思ってたのと違った

 2回目のカウンセリングは2時間に及んだ。(カウンセラーの先生は遠方の方なのでZoomでカウンセリングを受けた)まず小さいころから大学に入るまで、どんな女の子でしたか?という話を時系列前後しながらも話していった。話しているうちに気づいたのは、私って物心ついてから今までボーイッシュでやってきました、って思ってたけど、(1話目で書いたのがそれ)よく思い出したらそうじゃないな、ということだった。


 幼稚園~小学校低学年くらいまでは、本を読むのが好きでちょっと人見知りなとこがある普通の女の子だった。ランドセルの色はピンクを選んだし髪も結ぶしスカートも履くし好きな男の子もいた。

 ちなみにランドセルを選ぶ際の忘れられないエピソードがある。当時の私は普通に赤でいいや~と思っていたところ、母親に赤だと周りと一緒でつまらないから別の色にするよう言われた。なんだよその理屈。それなら、と紫を選んだのだが、その色は○○ちゃんと一緒だから変えなさい、と言われ、じゃあもうこれでいいよ、と選んだのがピンクだった。なお3つ下の弟は黒で7つ下の妹は赤だった。普通でいいのかよ。

 そんなこともありつつ、小3の2学期に転換期その1が訪れる。それが前回思い出した好きな子にいじめられた事件。それ以降、自分の女らしさを封印し、ボーイッシュな自分を演じるようになった。この男の子好きかも、という気持ちが出てきても、必死に押し殺し続けた。

 そうやって頑張って男の子っぽく振舞っていたが、小5になったころ体の変化が訪れる。生理が始まって、胸も大きくなり親にブラを買い与えられた頃。それが転換期その2。なんかやだな、女みたいで。そう思ってこっそりつけない日もあったけど、ある時つけてないのがバレてしまい、なんでつけてないのって言われてしまった。下着が透けているのをクラスの子にからかわれて、すごく恥ずかしい思いをしたこともあった。こんなもんつけたくないのに。いやだ、周りにバレたくない、隠したい。その一心でさらに男の子っぽくしなきゃ、女の子らしいのがバレたら男子から何言われるか分かったもんじゃない、と必死だった。自分の気持ちに反してどんどん体は変わっていく不安、怖さ、混乱。このころから、心と体が乖離しているような感覚を覚えるようになったんだと思う。

 小6に上がったときには、クラスの中ではガキ大将というか、そんな立ち位置になっていた気がする。喧嘩もするけど一緒に遊んだりもするし、握力も強かったのでゴリラと呼ばれたりもしたし。うまく言えないけど、男の子は友達で、敵。男とか女とか抜きで対等な立場。そういう関係でいようと努めた。


 中学に上がってからも男の子っぽくいようとして、制服のスカートをいやいや履いてたけど、中2で漫画アニメにどっぷり浸かりものの見事なオタクになった。3次元より2次元だよねえ~とイキり散らかし、まさに中二病真っ最中。見た目的な面でもだいぶ太ったのと眼鏡をかけるようになったので、典型的な芋女が出来上がった。それはそれですごく楽だった。だって男子からは女としてないわ~と思われてるはずだから。彼らは私のことなんて眼中にないし、私も彼らのことなんて眼中にない。オタク最高~~!!!な中学校生活だった。

 高校はそこそこの進学校に通っていた。制服がなかったのでスカート履かなくていいじゃん!という理由だけで選んだ学校だった。また元女子高で男子がほとんどいない、というのは私にとってのびのびと過ごせた要因の一つだったと思う。ずっとショートにしていた髪をボブくらいに伸ばしたりスカートも履くようになったり、女の子らしいことを何の抵抗もなくできるようになった。まあ相変わらず見た目は芋だしオタクだったけど、いい高校生活を送っていたと思う。

 だったんだけど、大学ではまたボーイッシュに戻している自分がいた。この辺は次のカウンセリングで詳しく話すことになるのでいったん置いておく。



 …と自分の半生を振り返ったわけだが、そんな小学生の時の自分でも忘れていたような経験が今でも尾を引いているというのがなかなかに驚きだった。人間の脳って不思議。

 話を聞いてもらった後、先生にいろいろ言っていただいて、なるほどなあ~と思ったのが大きく2点。

①常に自分に意識が向いている状態はしんどい:封印していた女の子らしさを出せた高校時代について、今でもそういう風にしたいと思いますか?という質問に対し、本当は人目を気にせずそういうことをしたい、というのが私の答えだった。ということは、普段から人目、特に異性からの視線を気にしている状態にあるんだ、と気づく。そうやって自分は周りからどう思われているんだろうどう見られているんだろう、と意識のベクトルが自分に向いていると、自分のダメなところばっかり気になってしまう。可愛くないとか太っているとか。そういうある種自意識過剰な状態から、意識のベクトルを外に向けられるようになると変わっていくんじゃないか、というアドバイスを受けた。

②女らしさを出してもなめられない:何当たり前のこと言ってんだこいつと思われるかもだけど、私にとっては青天の霹靂のようだった。自分なんかが女らしくしたらダメだと思って、ボーイッシュに男性的に振舞っている自分がほんとの自分だと思ってずっと生きてきたから。必死に隠してないものと思って叩き潰してきたものを、もう出してもいいんですよ~と急に言われて、そりゃあびっくりした。

 でも考えてみたら、私が女の子らしくしていることを他人から否定されたのって小3の時だけで(それも私がそう思い込んでいるだけで本当は違うかもしれないし)、それ以降は別に誰に何を言われたとかでもなく、「周りからこう思われるだろう」って周囲の視線を勝手に気にして勝手に思い込んでいた自分が一番否定してたんだよな。だから結局は自分の意識がすべてなんだと思う。

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