【第二部完結】レティと魔法のキッチンカー

矢口愛留

🍳レティと魔法のキッチンカー 第一部

レティと魔法のキッチンカー




「いらっしゃいませー! 美味しいクレープ、いかがですかー?」


 天気よし、気温よし、人出もばっちり。

 大事な相棒、キッチンカーもぴっかぴか!

 瞳と同色の茶色い髪を一つ結びにして、エプロンを着けたら準備完了。

 私は声を張り上げる。


「いらっしゃいませー! あまーいベルメールバナナとファブロベリーのクレープ、クリームたっぷりおまけしますよーっ。お腹がペコペコの方には、ワイルドボアのハムとビッグバッファローのチーズをふんだんに使った、お食事クレープもありまーす!」


 早速、子連れのお母さんが寄ってきて、メニューを眺めはじめた。

 幸先がいいわ、今日は忙しくなりそう!


「いらっしゃいませ、クレープはいかがですか? クレープお買い上げの方には、ドリンクを割引価格でご用意できますよっ」


「じゃあ、バナナのクレープと、オレンジジュースをひとつ。あと、カフェオレもお願いします」


「はーい、お会計はこちらにお願いします。ドラコーっ、バナナひとつーっ」


「オーダー了解です、レティ」


 キッチンカーの中で調理の準備をしている、執事服姿のドラゴンにオーダーを通す。

 ドラゴンの妖精ドラコは、私より少し高い位置に二本の足でしっかり立っている。

 けれどそれでも、目線は小柄な私の胸より低い。

 ドラコから気持ちの良い返事が返ってきて、すぐに生地が焼ける甘い匂いが漂い始めた。


 私がドリンクの準備とお会計をしている間に、クレープも完成。

 ドラコからクレープを受け取って親子連れに渡す。


「ありがとうございましたーっ」


 ベンチに座ってひとつのクレープを美味しそうにつつく親子は、幸せそうに笑っている。

 二人の笑顔を見ながら充実感を味わっていると、すぐさま次のお客さんがやってきた。


「いらっしゃいませー!」


 私は満面の笑顔で、元気にお客さんを迎える。

 その時、旦那様と私の大切な宝物が、お腹の中をポコンと蹴った。

 えへへ、君もきっと、楽しいんだねえ。

 この子のためにも、森でお仕事を頑張っている旦那様のためにも、たっくさんクレープを売るんだから!


「ありがとうございましたー!」


 どのお客さんも笑顔でクレープを頬張っている。

 お金を稼ぐのも大切だけど、広場中に咲いている笑顔の花は、私にとってはお金以上の価値があるのだ。


 ――ああ、幸せ。


 あの日、旦那様に拾ってもらって、結婚して、宝物を授かって。

 それだけじゃなく、大切な友達もできたし、私の夢も叶った。


 本当に、本当に幸せ!


 開放感たっぷりの、抜けるような青い空。

 弾けるように輝く太陽の下、私は心の中で幸せを叫んだのだった。


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