最初で最後の花束を -中幕-

昨日はテストが終わり安心できたからかすぐに寝てしまった…今日私がすることは特にないが、やっぱりあの人が気になってしまう…


「気になる…でもあの人あそこに居るかな?」


私は不安になりながらも前回彼とあった場所に向かっていつもよりもおしゃれをしてから出かけた…


私が前回彼とあった場所に向かうと、彼はそこにいた…


「…!!お前なんで来たんだ!!最近は警察がこういう裏路地まで来るから、来たら関係を疑われるぞ?」


「…どうしてか分からないの…私だって本当はこんな事をしちゃいけないって分かってる…でも貴方のことがどうしても忘れられなくて…」


「はぁ…あのな?君は花の女子高生だ…俺みたいな殺人鬼と関わっちゃいけない存在なんだ…分かるか?俺は何人…いや何十人…それ以上に殺してきた人間だぞ?」


「分かってます…でも貴方のことが気になって…」


「俺と関わるな…いいか?俺と関わっていたら君まで危険な目に遭う…こんな簡単なこともわからないのか?」


「私だって分かってますよ…本当はこういう事は良くないって…」


「…」


「ちょっと私の話を聞いてください…私は昔からいい子でいようと努力してました…両親からしっかりした子に育てと言われ、周囲の子から『天才だ!!』みたいに言われたりしたことも有りました…」


「…」


「でも誰も本当の私を知らない…本当の私は、勉強なんてしたくないし、それこそ運動なんてしたくもない…ただ日々を謳歌するだけでいいのに…皆の期待に応えなくちゃいけなくて…」


「俺が君に言うのもどうかと思うんだけどな?皆の期待に答える必要なんてないんだよ…俺が殺してきたやつの中には俺に自ら『殺してくれ』って言ってきたやつもいた…理由を聞いたらな…こういうんだ…『疲れた』ってな…」


「…」


「そいつは科学者でな…みんなが新薬を作ってくれるって期待するほど優秀なやつだったんだ…だから彼はそれに答えようと必死に努力した…しかしどれだけ必死に努力しても開発することは出来なかった…」


「たったそれだけですか?」


「たったそれだけだよ…君はこんなことよりも更に些細なことに悩んでいると思わないか?」


「まぁ…」


「俺が彼に提案したのは…自分の欲望に素直になることだ…俺の場合は殺人衝動というべきか…人を殺すことが至上の快楽を得られると思っている…ちなみに俺は3日以内に人を殺さないと正直耐えられない…」


「そうなんだ…私は意外と小さいことで悩んでたのかもしれないな…」


「そのとおりだ…君は女子高生…俺は殺人鬼…今ここで関係を切れるように努力をしなければ君の人生が台無しになる…俺はたしかに殺人鬼だし人を何人も殺してきた…だがな殺す人は選んでいるんだ…とくに君のように真っ直ぐで純粋な女を殺すのは絶対にしないな…」


「私のこと真っ直ぐで純粋って…どういうところを見てそう思ったの?」


「…気にするな」


「ひどい!!嘘付いたの!!」


「お前のそういうところだ…というかなんで俺はこいつと話しているんだろうな…」


「何言ったの?聞こえなかったんだけど…」


「聞かなくて良いことだ…一つ聞くがお前はまた此処に来るか?」


「うん…貴方に否定されても来ようと思ってる…」


「…なんで俺は此処で強く否定できないのか…分からん」


「もっとはっきり喋ってください!!何言ってるのか伝わりませんよ!!」


「これからのことを考えてたんだよ…また来るつもりなら買い物と洗濯を頼めるか?」


「良いですけど…何を買ってくれば良いんですか?」


お金大丈夫かな…流石に高額だと困るんだけど…


「このメモに書いてあるものを買ってきてくれれば大丈夫だ…お金はこっちでだすから…これを使え」


「ありがとう…でもこの財布結構入ってるけど…」


「確か万札が結構はいっていたはずだ…足りないことはないはずだぞ?」


「いえ…そういう意味ではなくて…」


「取り敢えず余ったらお前のにしてくれて構わないから買ってきてくれ…頼んだぞ?明日までで大丈夫だから…」


「わかりました…今から買ってきましょうか?」


「助かる…だが良いのか?お前の時間を使ってしまっているが…」


「良いんです…別に今日は休みですし課題も出てません…特段時間を使って作業することはないので…」


「それじゃあ頼んだ…」


私はスーパーに行ってメモにあるものを買う…このスーパーは最近出来たスーパーで他のスーパーよりも安価で購入できることが売りらしい…


「え〜っとこれとこれとこれで合ってるのかな…」


私はメモにあるものを全て購入し、スーパーを出る…スーパーを出て戻るまで結構時間がかかってしまった…


「今帰りました…」


「助かる…それと今日はもう帰りな?」


「どうしてですか?」


「もうじきこの路地裏も警察官が調べに来る…君がいると怪しまれてしまうから…ね?」


「わかりました…明日も来てもいいですか?」


「明日は警察官が居るから月曜日にしてくれ…俺も月曜日なら此処に居るからいいな?」


私はその言葉を聞いた後、路地裏を立ち去った…彼はこの路地裏に警察官が来ると言っていたけど…大丈夫なのだろうか…







あの女…どうかしている…


俺は今までに200人以上人を殺してきた…いわゆる殺人をしてきた者だ…そして200人以上殺してしまえば当然警察にマークされる…


警察は俺のことを相当警戒しているみたいで路地裏に調査に来る時も大抵5人以上で来るから殺そうにも殺せないと言ったところだ…俺の居場所を把握しているのはあの女子高生くらいか…


あの日、俺の事を見て殺人鬼だと知った彼女の眼には怯えが浮かんでいなかった…俺は驚愕したさ…だってあの女…俺の場所を聞いてほとんど毎日来る…神経がおかしいんじゃないのか?


でも、あの女は毎日のように俺のところに来ては、『今日は何をしていたの?』とか聞いてくる…殺人鬼の俺ですら正気を疑うレベルで頭がおかしいと思う…


だから俺は何回も俺と関わらずに親や姉…友達と一緒に遊びながら暮らしていけばいいじゃないか…と言ったのに、あの女は分かっていない…


どうして此処まで俺につきまとうのかは知らないが、今まで孤独に生きてきた俺からするとちょっと嬉しいと感じているところがある…正直人と話すのは、俺が殺すときに命乞いをする時だけ…俺が今まで殺してきた人間の中で、ずっと正しい行いをしてきたやつはいなかった…必ずどこかで犯罪行為をしている…俺が殺すのはそういう奴らだ…


此処最近で殺したのは、女を殺した後、証拠隠滅をしてのうのうと生きていたジジイを一人殺した…まぁなんで此処まで対象のことを知っているのかと言うと、俺の独自の情報の得方にある…


まぁ俺が今まで殺してきたのは、卑劣な行為をしておきながらのうのうと生きている連中だけだから一般人は巻き込んでいない…だが、一般人からすると人を殺すのはやはりおかしいらしい…俺の行動は評価されにくいのは知っていた…だが否定されるのは非常に…むかつく…


「事情を知らずに批判だけをする一般人共は引っ込んでろよな…本当に…」


俺は空き家にあるテレビを拝借し、見ていた…俺のニュースが流れているのは知っていたが、やっぱり俺の場所をある程度は把握しているのかもしれないな…


「流石に俺の居場所が割れている状態で女子高生に会うのはまずいな…あの子が何かしらの関与が疑われてしまう…」


俺はなんであんな女の心配をしているんだ?俺は殺人鬼だぞ?最悪話される前に証拠を隠滅してしまえばいいだけなんだぞ?


「警察共とやり合うには武器が厳しいかもな…最悪どこかで購入するか?」


俺の手持ちの武器は大型のナイフと、小型のナイフ二丁…拳銃が1丁ある…ちなみに俺がいつも来ているコートは防刃性が高く、拳銃による銃撃も何発か絶えられるすぐれものだ…


「あの女には悪いが予定通りに来れない可能性があるな…それに俺が今後此処に居るのは厳しいかもしれないな…」


俺は此処が警察にバレている可能性を考えて一度場所を帰ることにした…






私が家に帰るとお姉ちゃんは家でテレビを見ていた…


「お姉ちゃんテレビはなにやってるの?」


「今私がみているのは殺人鬼のやってきた事件の記録だよ?テレビでまとめられててちょっと気になってね…」


殺人鬼が殺してきた人物の名前を許可を得た人物だけ開示するらしい…そして開示した人物のことを当時担当した刑事などに話してもらうという凶悪な犯罪が発生した場合にそれを辿っていくという番組だった…


『今回紹介するのは金融庁の職員が殺害された事件ですが…当時担当された阿部さんはどのような光景だったか覚えていますか?』


『えぇ…鮮明に覚えていますよ…私はこの金融庁の職員の殺害事件を担当していたんですが、私にこんなメッセージが届いたんです…この金融庁の職員は汚職をしているからそれをしっかりと暴いてくれって…』


『そんな事があったんですね…ちなみに本当に汚職していたんですか?』


『えぇ…どうやって汚職をしていることを調べたのかはわからないんですが、汚職は本当でした…』


『犯人は件の殺人鬼ですが何か証拠は出ましたか?』


『証拠なのかはわかりませんが、現場に俺が殺しているのは犯罪者だけだというメモが有りました…一応判明している者を確認していくと大抵が逃亡中の犯罪者だということも分かっています…』


『逃亡中の犯罪者を捕まえているんですか…なんというか警察にとっては逃亡中の犯人が捕まるのは嬉しいけど殺されると…って感じなんですかね?』


『はは…そうですね…殺さないでせめて捕縛してくれると助かるんですけどね…殺されると正しく罰を下せないですから…』


『ちなみになんで判明している人物だけ犯罪者だとわかったんですか?』


『ん〜遺体の損傷が激しいんですよ…まるで拷問された後みたいな…』


『うわ…そんなことが…』


…そうだったんだ…余計に格好良く思えてきたな…悪いことをしている人を見つけて狩る!!みたいで…


私は余計に胸の高鳴りが止まらなくなった気がする…



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る