第29話 ミヤモトミヤ

「おい、大丈夫か?!」


「うぅ……」


 ハルキが声をかけるとミヤモトミヤはうずくまったままハルキたちの方を向き頷く。


「よし、んじゃあとりあえずこっから出るぞ。おい、ニッタァ!」


「はーい!」


「よし、ファイト!」


「いやいや、ファイトってどうすんっすかあ! 無理っすよお!」


「ばっか、お前、そこをなんとか頑張るのがお前の仕事だろ?」


「無茶言わないでくださいよぉ!」


 しかし溢れ来る大量の石の人形が二人を取り囲むように続々と押し寄せて来る。


「ハルキさん、これヤバイっすよ」


「わかってるよ」


 二人は背中合わせになり、お互いの背後を守りながら石の人形を破壊していく。


「しっかしキリがねえなあ」


「そうっすね、どうします? このままだとジリ貧っすけど」


「そうだな、まあこの流れだと」


「やっぱそうなるんすか?」


「ごめんな」


 そう言うとハルキはニッタを掴み石の人形の集中している場所にニッタを放り込む。


「ほんっとひどいっすよ~!!」


 放り込まれたニッタが石の人形たちに飲み込まれていくその瞬間、ハルキは魔銃の引き金を引く。


 青い光の銃弾がニッタを貫くとニッタの身体から無数の青い光が放たれ、光を受けた周りの人形は粉々になって崩れ落ちていき、世界が元に戻っていく。


 ――――――


 世界が元に戻り落ち着きを取り戻す。


「ハルキさん」


「ん? どうした?」


「やっぱりオレを投げ飛ばしましたよね?」


「ああ、仕方なかったな」


「いっつもオレのことを投げ飛ばすってどーゆーことなんっすか?!」


「まあまあ。あ! お嬢ちゃんも落ち着いたみたいだぞ、ニッタ」


 そんな二人の会話をぼんやりと聞いていたミヤモトミヤが二人に話しかける。


「あ、あなたがたは?」


 女性が泣きながら尋ねると走り込んできたニッタが


「あ、どうも。ニッタっす」


「なんだ、その挨拶は? ハルキだ」


「ニッタさんに、ハルキさん? ありがとうございます。私はミヤモトミヤと申します」

 ミヤモトミヤは深々と頭を下げ、礼を言う。


「いえいえ、どういたしましてっす。それで何があったんすか?」


「はい、実は聖石の研究をするために石の箱から聖石を出した途端、このような事になってしまったのです」

 ミヤモトミヤは涙を浮かべて話を続ける。


 ミヤモトミヤは元々帝都大学で考古学を学び、卒業後、出版した本が売れ、現在の生活になったと言い、五年前失踪した祖父から譲られた聖石の研究を行うため、石の箱に収められた聖石を取り出した途端、屋敷が闇に覆われこのような事になった。


 聖石は自身が持ち主を選ぶと言われており、私は持ち主であると認められていなかったのだろうと冷静さを取り戻し一気に話し続けた。


「おいおい、説明が早えよ。それじゃあなんにもわからねえよ」


「あ、はい、すみません」


「ま、とりあえずお前さんが無事で良かったけどよ」


「あの、本当にありがとうございました」


「んで、これからどうするんだ?」


「はい、もうすぐイレイサーの方が来て下さる事になっているんです。その方々に聖石を確認していただいてからまた研究を続けようと思います!」


「え、あ、はい。来ました」

「え?」


「イレイサー。俺たち」

「ああ!! 申し訳ありません、私ったら、どうして気づかなかったんでしょう?」

 ニッタは笑い転げている。


 頬を赤らめてミヤモトミヤは恥ずかしそうに、しかししっかりとした口調で


「では、お願い致します! どうか聖石を確認してください!」

 深く頭を下げる。


「わかったわかった。頭上げなよ。んじゃあその聖石ってやつを確認させてもらっていいか?」


 そう言って屋敷の応接間に向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る