第2話 死神について

そこに立っていた黒い影はその日まで死神と 

呼ばれていた暗殺者である。

その日まではーーー

その日全てが変わってしまったことを

ヌーイとアリーはまだ知らなかった。

死神と呼ばれていた暗殺者は

本当の名前を誰も知らない、本人でさえも

彼女を表す言葉、又は記号は

施設を経由して教育機関に入った時に

便宜上与えられた番号11567と

活動するうちに付けられたコードネーム:

キラービーのみである。

そのどちらも指示を受ける時に自分を

指していると認識するためのもので

それ以上の意味はなかった。

その者が来ると必ず死ぬと言われていた

死神ことキラービーは2人を一瞥した。


若い2人はその瞬間、一瞬

「殺される」

と感じ、死を覚悟したが、

それは本当に一瞬だけであった。

彼女が一瞬感じさせた殺気はすぐに消え

不意に言葉を発した。

「君達はー…

動乱を察知して逃げてきたにしては速すぎる

しかし、隣町への伝達のようにも見えないが…」

喋りなれていないボソボソとした声は

若い2人に向けての言葉なのか独り言なのか

上手く判別ができなかった。

ヌーイは話し掛けることで先程の殺気が

再燃しないか怖かったが

どうしても確認しておきたかった。

「あなたは俺達の追手ではないのか?」

この者が追手では自分達は逃げ切れない。

本能的にそれが分かった。

彼女が追手であれば観念するしかない。

しかし彼女は追手と聞いて全ての興味を

失せたような気配を見せた。

「追手?元から何かから逃げていたのか

よりによってこんな夜に」

「こんな夜にってどういうこと!?

クラーチの空が燃えているよう明るいことと

何か関係があるの?」

アリーはもとから死神の殺気を感じなかったかのように、臆せず彼女に問い掛けた。

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