第8話 木天蓼
三人が本殿で大狗神と話をしているとき、カイトは山の学校にいた。
ここでは妖たちが、学校を開いている。
「こんにちわ、みんな。元気にしてた?」
カイトが来校した事に気づいた妖がいち早く駆け寄ってきた。
トイレの花子、豆腐小僧、家鳴、幼い姿をした妖たちが多くいる。
「あ。カイトくんだー」「カイトくん!この前の写生の絵を見てよー」「カイトくん!一緒に遊ぼうよー」「この前、この豆腐に紅葉書いたんだよ、見て見て」
我も我もと、カイトに向かって走ってくる。
久しぶりのカイトの来校に、学校に通う妖たちは大喜びだ。
幼い姿の妖もいるが妖は年齢を重ねても、姿かたちが変わらない。、みんな200年以上生きている妖たちだ。
カイトはこの学校の妖たちにとても人気がある。
「わぁ、みんな久しぶりだもんねー。でも、今日は遊びに来たんじゃないんだよ。校長先生に大事なお話があってきたんだよ。ごめんね。今度ゆっくり見せてもらうよ。。」
「えーじゃぁ、今度は絶対あそんでねー。」「私は、お絵描き教えてほしいよー今度約束だよー」
妖たちは残念そうな声を出して、それでもカイトの手を放そうとしない。
「あはは、じゃぁ校長先生のところまでみんなに連れてってもらおうかな。」
「はーい」嬉しそうに口々にいう妖たちを見てカイトは
(この平和な世界を守らないといけないな。魔塊鬼なんかに負けられない。どんなに強い奴だったとしても)と思った。
「
「あらあら、みんな、ありがとうね。カイトくん。お久しぶりだこと。」
校長は姑獲鳥である。彼女ももちろん妖だ。
この学校は古い校舎をそのまま使っているので、校長室もかなり古い作りになっている。
「姑獲鳥先生、ご無沙汰してます。今日はお願いがあってきました。お時間よろしいですか?」
「なんか、珍しく深刻そうね。とにかくお入りになって。さぁ、みんなは教室に戻ってね、授業始まっちゃうわよ」
「えー僕たちもお話ししたいよー」と駄々をこねる妖たちを、姑獲鳥は大きな羽を一振りして教室に戻してしまった。
「カイトくんが来るとあの子たち本当にうれしいのね。あの2人のユウタ君たちにもすごく懐いちゃって、本当にいつもありがとう。・・・で、お願いっていうのは…?」
「実は・・・姑獲鳥先生は魔塊鬼の話をご存じですか?」
「私はあなたより長くこの世界にいるので、その魔塊鬼のことも知っているわ。大狗神さんや九尾のレンさんも戦って大きな痛手を負ったはずよ。でも魔塊鬼は倒されて封印されたって聞いているわよ。」
「ええ、僕はその戦いのときにはまだ猫だったので、さっきショウたちに聞いでびっくりしました。過去にこんな大きな戦いがあったなんて。で、魔塊鬼はショウたちが封印したんですが、数日前にどうやら封印が破られ、魔塊鬼が解放されてしまったようなんです。」
とカイトが話すと、
「なんてこと・・・」姑獲鳥女史は言葉を失った。
「それで、姑獲鳥先生にお願いなんですが、この学校の生徒たちを安全な場所に避難させて、みんなを守ってほしいんです。もうすぐしたらこの辺りは戦場になります。その前に・・・」
と、カイトが姑獲鳥にいうと、廊下から妖の生徒たちがなだれ込んできた。
「みんな、授業に行ったんじゃないの?」
カイトが驚いていると、
「カイトくん、僕たちを見くびらないでほしいよ。」
「そうだよ。僕たちはこんな幼い姿だけど、海人くんよりこの世界に長くいるんだよ。その魔塊鬼との戦いに参加している妖だっているんだ」
「そうだよ。僕たちだって戦える。役に立つことあるよ」
「僕たち、みんなの役に立ちたいんだよ。」
口々に言う妖たちを見た姑獲鳥は、
「まぁ、あなたたち・・・話を聞いていたのね。そうね、あなたたちの中には魔塊鬼と戦った妖もいるはずだし。カイト君たちの役に立ちたいわよね。
カイトくん、あなたの気持ちはとても嬉しいけど、私たちはあなたたちと一緒に戦います。」
「みんな、姑獲鳥先生・・・・ありがとう。そうだね。みんな本当は僕より長く生きているんだよね。ごめんなさい。そして、よろしくお願いします。」
と、カイトが頭を下げると学校中のそこにいた者たちが、大喜びをした。
「えー、戦争だぞー。暴れないぞー。」
そういったのは、天邪鬼。天邪鬼はいつも反対のことばかり言う。
集まってきた妖の中には、どうやって魔塊鬼を倒すかを議論するものまでいた。
「さて、この学校にいるみんなはカイトくんたちと一緒に戦うとして、この辺には人間中心の世界に不満を持っている妖も少なからずいるのよね。そいつらがどっちにつくのかが問題よね。味方は多いほうがいいに決まっているんだし。」
と、姑獲鳥が考え込んでいると、カイトがニヤリと笑った。
「僕に考えがあります。ちょっと校庭をお借りしてもいいですか?みんなは校舎に少し避難してもらって。」
「ええ、いいけど。何をするつもりなの?」
「ちょっと、まぁ見ててください。でも、何が起こっても僕が呼ぶまで、外に出てきちゃだめですよ。」
といってまた、いたずらっ子のように笑うと、カイトは校庭に駆け出した。
校庭に出たカイトは校庭の真ん中に立ち、懐から懐紙にくるまれた木札を取り出した。
それを地面に置いて、その前で何か呪文を唱えだした。
「 」
すると、カイトを中心に風が巻き起こって、砂ぼこりでカイトの姿が見えなくなってしまった。
姑獲鳥たちが心配そうに見ていると、砂塵が収まりカイトの姿が見えたと思ったら、空が黒い雲のようなものに覆われてしまった。それは数多くの鬼や妖たちだった。
その鬼や妖たちが校庭に降りてきた。
一匹の鬼が「俺たちを呼びつけたのはお前か」
と、カイトに凄んだ。校舎に避難していた妖たちのなかにも悲鳴を上げるものがいた。だが、カイトは
「そうだよ。僕がみんなを呼んだんだ。来てくれてありがとう。嬉しいよ。」
と、最上級の笑顔で微笑んだ。
臨戦態勢だった鬼や妖たちは、カイトのその笑顔をみて、猫のようになった。
(まったく、この
「実はこれから多くの敵がここにやってくることになる。そいつらは僕たちの生活も人間たちの生活も脅かす存在なんだ。大きな戦いになると思うけど、みんなは僕たちの味方をしてくれるよね。」
カイトは満面の笑みで妖たちに語りかけた。
「うおおおおおーーーーー」妖たちはそれに呼応するように雄たけびを上げた。
辺り一帯が地響きを起こった。
「ありがとう、頼りにしてるよ。」
その様子を見ていた姑獲鳥たちは、とても驚いた。
「みんなーもういいよー」カイトが姑獲鳥たちを呼んだ。
息をひそめて、校舎から校庭の様子をうかがっていた妖たちは、わらわらとカイトのところに集まってきた。
「カイトくん、本当に大丈夫なの?」
姑獲鳥が恐る恐るカイトのそばまで来て辺りを見回した。
集まってきた幼い妖たちに、鬼たちは威嚇をする者もいた。
中には泣き出す妖までいたが、
「ほらぁ、みんな仲間なんだからそんな怖い顔しないでね、僕の友達をいじめたりしたら、君たちのこと嫌いになっちゃうよ。」
と、カイトが妖たちを一睨みすると、すぐに鬼瓦のような顔をした妖の顔が緩んだ。
「姑獲鳥先生。実はね。僕の能力の一つなんだけど、木天蓼って言って日和見の妖ならこちら側の味方にできるっていう能力なの。ま、雑魚にしか効かないんだけどね。」
カイトは姑獲鳥にしか聞こえないような声で、説明し、ウインクをした。
「カイト君ってすごーい。かっこいい。めっちゃ強いんだー」
姑獲鳥の生徒たちは口々にカイトを褒め、中にはやってきた鬼たちに近づいて、挨拶したり、よじ登ったりする者もいた。
「カイト君、きっと大丈夫ね。私たち、勝てるわよね。」
姑獲鳥はカイトにいうとカイトは
「きっと大丈夫。ショウやレンもいるし、大丈夫ですよ」と答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます