第10話 再会
妖鬼神社では、本殿での大狗神との話し合いを終えて、拝殿で対策を練っていた。
「ただいまー。味方いっぱいつれてきたよ。」
そこへカイトが、多くの妖を連れて戻ってきた。
ちょうどそこに神宮司の母であり、妖鬼神社の巫女を務める桜子が拝殿に入ってきた。
「まぁまぁ、みなさんようこそお越しくださいました。でも、この数は拝殿に入りきらないですねぇ。すみませんが境内のお庭にお越しください。そこなら広いですし、お茶でもお入れしましょうね。」
そんな桜子の姿に鬼や妖たちは、魅了されふらふらと桜子の後について外に出て行った。
「さすが、桜子さんだな。あれじゃ僕の木天蓼なんか必要なかったんじゃないのかな?術も何もないのにあのいかつい奴らを黙らせて追従させれるんだから。」
カイトが苦笑いをしながら神宮司に行った。
「自分の母親ながら、恐ろしくなる時があるよ。でも、さすが、カイトだな。あの数の妖を連れてこれるとは、大したもんだよ。」
神宮司も苦笑いをしながら答えた。
「さて、こちらもかなりの数を用意できたが、相手側はどうなんだろうか。そろそろユウタからの連絡も来る頃だと思うんだが。」
と、ショウが言うと、一筋の風が拝殿に吹き込み、韋駄天が現れた。
「ショウ殿、若よりの伝言をお伝えに参りました。」
韋駄天は跪きショウに行った。
「申せ。」
「はっ。魔塊鬼軍は50万の妖を引き連れてこちらに向かっている模様。一両日中にはこちらに到着するであろうとのことです。まだ、妖気が万全ではないようで、暴力などの横暴な行為は行っていないとのことです。」
「魔塊鬼はこちらに来る明確な目的がある。それまでは大きな騒ぎになると不利だと考えているのだろう。ユウタはどうしている?」
「若は、あ、いえ御屋形様は、天狗と韋駄天連合軍の指揮を任されました。今は村の警備の強化を図られております。後ほどこちらにもお越しになられるとのこと。」
「御屋形様?ゆうたが?」
「はい、先程、先代が家督を若に譲渡されました。」
「そうか。わかった。ユウタに伝えてくれ、こちらも相応の味方を得た。後方支援も無雁なくできるだろうと。
あと、さっき、大神に我らの力の話を聞いた、その件で後ほど話がしたいと伝えてくれ。」
「かしこまりました。では、わたくしはこれで。」
そう言い残して韋駄天は風のように消えた。
「ショウ。俺たちの力の話って何なの?さっき、ジンに聞いたんだけど。」
ジンはカイトに大神から聞いた話を話したらしい。カイトが不思議そうな顔をしている。
「カイトにも話さないとな。俺たちにはある力がある。俺たちもさっき大神から聞いたんだが、俺、レン、ジン、ユウタ、そしてカイト、お前にも光の力があるらしい。その光の力が集まれば闇を破る力になるというんだ。ただ、その力は6つあるというんだが、あと一人がまだわからないんだ。」
「カイトの体のどこかに何かその力の印があるはずなんだ。」
「うーん、そうなんだ。僕にもそんな力があるんだね。」
カイトは実感のないような顔をした。
「勇太、私は皆さんのお食事を用意いたしますね。姑獲鳥さんたちが手伝ってくれるそうです。さぁて、これから忙しくなるわ。」
そういいながら桜子が拝殿の中に入ってきた。
「桜子殿、そなたは人間なのです。私どもと共に戦うのは危険です。安全な場所に逃げてください。」
ショウが桜子にいうと、
「ショウさん、私はこの妖鬼神社の巫女です。あの人からこの妖鬼神社を守るように言われ、ずっとこの妖鬼神社を守ってきました。そして、私はそこにいる神宮司勇太の母親です。勇太がみなさんと戦っているのに、自分だけ逃げるわけにはいきません。ただ、何の力もなく私にできることは少ないかもしれませんが、祈ることはできます。後方支援という形であればきっとみなさんのお役に立てると思うのです。あの人がいなくなった日からいつかこんな日が来るんじゃないかと思っていました。それに、私にはもうここ以外行く場所なんてないんですよ。だから、一緒に戦わせてください。」
気丈に言う桜子にショウもうなずくしかなかった。
「母さん、でも、危険なことはしないでね。俺たちが必ず守るから。」
「勇太、ありがとう。あなたたちならきっと大丈夫。信じていますからね。さぁ、みなさんのお食事を用意しなくては。カイトさんと姑獲鳥さんたちをお借りしますよ。」
桜子はそういいにっこりと絵がを残し、厨房へ向かった。
外から鬼たちの騒ぐ声が聞こえる。
「こいつ、見たことねぇな。どこから来たんだ?」
「敵なんじゃないか?」
「おい、捕まえろ!」
「ん、何か外が騒がしいな。何かあったんかな、見てくるわ」
レンが外の騒ぎに気づき外に出てみた。
「おい、どないした。何かあったんか?」
レンが外にいた鬼に話しかけた。
「こいつが、ここに忍び込んでいたんで、捕まえたんだ。見慣れねぇ顔だったし。ここの奴らではないようだったからな。」
一人の鬼が縄でつながれた男をしたり顔で、蹴とばし、騒ぎの真ん中に置いた。
みると、そこには縄に縛られた懐かしい顔があった。
「玄樹やんか!お前、無事やったんか!?」
レンがその男に駆け寄り、縄をほどいて
「こいつは俺たちの仲間や。先の戦いの際に魔塊鬼を封じ込めるのに犠牲になった仲間なんや。・・・それにしてもひどい傷やん、誰がやったんや?お前らか?」
レンが周りにいる鬼たちを睨みながら玄樹に肩を貸して起こした。
「レン・・・久しぶりだな、この傷はここにいる連中がやったんじゃない。魔塊鬼の処から逃げる際に追手にやられたんだ。それにしても、傷だらけのものに縄をかけるなんて、みんな優秀じゃないか。」
「すまん、玄樹。手荒い連中ばっかりやから。とりあえず、ケガの手当てをしよ。中にみんなおんねん。みんな驚くで。」
玄樹を拝殿に運んだレンはショウに
「ショウ、玄樹や。玄樹が戻ってきた。ひどいケガをしているようや。とにかく手当てをしてやってくれ。」
「なに?玄樹が?無事だったのか。そうか、魔塊鬼と一緒に封印が解かれたのか。
とにかく、そこに寝かせてすぐに手当てを。ジン、桜子さんを呼んでくれ。」
「わかった。」
神宮司が桜子を呼びに行き、レンが水を入れた桶と手拭いを用意した。
「ショウ、レン、久しぶりの再会なんだが、喜んでばかりはいられないんだ。」
玄樹が深刻そうな顔で続ける。
「僕は、あの時魔塊鬼と一緒に、封印されてあの石の中でずっと眠っていたんだ。魔塊鬼と僕の眠りを破ったのは、狸のばあさんだった。僕も魔塊鬼と一緒に封印を解かれたんだが、魔塊鬼に捕まったまま、僕も各地の殺生石を回っていた。奴は殺生石から力を吸い取るのとともに、殺生石に封印されていた悪鬼たちを解放し、集めて悪鬼集団を作っている。僕は隙を見て奴のもとから逃げ出したんだ。途中で追手に捕まりそうになって、這う這うの体で逃げ切った。」
座ったまま、うなだれる玄樹に
「とにかく、帰ってきてくれてよかったよ。玄樹がいれば強い戦力になる。とにかく、傷の手当てをしなくては。」
そこに、桜子が救急箱を持ってきた。
「玄樹君、生きててよかった。おかえりなさい。傷の手当するわね。」
「桜子さん、お元気そうで何よりです。ありがとうございます。そちらのお二人は・・・?」
「こっちは私の息子で勇太よ。向こうはカイト君。母が飼っていた猫のカイトよ。」
と、桜子が二人を簡単に紹介した。
「ジン、カイト。二人は玄樹と初めてやったな。以前、ショウが話したと思うけど、魔塊鬼との戦いの際に、魔塊鬼を封印するために犠牲になって一緒に封印されてしもた仲間や。
玄樹は玄武という神獣の化身で、水をつかさどる。
俺たちの仲間では、ショウと並ぶ強さを持ってんねん。」
レンが玄樹を紹介した。
その間に手際よく傷の手当てをした桜子が、
「おなかすいてるでしょ?簡単な食事を用意するから待ってて。勇太とカイト君、ちょっと手伝ってくれないかしら。」
と、桜子は厨房に2人を連れて行った。
「勇太、あなたは玄樹君とは初めてだから、気づかないかもしれないけど、彼、前の彼とは何か違う気がするの。何が違うのかって説明できないんだけど。カイト君はどうおもう?。」
桜子は少し警戒した顔で神宮司に言った。
カイトもそれに頷いて、
「僕も、なんかおかしい感じがするんだ。僕は猫の時にしか会ってなかったけど、妖同士、僕のことに気づかないのもおかしいと思うんだ。なにより、匂いが違う。だから、気を付けたほうがいい。」
「そうなんだ。でも、ショウやレンは気づいていないのかな?」
「彼らも何か感じ取っていると思うけど、もともとは仲間だったし、信じたくない思いもあると思う。しばらくは様子を見たほうがいいかもしれないな。」
とカイトが言った。
「わかった。このお守りの件もあるし、気を付けるよ。ありがとう。」
玄樹の食事が終わり、ユウタも妖鬼神社に合流し、カイト、レン、ショウ、神宮司もそろって今後の対策を練ることになった。
「玄樹、魔塊鬼陣営は、どうなんだ?」
ショウが聞いた。
玄樹が魔塊鬼陣営の様子をみんなに説明した。
「まず、魔塊鬼を殺生石から解放したのは、闇という黒い影のような妖だ。闇は、始めは小さな鼠だった。闇が狸の老婆を操って、殺生石の封印を解かせたんだ。
魔塊鬼は殺生石から解放されたあと、この裏吉野を出て各地にある殺生石を回り、その殺生石に封印されている妖たちを開放していった。
そして、魔塊鬼と闇は瘴気を吸い取り力を蓄えている。」
「その闇というのはどういう妖なん?」
レンが聞いた。
「俺にも、あまり詳しいことはわからない。たぶん、この国の妖ではないだろう。神出鬼没でいつも何を考えているのか分からないやつだ。魔塊鬼軍の中でも奴を恐れているものは多い。そうだ、奴のマントには注意したほうがいい。奴がマントを広げるとあらゆるものを吸い込んでしまう。狸のばあさんも結局、奴に吸い込まれてしまった。たぶん、用がなくなったからだろう。心なんてものは持ち合わせていなさそうだ。非情というべきか。」
玄樹は、一度言葉を止めて、周りを見渡した。
皆、玄樹の話を固唾をのんで聞いている。
「そして、魔塊鬼は今かなりの力を蓄えてきている。悪鬼の数も増え続けている。なにせ、今の人間社会には妖たちの住む場所がないために不満を持つ奴らが多いからな。あとは魔塊鬼の心臓を封じ込めた殺生石が手に入れればというところまで来ている。魔塊鬼の心臓は俺が魔塊鬼を拘束した時に取り出して、殺生石に封じたはずだ。それさえ奴に渡らなければ、こちらが有利だ。その殺生石はこの妖鬼神社にあるんだろう?」
と玄樹がいうとショウとレンが答えようとしていたが、
「殺生石は、今はあるところに隠してあるらしい。決して見つからないような安全な場所に。俺たちも実ははっきりとしたことは知らない。」
とショウとレンの言葉を遮るように、カイトが答えた。
ショウもレンも不思議そうな顔をした。だが、そのまま黙った。
「魔塊鬼も厄介やけど、その闇っちゅうのは、もっと厄介な感じやな。」
「うん、むしろ闇のほうが、今回は主導権を握っているようだね。」
レンと神宮司がそういうと、
「確かに、闇に関しては詳しい情報もないし、警戒をしなくてはならない。
ショウは
「天狗軍は、結界周辺で警備を敷いている。今、妖鬼神社にいる鬼たちはこの妖鬼神社の周辺を守ってもらう。妖鬼神社はカイト、そしてジンで守ってほしい。
俺とレンそしてユウタは前線で戦う。玄樹は傷がいえるまでこの妖鬼神社で療養してくれ。ここの妖鬼神社が最後の砦となる。ジン、カイトしっかり戦ってくれ。」
と、皆に指示を出した。
「分かった。」ジンとカイトが答えた。
「明日が決戦になるだろう。今日はしっかり休んでくれ。」
そう、ショウがいうと一同うなずいて解散となった。
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