第32話 聖石の力

 ―――三か月後


「やっとっすよ! やっと教会の許可が下りたっすよ、よかったっすねえミヤモトミヤ先生!」


「ええ、本当にありがとうございます。これも皆さんのおかげです」

 ミヤモトミヤはニッタに礼を言う。


 ここは帝都にあるグコーレム教会。

 その応接室でハルキは教会の責任者である司祭と話をしていた。


 ミヤモトミヤの代わりに帝国防衛省国家情報保安局とイレイサーが交渉し、なんとかミヤモトミヤの教会への出入りを許可してもらえるように頼んでいたのだ。


 教会側は最初は難色を示していたのだが、聖石の話をすると態度が変わったらしい。


 どうやら聖石を扱える人間は限られているらしく、聖石を持つ人間が他の人間よりも上の立場になるようだ。

 その為、聖石を持っているという情報は教会にとっても非常に重要なものらしい。


「だから何度も言ってるだろ? ここに聖石がある。んで、この聖石はおそらくこの教会の地下にある施設と関係している。だから地下に行かせろって言ってんの!」

 ハルキの叫び声が教会にこだまする。


「あーあ、ハルキさんまたやってるっす。もうちょっとこう、穏便にできないっすかねえ」


「あ、はい、そうですね」

 とミヤモトミヤは恥ずかしそうに顔を赤らめている。


「わかんない親父だなあ。なんなんだよ、ニッタァ、お前も何か言えよ、ほんっとわかんないなあ」


「うーん、でもまあ大丈夫なんじゃないっすか? だって許可証もらってんっすよね?」

 近づいたニッタが言う。


「そうだよ、ほれ。ここ、書いてあんだろ? 入っていいですって」


 ハルキが懐から一枚の書類を取り出して見せると教会の責任者であるチャザワが証明書を見てにっこりとほほ笑んだ。


「ほほほ、これはこれは。いや、失敬しました。急にやって来た不逞の輩かと思いまして。申し訳ございません、それでは早速参りましょうか。こちらへどうぞ」

 と案内をする。


 教会は帝都の中でもひときわ大きな建物であり、様々な用途に使われ、礼拝を行うホールの他に、病院、学校、孤児院など様々あり、さらに様々な研究室もある。


 教会の地下部分は通常一般人は立ち入ることを許されていない。今回は聖石の事もあり特別なのだとチャザワは何度も恩着せがましく話し、その都度ハルキにそんなの知らん、とあしらわれていた。


 地下通路を数十分歩き、最深部にある扉の前でハルキ達は立ち止まる。


 その扉は厳重に封印されており、いくつもの鍵がかけられていた。


「さすがに厳重っすね」

「ああ、ここまで来るの大変だったぜ。まさかこんな感じになってるとはなあ」

「あの、どうしてここだけこのような厳重さなのでしょう?」

 ミヤモトミヤが不思議そうに尋ねる。


「そりゃあ、あんたのじいさんの研究に関係あるんだろうな」

 とハルキが答える。


 ミヤモトミヤは許可が下りるまでの間、祖父が残した研究ノートの解析を行い、そこには聖石の力を引き出すために教会の地下深くに眠る聖櫃の研究を行っていた事が書かれていた。

 

 聖石は持ち主を選ぶと言われていたが、それは嘘で聖石は特定の人物を選んでいるわけではなく、聖櫃の力を引き出すための機構であると結論を出していた。


 しかし、聖石は聖櫃を開けられる者にしか扱えないとも結論付けており、祖父は聖石と聖櫃が連動していると考えていたことが伺えた。

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