第4話 その日起きたこと

一晩中道を休み休み駆け抜けた2人は

何とか夜明け頃には隣町の向こうの村近くまで

辿り着くことができた。

村に着いた頃には随分明るくなってしまって

いたが、村の様子は静かで、

いたって平和そうであった。

元々隣町から北上し、比較的検問が厳しくない

ところを狙って国外へ脱出する予定であったので

少し遠回りすることになってしまったが、

追手が来ないのであればそれ程急ぐ必要も

なくなるはずではあったが…


村に着き、一息ついた昼頃に徐々に昨夜何が

起きたかの情報がぽつりぽつり入ってきたのだった。

どうも昨夜、この国の総裁が暗殺されたらしい。

それはにわかに誰も信じられないことであった。

この国は封権的な軍事独裁国家である。

長く王権性が続いてきていたが、

やがて滅ぼされ、武力を一手に持っていた軍部が

全ての権力を握り強権的にこのを治めたのだった。独裁国家になる前から、総裁とその取り巻き達は

都合良く動かすための駒として工作部隊を

育成していた。

総裁の側はその工作部隊の中でも選りすぐりの

手練達が守っており、対抗者を暗殺することは

常にあれど、暗殺されるなどあるはずもなかった

のだった。


総裁の派閥の中に反逆者がいたのだろうか?

それともクーデターを企む反乱分子が

いよいよ動いたのか?

もしくは王権廃止を恨む者達の仕業か…

誰にも真相が分からず、暗殺の主犯は

極刑に処されるため、誰も下手に次の権力者に

名乗りを上げることができず

事態は混乱を極めるのだった。


2人が住んでいたクラーチの街は首都に近く

政府関係者も多く住んでいたため、

昨晩のうちに直ぐに封鎖され、犯人探しと言う名の

内乱状態に突入してしまい多くの建物が炎上し

とても脱出などできる状態ではなくなって

しまっていた。そして今朝のうちに

隣町も封鎖されてしまったようだった。







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