第34話 白骨遺体
「あのおっさん、あの玉の方を持ってっちまったなあ。ま、こういう時のためにあの玉を聖石って伝えてたんだろうな」
「え? じゃあ今頃、扉の外はあれっすか? 石の人形がドバーッと? ひでえっすねえ」
ニッタが投げつけられた石の箱を持ち上げて言う。
「ああ、俺たちが襲われた時と同じ状況だろうなー。ま、頑張れとしか言ってやれないけどなー、おっさん無事かなー? 助けたいけど助けられないからなー」
「ハルキさん、なんであえての棒読みなんすか、ほんと時々えげつないっす」
「ん? だってお前、そりゃあ自業自得だからな。さて、こっちはこっちでやることやらないとなんだが」
とミヤモトミヤを見ると、白骨死体の横にしゃがみ込んで涙を流していた。それを見てハルキは
「おい、ニッタ。なんとかしろよ」
「無理っすよお、なんとも声をかけられないじゃないっすか。ハルキさんこそ、こういう時、ホント役に立たないっすよね」
二人とも女性の涙には弱く、どうしていいのかわからない。
「なんだとこの野郎! お前、こんな時に役に立つヤツってどんなヤツだよ! って、怒っても仕方ねえか。えーっと、んーと。なあ、ミヤモトミヤ」
そう言うと白骨死体に近づき話し始める。
「えーっと、その、なんだ。あのミヤモトミヤ?」
「教えてください」
「ん?」
「なぜ。どうしてこうなったのかを教えて下さい」
「うーんと、それはわかんないな。ただな、今までの状況考えると、お前のじいさんは教会の奴らに嵌められたってことなんだろうけどな。お前のじいさんは教会が知られたくない事を知ってしまった、ってことだろう。今の俺たちみたいにな」
そう言って両手をあげる。
「……たしは、私は知りたいと思います。全てを、教会の闇の部分も含めて全てを」
「そりゃあお前」
ハルキが言葉を詰まらせる。
すると、泣き止んだミヤモトミヤは大きく一息つき
「申し訳ありません。取り乱してしまいました。お祖父様は聖石について調べていました。そして、ここで殺され、私達も閉じ込められ、殺されそうになりました。私は、わたしはお祖父様の研究を引き継いだのです。ここで立ち止まるわけにはいきません」
そう言うとハルキをじっと見つめる。
「あー、もう! よおしわかった! あんたが戦うって決めたんならとことん付き合ってやろうじゃねえか。オルドゥアズでもカタデリーでも何でも来いって!」
「ありがとうございます、ハルキさん。少し落ち着きました」
「あ、そお。良かったあ、おじさん、どうしようかと思ったんだよ。いやあほんと良かったわあ。このまま泣かれてたらニッタにデビュー五十年の歌手の歌をデビュー曲から順番に歌わせるとこだったわ」
「ハルキさん、まぐれ当たりにも程があるっす。で、なんなんすかオレが歌うって」
石の箱を両手に抱えて不思議そうに眺めながら言う。
「うるせえよ。んで? ミヤモトミヤ、ここからどうすんだ?」
「はい、その石の箱を聖櫃の窪みに差し込みます。ただ、この箱は聖櫃を開けるための鍵となっているだけですから、実際には開けた後に中から――」
カチッ!
「「あっ!」」
遅かった。
すでにニッタが聖石である箱を聖櫃の窪みに差し込んでいた。
「あ、開いたっす。え? だめなんすか? いやいや、開けちゃったっすよお」
そう言って、テヘッと舌を出した。
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