第5話 妖鬼神社
神宮司とショウが妖鬼神社に戻ると、カイト、レン、ユウタの三人も妖鬼神社に集合していた。
まず、ユウタが口を開いた。
「銀峯山寺でも、魔塊鬼の話は届いていたらしい。どうやら一部の結界を破られているみたいだ。魔塊鬼は一度結界を破って表の世界に出たらしい。」
「なんのために?」とカイトが聞くと
「結界を警備していた仲間たちは、魔塊鬼にやられる前に、魔塊鬼が殺生石を捜していると聞いたらしいんだ。日本には各地に殺生石と呼ばれる石があるから、それを捜しているんじゃないか?今、うちの韋駄天と烏天狗たちが表の殺生石を調べに行ってる。」
「殺生石・・・」ショウとレンが顔を見合わせた。
「殺生石が、魔塊鬼には必要だってことなのかな?2人は何か知っているようだけど?」
と、聞く神宮司にショウが、
「ジンにはきちんと話しておかないとな、魔塊鬼との戦いの際に玄樹という俺たちの仲間がいたんだ。玄樹は玄武という水と石を操る神獣だ。彼は魔塊鬼の魔力を封じ込めるために自分自身を犠牲にして魔塊鬼に取り込まれたんだ。その時に魔塊鬼の魔力を封じ込めたのが殺生石なんだが、実はその殺生石はジン、お前が肌身離さず身に着けているその勾玉なんだ。
だから、その勾玉を魔塊鬼たちは探している。魔塊鬼の魔力の要はその勾玉なんだよ。」
「この勾玉を奪われたら、どうなるんだろう?」不安そうな顔で尋ねる神宮司に
「魔塊鬼を止める事は難しくなるだろうな。」とレンが答えた。
「俺は、あのばあさんが誰なんか、なんでここに蟲毒を持ってやってきたんか。今回のこの一件にどう関わっているんか調べてきたんやけど。」
レンが話し出した。
「あのばあさんは、以前この山の学校の取り壊しをしようとして、汚職をばらされた化け狸の母親やった。俺たちへの復讐、いや逆恨みやが、それが目的らしい。」
「それと、不思議な話を聞いたんやが、以前は、いつも腰は曲がって死んだ魚のような濁った眼をしていたらしいんやが、ある日を境にしゃんとして、人が変わったようになったらしいねん。。ただ、瞳の色が燃えるような真っ赤になって、吐く息からは黒い靄のようなものが出ていたらしいんや。近所に住む者たちが皆、気持ち悪がって近づかんようになったっちゅうてな。そして、ばあさんは魔塊鬼の殺生石を捜していたらしいわ。」
「あの老婆は何かに操られている。」
ショウがそう言って、山で見たことをみんなに話した。
「魔塊鬼が封印されていた殺生石は、真っ二つに割れていて、確かに封印が解かれていた。俺たちが行ったときに例の老婆が現れたんだ。
魔塊鬼の封印を解いたといっていた。そして、百鬼夜行再来とも。」
「百鬼夜行再来・・・ふざけんなや。そんなことさせへんわ。」
レンが、苦々しい顔でつぶやいた。
「あの老婆に呪をかけたのは魔塊鬼ではないと思う。蟲毒の瘴気とは違う瘴気のにおいがした。魔塊鬼より強い邪悪な瘴気のにおいだった。これは、かなり厄介だぞ。」
びゅーうううう。急に突風が吹いてきたかと思ったら、
「若!!大変です!!」と二人の韋駄天が拝殿に現れた。
一人はボロボロの傷だらけの姿でもう一人に抱えられている。
「どうした?何があった?大丈夫か?すぐに傷の手当てを」ユウタが韋駄天のところに駆けつけた。
「若。私たちは魔魂鬼の動向を追っておりました。奴は各地の殺生石を回り、封印されている妖の妖気を吸い取っています。そして、各地に眠る悪霊や悪鬼のたぐいを集めているようです。源三はその悪鬼に見つかって、やられてしまい這う這うの体で戻った次第です。」
「若、奴らは膨大な力をすでに蓄えております。こちらも戦いに備えなければ」
傷を負った韋駄天はそれだけ言うと、気を失った。
「おい!!大丈夫か?」「気を失ったようです。」もう一人の韋駄天が言った。
「このことは親父殿はご存じなのか?」ユウタが聞くと
「とにかく、皆さんに一番にお知らせしたほうがと思い、ここに駆けつけました。御屋形様には他の韋駄から報告が行ってるはずですが・・・奴らに襲われてなければいいのですが…」
「わかった。源三は寺で手当てしてもらおう。大丈夫、秘伝の薬があれば、すぐに良くなる。
みんな、俺も一度寺に戻る。寺でこれからの対策を親父殿と話してくるよ。」
と、ユウタがいうと
「あぁ、こちらも、大神と話をして対策を練ることにするよ。」とショウが言った。
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