第8話:ライフラインと労働者






 さてポイントはドラゴン少女や竜華がちょくちょく稼いでいくとして、目下の問題は衣食住だ。


 現状まだライフラインは動いているが、いつまで保つか分からない。 今のうちに最低限整えておく必要がある。


 電気しかり、水道、下水、ガスなどは必要だろう。 そして食料についても、街の食材は有限だし、作っていかなければならない。


「人手が必要だ。 しかし人はいない――



――なら魔物を創るしかない」


「ただ問題が一つある」


「魔物の住む街、ダンジョンであることが分かると人が今後人が寄り付かなくなる可能性がある」


 興味なさそうに欠伸するドラゴン少女に向かって俺は語る。


「じゃあどーすんだ?」

「人と見た目が変わらない魔物を創ろうかと思ってる。 羽とか耳くらいならコスプレで誤魔化せると思うから」

「そうすりゃいーじゃん」

「ただ見た目と知性を備えてるとなるとかなりポイントが掛かりすぎるんだよね……」


 無限にポイントがあれば悩まず実行するんだけど、今はそんな余裕はない。


 そんなポイントあれば街創りに充てたいのだ。 しかし魔物を作業員として使っていることを隠すとしても、もしバレて初めに良くない噂が広まると、この街がどんな良い街になろうと嫌煙されてしまうだろう。


「魔物がいても良いんじゃないでしょうか? 気になる人はいるでしょうが、一々住人の意見を通していたらきりがないと思います」


 悩んでいたが、俺は竜華の意見を聞いて魔物らしい見た目の魔物を創ることに決めた。


 魔物が嫌だ、は終いにはダンジョンが嫌だ、ダンジョンマスターが嫌だ、と言われそうで確かにきりがない。

 

 街の魅力は最大限高めつつ、街を気に入ってくれた人だけが定住すれば良いだろう。 悪評については立つか分からないし、起こってから考えればいい。


「じゃあ魔物を創っていく」


 竜華と真真理が見たいとのことだったので、二人に見られながら俺は魔物を創造した。


 基本的に労働は人型の魔物が良いだろう。

 グループ分けするために、鬼系、狼系、精霊系の高ランク一体ずつと、低ランクをそれぞれ五体創った。


「鬼人とゴブリン五体の鬼部隊は工事解体などの力仕事を任せる」

「うん」

「「「「「ごぶ!」」」」」


 鬼人は角の生えた短髪の少女だった。 第一印象はダウナー系と言った感じ。

 ゴブリンは想像通り醜悪な見た目だが、とりあえず臭いはないことに俺は安堵した。


 鬼系の魔物は力が強いことが特徴なので、力仕事はぴったりだろう。


「狼獣人と狼人五体は警備系を頼む」

「おう」

「「「「「わふ!」」」」」


 まるで歴戦の傭兵のような目付きをした狼獣人は、耳としっぽのある男性である。 そして狼人は二足歩行の狼と言った感じ。 彼らは気配を消したり、追跡、監視が得意なので警備隊だ。


「精霊とピクシー五体は連絡と食料生産を」

「かしこまりましたぁ」

「「「「「わーい!」」」」」


 精霊はおっとりした口調で、のんびり屋の優しいお姉さんといった感じだ。 ピクシーは小さく羽の生えた妖精だが、反応がバカっぽくてすごく心配になった。


 彼女らの得意な魔法で畑仕事をしてもらう予定。


 そして精霊たちは魔力から創られる精霊石を使い、意思のやり取りもできるらしく、俺が外の出ている間は精霊石を使って指示を出すつもりだ。


 それぞれに仕事を任せたところで、真真理が眉をしかめて言った。


「本当に大丈夫なんですか? 今は笹本さんの言うことを聞いているようですけど、人を襲わない保証はあるんですか?」


 彼女は竜華に付き従っているだけで、彼女の意見は一貫して安全な都市へと避難すべきということなのだろう。


「こんな世界に保障なんて求める方が間違っているわ」

「ですが! お嬢様は大事な身の上。 出来る限り危険は避けるべきです!」


 面白そうだから、それだけで目の前で起こる事を受け入れられる竜華の方が変わっているのだ。


「それは誰のための心配? 私? それともあなた? 一つだけ言っておくけれど、仮にこの街を出たとしても私はもうあの家に帰るつもりはないわ。 もしも耐えられないならあなた一人で戻りなさい」


 彼女たち二人の意見は完全に食い違っている。

 竜華の言葉から家との確執を感じたが、俺に出来ることも言えることもない。


 これで終わりと竜華は態度で示し、真真理は歯がゆさからか唇を噛んで黙り込むのであった。






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