第33話 聖蹟と聖石
今回、その考えに基づきミヤモトミヤは教会の最深部に眠っている聖櫃に近づき、その力を引き出そうと試みたのだ。
「んじゃ、まあ入ってみるか。おっさん、よろしく」
「あの、ハルキさん。この方はこちらの教会の責任者でとても、というかかなり偉い方なのでは? 確か司祭様ですよ? あの、その呼び方は――」
「ん? あ、そう。じゃ、おっさん、よろしく」
「ああ、ミヤモトミヤさん。ハルキさんに何言っても無駄っすよ。気にしない方がいいっす」
とニッタが笑いながらミヤモトミヤに助言する。
チャザワは怒りを抑えているようだがワナワナとほほが揺れ、怒りが顔に出ている。
「え? ええ、わかりました。ありがとうございますニッタ様」
チャザワ司祭の様子を見ながらミヤモトミヤが答える。
「いやいや、いいっすよ。それより早く中に入りましょうよ」
チャザワはその会話を聞く素振りも見せず、幾重にもなる鍵や結界を解いていく。
数分後、全ての鍵と結界を解き終わるとチャザワが話し始める。
「良いですか? ここは教会の中でも最も神聖な場所であることをまず理解していただきたい。そもそもこの教会は彼の魔獣大襲撃時に亡くなった多くの人々の霊を慰霊する目的で建てられ――」
「じゃあオレから行きますねえ」
ニッタは躊躇することなく、どんどん先に進んでいく。
その後をミヤモトミヤとハルキが続き、三人は最深部の聖櫃の前に立つ。
「ここは?」
「ああ、どうやらここが聖蹟らしいな」
「なーんか薄暗くって嫌な感じっすねえ、ほんとにここなんすかねえ?」
「おい、ニッタ。壁を照らせ」
ハルキに言われニッタが照明を照らすと、壁一面に無数の骨が敷き詰められていた。
ニッタが魔道具で明かりを灯す。
「なるほどな、こりゃ確かに聖蹟だ」
ハルキがあきれたように言うと
「キャア!」
とミヤモトミヤが声を上げ指を指す。
そしてその指した先に聖櫃があり、横には白骨化した遺体が転がっていた。
「これは、おい、この白骨死体はまだそんなに年月が経ってないぞ、ってこりゃあ」
白骨死体の服装はミヤモトミヤの館で見た写真の老人のものと同じだった。
「ほほほ、そうですとも。ミヤモトミヤさん、良かったですね、あなたのお祖父様ですよ」
いつの間にか後ろの扉まで戻ったチャザワの声が聞こえる。
「それでは私はここでお待ちしております。どうぞご存分に。あ、そうそう。ミヤモトミヤさんの聖石は私が頂きました」
そう言うと透明に光る石の玉を右手でかざした。
「うん? なんでおっさんがそれ持ってんの?」
「歩いている途中、預かると言われて渡してしまいました」
と、ミヤモトミヤが申し訳無さそうにうつむく。
「ほほほほ、どうもありがとうございます。私は外でしばらくお待ちします。まあ、もっとも皆様はここからは出られないと思いますが」
そう言って光る石の玉の入っていた石の箱をミヤモトミヤに投げつける。
「「えっ?」」
「なんっ!?」
ギイイイイイイイイ!
バタン!!
重い音を立て入口の扉が閉まる。
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