第3話 死神の助言

「君達は私を待ち伏せていたのかと思ったが

違うようだね。」

「ぼちぼち起こり始めた内乱の戦火が

空を染めているのさ…」

死神はそう言うと背中を向けて去ろうとした。

「え?内乱?そんな、そんなこと

起こるわけないだろ、な、何言って…」

余りに有り得ない言葉に2人は全く事態を

飲み込むことができなかった。

『有り得ない、そんなこと起こるはずがない』

何度も同じ思考が巡るが

目の前の取りつくしまもないような死神が

嘘や冗談を言うとは思えなかった。

「そういえば君達、隣町を目指しているのかい?

隣町は明け方と同時に情報が入り封鎖される

だろう。自由に動きたいなら

その先の石切りの村の方がいいだろう」

何故か助言をくれた死神は

表情も雰囲気もとても穏やかであった。

2人が呆気に取られているうちに

不意に姿を消してしまったのだった。


「今の…何だったの?誰だったの?

ていうか、嘘でしょ街が燃えてるなんて…」

来た道を気にし出したアリーに

ヌーイはどうしても苛ついてしまった。

「今更あの街のことを気にしてどうするんだ!

もう二度と帰ることもない覚悟で出てきたんじゃ

ないのかよ。」

「分かっているよ、でも…」

アリーはやはり育ちがいいためか

どこか非情になりきれない。

覚悟を決めたと言ってもヌーイとはやはり

温度差があるようだ。

けれど

「戻りたいなら止めないよ。

でも俺は一度決めてしまったから

もう二度と帰らない。俺は一人でも行くよ。」

内乱が起きたのなら追手は来ないので好都合だ。

だが先程の死神の言う事が本当なら

余計に先を急がなくてはならなくなってしまった。

「戻らないよ!私から誘ったのにそんな

無責任なことしないわよ!」

「ただちょっと…そんな、有り得ないこと

言われて動揺しただけだし…」

ヌーイはアリーが自分が言い出したことに

少しは責任を感じていることに驚いた。

『こういうところがあるから一緒に行くかって

思ったんだっけ…』

そこから逃げたい思いはヌーイの方が強かった

だけど決断がつかないでいただけだった。

「動揺するのは当然だ、俺だって同じさ

でもここまで来てしまったのだからもう行こう

行くしかない。ここにいても事態が分かるわけでも、変わるわけでもないのだから」

「うん、、」

混乱したままのアリーを促し、

2人は再び道を急いだのだった。

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