第7話 大神
妖鬼神社は大狗神を祭神としており、その大狗神はショウの父親である。
拝殿の奥には本殿があり、大狗神を祀ってあり、もちろん、そこが犬神親子の暮らす場所となっている。
ショウとレン、神宮司は本殿で大狗神と向き合っている。
ショウが大狗神に事の詳細を説明している。
「大神、魔塊鬼が封印を解いて目覚めたようです。今、表の世界で悪鬼を集め、瘴気を吸って力を強めているようです。韋駄天と烏天狗たちが奴らを追っていますが、力が強力になりすぎて、とても太刀打ちできないようです。」
ショウがこれまでの経緯を説明していく。
「うむ、わしが少し留守にしていた間に大変なことになったな。いつかこんなことになるとは思っておったが。」
「留守にされるのは聞いておりましたが、いったいどちらに?」
「うむ、それはいずれわかる。・・・勇太よ、親父さんの形見は持っておるな。」
大狗神が神宮司に向かっていった。
「はい、ここに。・・・先ほど、魔塊鬼の魔力を封じた殺生石だと聞きました。」
「そうか、それは今後、何があっても誰にも触れさせてはならぬ。たとえ仲間であっても。肌身から離すことのないように。よいか、その殺生石を奪われればこの世は魑魅魍魎が跋扈する地獄となろう。」
「はい、承知しました。」
「ショウよ、お前にまだ話していないこの裏吉野の予言の話をしよう。」
「予言の話ですか?」
「レン、勇太にも関係がある話だ。
裏吉野には銀峯山寺に予言の巻物がある。これは、吉野守たちが裏吉野を作った際にかけた呪によるものだが、闇がこの裏吉野を覆いつくしたとき、6人の光を放つ者たちが現れ、その闇を打ち破るといわれている。」
「6つの光、ですか?」
「仁・剛・義・智・優・堅。この6つの光だ。
そして、ショウ、お前には堅という光の力がある。この力は、6つの光の力を堅固にするという意味がある。お前が、怒りを力に変えるとき、肩に堅という痣が浮かび上がる。それがお前の言霊の証だ。
そして、あと5つの言霊の持ち主は、ユウタ、神宮司、レン、カイトと、あと一人。
そのあと一人が、まだ、揃ってはおらん。その一人を、探し出さねばならん。」
「その一人とは?」
「それは、お前たちで探すがよい。わしがいえるのはここまでだよ。」
大狗神は三人に
「魔塊鬼たちは力を蓄えて、この先必ずこの地に戻ってくる。百鬼夜行を企むにはどうしてもその殺生石が必要になる。殺生石はそして、この妖鬼神社と勇太を死守しなければならない。この裏吉野には、数多くの妖たちが住むが、すべてがこちらの味方に付くとは限らないだろう。。日和見の奴らもおる。韋駄天や烏天狗たちとの結束を強め、魔塊鬼たちを迎え撃つ準備をしなければならない。急いで準備を整えよ。」
「はっ、かしこまりました。」三人はひれ伏して答えた。
大狗神は、そういうと、大鏡の中に入り、消えた。
三人は、大神から聞いた光の話に衝撃を受け、黙ったまましばらくその場にたたずんでいた。
「光の力って、そんなん知らんかったわ。」
沈黙を破ったのはレンだった。
「俺たちって、そんなすごい役割を背負っているんか。」
神宮司は手のひらを眺めながら、
「俺、小さいときからこの親指の付け根あたりに、『義』と読める痣があるんだけど、こういうことなのかな。」
レンと、ショウが神宮司の掌をのぞき込む。
確かに『義』と読めなくもない痣が神宮司の掌にあるようだ。
「ということは、俺やカイトにも同じように印があるってことなんや。」
そういいながらレンが自分の体を探している。
「お前のしるしは首の後ろにあるぞ。丁度襟足あたりに『剛』の文字が。」
「なんでお前知ってんの?」
「一度、レンと戦った時に、気づいた。」
ショウはしれっとそう言った。
「でも、もう一人って誰なんだろう?」
三人は顔を見合わせて考えたが思いつかないらしかった。
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