EITOエンジェル総子の憂鬱(仮)19

クライングフリーマン

青春の葛藤

 ======== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 南部(江角)総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。

 大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。コマンダー。総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。

 足立祐子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 石動悦子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 宇野真知子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 丘今日子・・・EITO大阪支部メンバー。看護担当。元レディース・ホワイトのメンバー。

 河合真美・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 北美智子・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 久留米ぎん ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトの総長。EITOエンジェルス班長。

 小峠稽古 ・・・ EITO大阪支部メンバー。元レディース・ホワイトのメンバー。

 和光あゆみ・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 中込みゆき・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 海老名真子・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7のメンバー。

 来栖ジュン・・・EITO大阪支部メンバー。元レディース・ブラック7の総長。EITOエンジェルス班長。

 愛川いずみ・・・EITO大阪支部メンバー。EITOエンジェルスの後方支援担当になった。

 白井紀子・・・EITO大阪支部メンバー。事務担当。ある事件で総子と再会、EITOに就職した。

 芦屋一美警部・・・大阪府警テロ対策室勤務の警部。総子からは『ひとみネエ』と呼ばれている。

 芦屋二美(ふたみ)二曹・・・。三つ子の芦屋三姉妹の次女。陸自からの出向。総子からは『ふたみネエ』と呼ばれている。

 芦屋三美(みつみ)・・・芦屋財閥総帥。総合商社芦屋会長。EITO大阪支部のスポンサー。総子からは『みつみネエ』と呼ばれている。

 小柳警視正・・・警視庁から転勤。大阪府警テロ対策室室長。

 横山鞭撻警部補・・・大阪府警の刑事。大阪府警テロ対策室に移動。

 指原ヘレン・・・元EITO大阪支部メンバー。愛川いずみに変わって通信担当のEITO隊員になった。

 幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。

 花菱綾人所員・・・南部興信所所員。元大阪阿倍野署の刑事。

 倉持悦司所員・・・南部興信所所員。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。総子の夫。

 佐々一郎巡査部長・・・曽根崎署刑事。横山と同期。

 本郷弥生2等陸佐・・・陸自からのEITO大阪支部出向。

 友田知子・・・南部家の家政婦。


 = EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す =

 ==EITOエンジェルズとは、女性だけのEITO大阪支部精鋭部隊である。==


 午前10時。EITO大阪支部。会議室。

 集まっているEITOエンジェルスメンバー。南部興信所のメンバー。そして、芦屋一美、芦屋二美。

 取っ組み合いの喧嘩をしている大前と総子。

 大前には祐子、今日子、ぎんが組み付いていた。一方、総子には、みゆき、あゆみ、ジュンが組み付いている。

 入ってくる、芦屋三美。

「どうしたの?ヘレンからSOSが入って来たけど。」と、三美は二美に尋ねた。

「きょうだい喧嘩。朝っぱらから。」二美は困惑して言った。

「誰か、あれ持って来て。」三美が言うと、紀子がピコピコハンマーを三美に渡した。

 三美は受け取るや否や、大前と総子の前頭部と言わず後頭部と言わずピコピコハンマーで「どついた」。

 2人が離れると、三美はそれぞれに平手打ちをした。

「いい加減にしろ!」三美の剣幕に2人は、大人しくなった。

「一美、解説して。」三美は言った。一美は、警察手帳のメモを取り出した。

「皆の話をまとめるよ。総子は会議が始まるとすぐ、オスプレイを貸してくれ、と言い出した。興信所の2人を連れてきて。」「何で?」「東京に出張に行きたいが、倉持所員のミスで新幹線のチケットが取れなかった。」「それで?」「オスプレイで運んでくれないか?」「ふむ。」「コマンダーはこう言った。『公私混同やんけ。』」「なるほど。」

「総子はこう言った。『行きだけやん。弥生かて、隼人のこと心配やし、ウチも伝子姉ちゃんのこと心配やし』」

「ちょっと確認するけど、総子。隼人のこととか伝子さんのこととか、って誘拐された事件のこと?昨日の。もう、終ったんじゃないの?ヘレン、その連絡来たのよね。」

 ヘレンは、「はい。4人とも無傷で帰ってきたそうです。半グレのアジトは20人ほどいただけなので、あっと言う間に戦闘は終ったそうです。結果的にEITOエンジェルスに救援しなくて良かったって、夏目警視正が言ってました。」

「もう一つ確認。一美。支部の事件は?」「今のところ、ないわ。くまた神社燃やした犯人は、東京の事件のお陰で捕まったし。」

「分かった。ウチの『私物』の方のオスプレイを『レンタル』する。タダはダメよ。それと、片道ね。幸田さん、所長に連絡入れといて。二美。オペレーション、お願いね。コマンダー。今日は、総子と弥生に一日休暇をあげて。有給休暇よ。文句のある人は、一歩前へ。」

 会議室はしんと静まりかえった。誰も前へ出なかった。

「それと、コマンダー。支部でセックスしたりしないでね。それこそ『公私混同』よ。」

 芦屋三美は、実はEITOのオーナーである。表向きには、EITOは自衛官や警察官のOBの寄付とクラファンで運営していることになっているが、資金の多くは芦屋グループが払っている。三美の英断は絶対だ。

「支部では、セックスなんてしてへんがな。」

 大前の言い訳に、「支部では?こういうの、何て言うんだっけ、一美。」と尋ねた。

「落ちた、ね。」一美はケラケラと笑い出した。二美も笑い出した。

 EITOエンジェルスメンバーも笑い出した。

 大前だけ、憮然とし、紀子は顔を赤らめていた。

「良かったな、お嬢。おおきに。」と幸田は言った。

 午後6時半。総子のマンション。

 知子は、総子の指示通りのご馳走を並べていた。

「ただいまー。」総子はエレベーターから出て来た。

 総子のマンションは芦屋グループビルの中にあり、表からは分からない。

 オスプレイの駐車場も、表からは分からない。

 駐車場から戻る時は、内部エレベーターを使用するのだ。

「総ちゃん、今日は、何かのお祝いの日?」と知子は言った。

「ともチャン、今日は『さかり』の日やねん。」「さかりの日って、犬や猫やあるまいし。」

「あんた。この前、何日前か分かってる?」「え?」「40日前や。ともチャン、栄養剤とドリンク剤は?」

「ちゃんと、揃えときましたよ。そうかあ。今日は『子作りの日』か。旦那さん、頑張って下さいね。」

 知子が帰ると、総子はガツガツと食べ出した。「幸田達は、明後日くらいになるらしい。」

「浮気調査と違って、裁判の調査は手間暇かかるな。まあ、儲かるけど。」

「弥生ちゃん、弟と再会出来て良かったな。もう元気なんやろ?」

「うん。傷もすっかり治って、EITOの優秀な技術者やな。ああ。伝子ねえちゃんとこで、ひやしあめよばれたで。」

「ひやしあめ?」「作り方教えたから・・・て、言いたいけど、お母ちゃんにメールでレシピ送って貰うたんや。」

「そうかあ。良かったなあ。今夜は燃えよな。」

 ところが、燃えたのは南部達だけでは無かった。

 午前7時。

 TVで、こんなニュースが流れた。

[今朝未明、大阪府守口市の集合住宅で火事があり、住人の48歳の男性が死亡しました。守口市の集合住宅で住人の男性から「パチパチと音がする。煙が出てきた」と110番通報がありました。警察や消防によりますと、火は約2時間後に消し止められましたが、2階の一室を中心に約80平方メートルが焼損。この部屋にひとりで暮らす男性が病院に運ばれましたが、死亡が確認されました。警察は出火の原因を詳しく調べています。]

「放火かな?物騒やな。」と南部が言うと。「この頃、何や知らんけど、火事多いですね。守口市だけでも今週2軒目ですわ。」と家政婦の知子が言った。

「嫌な予感する。」と、総子は言い、食卓に着いた。

「守口市言うたら、芦屋グループの工場があったな。大丈夫かな?」と南部が言うと、エレベーターから入って来た二美が「どうかしらね。ともチャン。私もトーストと紅茶。」と言った。

 午前10時。EITO大阪支部会議室。

 ディスプレイに小柳警視正が映っている。

「これを見てくれ。テレビ1大阪局のヘリの中継映像だ。」

「ヨドバシカメラ前ですか。大阪駅のビルとの間の陸橋ですか。」大前が言うと、「その通りだ。横ヤンが、野次馬整理の手伝いに行っている。高校生らしき3人が塊になっていて、2人が1人に拳銃を突きつけている。」

「白い拳銃?見たことないわ。」と二美が言った。

「3Dプリンターで作ったものらしい。3人から少し離れた所にいる10人が持っている機関銃も3Dプリンターで作ったもののようだ。機関銃の銃弾が本物かどうかは分からないが、JR大阪駅側の階段に着弾した拳銃の銃弾は本物だったことは、横ヤンが確認している。横ヤンが交渉人になって、拳銃の2人に要求を尋ねたら、同じ高校の女生徒椎橋明美を連れて来い、さもないと、和光雄三をここで公開処刑をする、と言っている。真壁達が学校に向かった。君たちは、至急事態の収拾に当たってくれ。」

「取り敢えず、急ごう。ヘレン。東京本部に報告。もし応援依頼があっても、こっちが優先や。」

「了解しました。」

 皆は、オスプレイに急いだが、紀子は、大前に向かって100均の火打ち石を鳴らした。

「前は、総子に打ってたのに。乙女心か。仲人は南部さんに頼むか。」

 紀子は、顔を赤らめて、倉庫に逃げ込んだ。ヘレンはふふふと笑った。

 午前10時半。陸橋上空。

 オスプレイがゆっくりと降下してきた。オスプレイから長いロープが陸橋に降ろされ、EITOエンジェルスメンバーが次々と降りて来た。半数は、野次馬整理に当たった。

 オスプレイはすぐに去って行った。

 総子は、一歩前へ出た。「要求は聞いた。彼女が来るまで時間がある。何でこんなことをしてるか、教えてくれへんか?」

「お前、リーダーか。大阪の人間か。」「ああ。そうや。正体は明かせんが、EITOエンジェルスは大阪の人間や、基本的に。」

「EITOは東京やと思ってた。エマージェンシーガールズは東京やと思ってた。」

「それは、東京本部の話や。EITOエンジェルスは大阪支部所属や。分かったか。さ、あんたの名前から聞こうか。」

「木梨武雄や。言うとくけど、銃身は3Dプリンターでも、弾は本物やぞ。通行人を傷つける積もりはない。」

「よっしゃ。男に2言はない、か。彼女が到着次第で話は進む訳やな。」

 その時、後ろから、ジュンの声が聞こえた。

「チーフ。到着しました。」

 横山や佐々は、野次馬に道を空けるように指示をした。

 真壁と一美に連れ添われ、2人のセーラー服の女子高生がやって来た。

「タコ!武雄のアホ!!あんた振って、そこの大橋君に乗り換えたと思ってたんか。大橋君は目眩ましや。私が死しているのは、このえみりんや。」

 椎橋明美は、いきなり、えみりんと呼ばれた少女とキスをした。

 思わず、木梨は、大橋を離していた。すかさず、今日子と稽古が木梨と、もう1人の拳銃男の拳銃を取り上げた。

 祐子、悦子、今日子、あゆみ、真美は機関銃を持った男子高校生の機関銃を取り上げた。

 一美の合図で、騒動を起した男子生徒達は、警官隊に一斉に逮捕連行された。

 大橋は、突然、陸橋の上から下の道目がけてダイブした。

 大橋は道には落ちなかった。2台のホバーバイクがネットに包み込んで、ヨドバシカメラ1階入り口に降ろした。ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』をEITOが改造したバイクである。

 実は、場所柄を考えて、二美と弥生がネットを着けて待ち構えていたのだ。

「やったな、総子。」とEITOエンジェルス姿の総子のインカムに聞こえて来た。大前だ。

 午後1時。EITO大阪支部。会議室。

「痴話喧嘩とイジメ?」三美は驚嘆の声を出した。

 ディスプレイの向こうで、真壁は真面目な顔で報告していた。

「木梨は、明美の元カレ。大橋は今カレ。明美は東京に憧れていた。転校してきた大橋に一目惚れした明美は、処女まで捧げた。木梨は、気の弱い大橋に3Dプリンターで拳銃を造らせた。銃弾は、木梨が南港に遊びに行った時拾ったものだった。木梨には絶望感しか無かった。頭が良くて、スポーツも出来て、イケメンの東京モン。仲間は同調して参加した。ああ、機関銃の方には銃弾は入ってなかった。」

「実は、3ヶ月前に大きな手入れがあってね。反社の落とし物。こういうのって警察に届けないのよね、普通。」と横から一美が言った。

「で、今回の事件。明美を迎えに行った二美さんが、一緒にいた一条えみと明美に『一芝居』打たせた、ってこと。皆には連絡する暇が無かったので、びっくりしたでしょう。」と、真壁は笑った。

 小柳警視正が言った。「青春だ、青春だって、しきりに横ヤンが言ってるよ。」

「青春かあ。」と、大前は呟いた。

「兄ちゃんも青春まっただ中やんな。」と、総子は大前をからかった。

「小柳さん、仲人します?」「ああ、いいよ。女房に言っておく。」

 通信が終り、ディスプレイは消えた。

 皆が大前と紀子に集中した。

「えと、解散やな。今日は。」大前は照れくさそうに出て行った。

 皆、爆笑した。

 横山は言った。「今日の吉村新喜劇は最高やな。花ヤンに教えたろ。」

 ―完―


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