあかねの方を見つめるのあ。
「誰……?」
「あっ、あ……バイト先の店長」
「へえ……、そうなんだ。あっ! あかねくん、おかず交換しよう!」
「あっ、うん! 分かった」
なぜか、先生だとはっきり言えない俺だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます