第30話 聖石

 二人が応接室に入りハルキとニッタはソファに座り、ミヤモトミヤはお茶の準備をしていく。


「えーっと、ミヤモトミヤだっけ? お嬢ちゃん」


「もうお嬢ちゃんと呼ばれるような歳でもないのですが、はい」


「なんでそんな名前なの? ペンネーム?」


「あ、いえ、本名です。ミヤモトミヤ・サナエと申します」


「え? ミヤモト・ミヤかミヤ・モトミヤなのかと思ってた」


「よく言われます」

 と恥ずかしそうに俯く。


「あーあ、困ってるじゃないっすか。ハルキさん、やっぱり女心が分かってないっすねえ。かわいそうに、モトミヤモト先生、困ってるじゃないっすか」


「なんだよ、お前はわかるみたいな言い方じゃねえか」


「ふっふっふ、オレ、実はぁ」


「いい、いいよ、興味ないし。で、ミヤモトミヤ。その箱から聖石を取り出したらこうなったんだよな?」


「ひど「はい」っす」

と、二人が同時に答える。


「うるせえなあ、ニッタ。お前ちょっと黙ってろよ」


「それで、その聖石ってのは?」


「これです」


 ミヤモトミヤは小さな石の箱を取り出し蓋を開ける。


 そこには白い布に包まれた透明な玉が収まっている。


「これか? これが聖石か?」

「はい、そうです」


「そうか。それじゃあ確認させてもらうぞ」


 ハルキは聖石の入っている箱を両手に持つと目を閉じて集中し聖石を感じ取る。


 聖石が反応するように輝き始める。


「うおっ、まぶしい」


「ハルキさん、大丈夫なんすか? めっちゃ光ってるっすよ」


「ああ、光ってるな」


「いや、光ってるな、じゃないっすよ、大丈夫なんすか? これ」


「うるせえよ、もう終わるよ」


 ハルキが光る聖石を強く握りしめると聖石の光は徐々に弱まり、やがて光は薄れ消えていく。


「ふう…… これで終わりだ」

「ありがとうございます。で、どうなのでしょう?」


「あーっと。これな、うーんと」


「わかった! これ、この石、偽物っすね!」

 と、ニッタが大声で叫ぶ。


「ばっか! お前黙ってろって言ったろ? もうちょっとこう言い方とか! なんでズバッー! っと言っちゃうかね」


「にせ、もの?」

 ミヤモトミヤはがっくりと肩を落とし膝をついて泣き始めた。


「お前の方がよっぽど女心をわかってねえじゃねえか!! どうすんだよ、これ!」


「いやあ、どうしましょうかねえ?」


「どうしましょうかねえ? じゃないよ。んでまだ話の続きがあるんだよ、なのにお前、偽物って、それ先に言っちゃあ話せるもんも話せねえだろうが!」


「いや、でもあれは仕方がないっすよね? ハルキさんが振るからつい」


「何がどう仕方ないんだよ、ついってなんだよ、全部お前のせいだろうが。あ、ミヤモトミヤ。これ、この石な、こいつは偽物なんだ。だけどな、こいつ、これ。ほら、この石の箱は本物なんだわ」


「ど…… ひっく…… どういう…… ひっく…… ことですか?」


「この透明な石は偽物。この石の箱を守るためのフェイクだな。んで、この石の箱な、こいつは本物なの。これはどっかの石櫃を開ける鍵になってるんだわ。どっか心当たりない?」


「「ええ?」」


 ミヤモトミヤだけでなくニッタも本気で驚いている。

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