嫌いだけど好きだった

 カウンセリングの最後の30分でセラピーを受けた。こういうの初めて受けるな~どんなもんなんかな~、と半信半疑だったが、終わったころにはボロボロに泣いている自分がいた。

 文章化するのが難しかったので、先生との会話をそのまま綴っていこうと思う。


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先生:こっから少しセラピーっていうのを入れていきたいと思うんですけど。小学校3年生のときの、傷ついちゃった私。その傷ついた私を守るために男っぽくなんなきゃっていう、今のこの外側に見せてる自分を作るようになったんだよね。そのくらいなめられないようにしなきゃ、って思わざるを得ないくらいすごい傷ついちゃったんだと思うんだよね。まずは、今そのときの自分になってみながら、その男子に言いたいことがあったら何でも言ってみる。お前ひどいなとか本当は好きだったのにひどいとか、あんなことされてもう最低と思ったとか、言いたいことをちょっと言ってみてほしいんですよね。


作者:わかりました。


先生:何でもいいよ。


作者:小3のときの自分…。一番は、なんであんなことしたの、って言いたい。なんでそんなことしたの、私は好きだったのに。すごい悲しかったし、しんどかったし、傷ついたし、何でそこまでされなきゃいけなかったの。私なんかした?って言うと思います。


先生:そうだよね。


作者:嫌なことした?何がそんな嫌いだった?体も痛かったし、心も痛かった。すごいいっぱい傷ついた。


先生:体も痛かったし心も痛かったし。


作者:とかかな、言いたいこと。嫌いだけど好きだった。うん、嫌いだけど好きだったな。


先生:そうなんだね。嫌いだけど好きだった。そっか。


作者:そうですね。今言って自分で何か腑に落ちましたね。


先生:そっか。今部屋の中に、何かクッションとか、枕とか、何かあったりします?


作者:ぬいぐるみあります。柴犬の。


先生:それいいですね。ちょっと後で使うから、横に置いておいて。その男の子に、もう一度ちょっと試しに言ってみてほしいんですけど、もっかい嫌いだけど好きだったって言ってみて。


作者:はい。嫌いだけど好きだったよ。


先生:だけど、あまりに心が傷ついちゃったからもう男の人好きになるのはやめようって思った。


作者:だけど、あまりに心が傷ついちゃったから、もう男の人好きになるのやめようって思った。


先生:もう好きになるのをやめようって思うぐらい嫌いだけど好きだった。


作者:もう好きになるのやめようって思うぐらい嫌いだけど好きだった。うん、そうだったんだな…


先生:今言ってみてどんな気持ち?


作者:なんか本当にそうだったなっていう、好きでいるのがしんどくて、嫌いになったのもあるな。めっちゃ腑に落ちました。


先生:じゃあそれを言ってみて、好きでいるのがしんどくて嫌いになったんだよ。


作者:好きでいるのがしんどくて、嫌いになったよ。


先生:今言ってみてどんな気持ちになる?


作者:うわー、なんか泣きそうですもう。


先生:そうだよね、カウンセリングだから、涙が出てくるときは自然に流していいですよ。それと、さっきのぬいぐるみ持ってきてくれたやつ、それ自分と思ってみてね。小学校3年生のときの傷ついちゃった私ね、その私に何か言ってあげたいことがありますか。


作者:うーん、忘れててごめんね。しんどい思いしたのに、忘れててごめん、しんどかったよね。しんどかったけど、好きでいるのは止められなかったんだよね。そうだね。きつかったね。


先生:そっか。しんどかったけど好きでいるのが止められなかったんだね。その子をそんなふうに思いながら優しく優しくなでてあげてください。


作者:ごめんね忘れてて。ごめんもう思い出した。忘れない。忘れないよ。

(この時点でボロ泣きしてた。優しい音楽を聴きながらしばらくぬいぐるみを抱きながらなでてた。)


先生:今どんなことを思ってる?


作者:なんだろう。もう忘れない、しんどい思いをしたことも悲しかったことも嫌いだけど好きだったことも忘れないで。置き去りにしない。この時の自分を。なかったことにしてたんだと思います。


先生:そっか、置き去りにしてたんだ。なかったことにしてたんだね。じゃ、今度は、その子の綺麗な心を見てあげてほしいんだよね。人をとことんまで好きになるような、綺麗な心あるよね。その子の中にある誰かを好きになる気持ち、それをその子はそのまま持ってちゃいけないって、つらいだけだから持ってちゃいけないって思ったけど、誰かを好きになる気持ちは、その子にとっての宝物なんです。今日はもう一度それを呼び覚まします。その子の持っている誰かを好きになる気持ちは、とてもピュアで大事なもの。また抱きしめながらその子をなでながら、またもっかい誰かを好きになれるといいねって。

(ここの先生の言葉は何度読み返しても泣きそうになる。)


作者:またもっかい誰かを好きになれるといいね。


先生:あなたの好きな気持ちを誰かに向けられるといいね。


作者:あなたの好きな気持ちを誰かに向けられるといいね。


先生:あなたの好きな気持ちを受けるのは、相手にとって嬉しいこと。


作者:あなたの好きな気持ちを受けるのは、相手にとって嬉しいこと。


先生:今言ってみてどんな感じがする?


作者:なんか確かに、自分が好きになったら迷惑だろうみたいな気持ちがあったなっていうのに気づきました。


先生:そうだよね、そう思っちゃう体験したからね。あなたのこの純粋な好きという気持ちは宝物だから。それを誰かに向けたら、相手は嬉しいんだよって思いながら、その子をまた抱きしめてあげてくださいね。誰かを好きな気持ちはとても綺麗なものだから。今度は相手も喜んでくれるはず。そして今度は喜んでくれる相手を見つければいい。またもう一度誰かを好きになっていい。どう思った?


作者:あなたの好きな気持ちは隠さなくていいよって、一緒に渡す相手を探しに行こうねって思いました。


先生:そうだね。そう受け取ってくれる人ちゃんといるからね。喜んでくれる人に渡せばいいからね。


作者:こんなに泣くと思わなかったです。びっくりしました。


先生:そっか、今どんな気持ちか、今日はどうだったとかよかったらお話ししてください。


作者:やっぱその小3のときの自分を置き去りにしてたんだなっていうのに気づいて、すごいごめんねって思いました。でもそのときの自分が、好きっていうを気持ちをちゃんと自分は持ててたんだなっていうのは、思い出せてよかったと思います。


先生:そっか、わかりました。今日せっかくその子の気持ちはすごいいい気持ちよ、大事な気持ちよって思ってあげられたから、時々思い出してそういうふうに思ってあげるといいかもね。


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 しゃべっているうちに、自分でも気づかなかった感情がたくさん出てきて、涙も止まらなくて、こんなにいろんな気持ちを隠して閉じ込めていたんだ、と自分でも驚くほどだった。カウンセリングが終わった後は、心がじんわりして優しい気持ちになっていた。小さいときの自分がそばにいてくれるような気さえした。こうやって、一つ一つ自分の中の封印を解放していきたい、そう思った。

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