気持ち悪くなんてないよ
最後の30分は、セラピーではなく今度はイメージワークというものに取り組ませてもらった。先生に言われた通りのものを思い浮かべるという作業だったので、先生に言われたこととその時にイメージしたものをそのまま記していこうと思う。
「自分の体に対して、どんなイメージを持っていますか?自分の体への気持ち悪さって、どんな色だと思いますか?」
…私の嫌悪感のイメージは、青かびのような色をしていて、ぬるぬるうにゅうにゅしている感じ。藻みたいなのが体にへばりついているような、そんな感覚。
「じゃあ、11.12歳の自分がいる、と思ってください。体の変化が気持ち悪くて隠したかった自分。」
…あの頃の自分は、どうしようもない体の変化に嫌悪感と戸惑いと不安と少しの恐怖を感じていた。多分今の私を見てめっちゃ女じゃん!って言うだろうな。そうだよ女だよ、でも私は私だ。中身はあなたと何も変わらない。私はあなただ。今は怖いと思っているかもしれないけど、それは全然普通のことだし変なことじゃないから。心の中で、そう呼びかけた。
「森の中に、こんこんと水の湧き出る泉があります。そこは浄化の泉。そこに入ると、自分の体の汚れや嫌なものが、全部綺麗になっていきます。その子をその泉に入れてあげてください。」
…入ってきな〜って言ったら喜んで飛び込んでいったあの子。元気に泳ぎ出して気持ちよさそうにしている。嫌なもの気持ち悪いもの全部溶けて浄化されていく。仰向けにぷかぷかと浮かんで光を浴びている。
「その子は岸まで泳いできて上がってきます。その子をきれいなタオルで包んで、拭いてあげてください。」
…上がってきたあの子を私はふかふかの真っ白いタオルで拭いてあげる。ぶるぶると犬みたいに頭を振って、はにかみながら笑顔を見せている。
「今度は、あなたも泉に入っていきます。入ると、自分の体の汚れや嫌なものが、全部綺麗になっていきます。」
…泉にどぷんと浸かる。ひんやり冷たくて気持ちがいい。私にまとわりついていた嫌なものがするするとほどけて溶けていく。気持ちがいい。あの子と同じように、仰向けに浮かんで光を浴びる。全身で光を浴びる。光は私の細胞一つ一つに染み渡っていく。
「岸まで泳いできて上がってください。そしてきれいなタオルで、体を拭いてくださいね。」
…岸まで泳いで上がり、真っ白いタオルで体を拭く。冷たくて気持ちよかったね、とあの子と話しながら。
「その子の胸の中に、きれいなお花が咲いているのが見えます。」
…大丈夫、あなたは綺麗だよと言ってあげる。あの子の中に咲いているのは、真っ白な百合の花。ずっと笑って楽しそうにしている。つられて、私も笑顔になる。
「その子はもう少し大きくなって、中学生になります。どんな子になっていますか?」
…中学生になったあの子は、きっとスカートも楽しそうに履いて折ったりなんかして、髪は伸ばして、テニスしてるときはポニーテールをキャップから飛び出させたりしてるんだろう。どうせならメガネじゃなくコンタクトのほうがいいよ。そしていつも溌剌と笑っている。
「高校生になったら、どんな子になっていますか?」
…高校生になると、多分テニスは続けているから真っ黒に日焼けするんだろうけど、プリクラでゴリゴリ加工して遊んでそう。オフの日はきっとロングスカートかワンピースを着ていて、髪は鎖骨くらいまであるんだろう。そしてやっぱりいつも笑っているんだ。
「大学生になったら、どんな子になっていますか?」
…大学生になったあの子。とびきり美人ではないけれど、きっと愛嬌があるから好きになってくれる人がいるんだろうな。大人びてきてあの子の中の百合の花は綺麗に咲き誇って、優しい匂いがするんだろう。笑顔の絶えない優しい子。
「大人になって働き始めました。どんな人になっていますか?」
…社会人になったら、ちゃんとスーツを着て髪もまとめて真面目に働いてそう。愛想がいいから接客とか向いてそうだな。いつも笑顔だから評判もいいだろうし、色気も出せるようになったりして。
「その子の前に立ってみてください。そして、その子を抱きしめてあげてください。」
…私があの子を抱きしめると、あの子も私を抱きしめる。ありがとう、今まで頑張ってくれて。もう許してもいいよね。
「今、自分の体に対してどういうイメージになりましたか?」
…私の体の認識は、ちょっと綺麗なものに変わった。透き通った水のような、透明感のある感じ。今の自分を、ちょっとはいいものかもって、人に見せてもいいかもって、そう思ってあげられる気がする。
なりたかった自分、こうありたかった自分、みたいなのが、今イメージした清楚な感じの女性だったのが、自分でも意外だった。後から白いユリの花言葉を調べたところ、「純潔」・「威厳」・「無邪気」・「清浄」・「高貴」・「甘美」などのワードが出てきて、確かにそんな感じかもと一人で納得した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます