第26話 顛末
「遅いよ、ハルキ。なにやってたの?」
とぼけた顔でプロデューサーのツノダが聞く。
「なんっ? あんたが指令出したんだろうが! 広場のツリー見に行ってたんだよ!」
彼の声には怒りと疲労感が交錯していた。
「ああ、そうか。まあそうなんだけどさ。で、どうだったの?」
ツノダは少し驚いたような表情を見せつつ、不思議そうに問い返した。
ハルキは一瞬立ち止まり、広場の様子を思い出すような表情を浮かべ
「ああ、えらい目にあったよ、あんたのせいで! いい加減にしろよほんと。んで、ツノダさん。なんでいつも鍋なんすか?」
「ん? 年末だし?」
「だからなんで疑問形で返すんだよ。しかも今日はセントレイスデイのイブだろ?」
「あー! なに、お前。そんなの気にしてんの? イブにはケーキって決まってるもんな。だけどな、ケーキと鍋は意外と合うんだぞ」
ツノダの声は軽快で、言葉からは楽しげな雰囲気が漂っていた。広場のイルミネーションが事務所内をちらちらと照らし二人のやりとりを照らしているかのようだった。
ハルキは眉を寄せ、舌打ちをしながら答える。
「そんなの聞いたことねえよ。あんたほんといい加減なことばっかりだな」
ハルキの表情は不機嫌で、広場の雰囲気とは対照的に厳しいものとなっていた。そんな話をしているとニッタが戻ってくる。
「いやあ、ないっす! 無理っすよ、イブのこんな夜中にケーキなんて売ってないっすよ、ハルキさん」
「あれ? お前ケーキ買いに行ってたの?」
「そうなんっすよ、ハルキさんがどうしてもケーキが食べたいから買って来いって」
「ひっどいなあ。そりゃあ売り切れてるよなあ。って、なんでお前そんなにニコニコしてんの?」
「オレっすか? そうっすか? ニコニコしてますかね?」
「してるよ。なあ、ハルキ」
「知らないっすよ」
「まあいいや。んじゃあ、恒例の鍋パーティー始めまーす!」
「なんだよそれ、いつ恒例になったのか知らないし、なんで鍋なのかもわかんないよ」
「いいんだよ、なんでも。それでは」
―――カンパーイ!!
セントレイスデイイブの夜は楽しく更けていく。
「オレ、こんな楽しくていいんすかね?」
「ん? なんか言ったか、ニッタ」
「いや、なんでもないっす。にしても二人とも飲み過ぎっすよ、明日はホテルでごちそうしてやるー、って言ってたじゃないすか。そんな酔っ払って大丈夫なんすか? ハルキさん」
「ったりめえだ。ツノダさんなんてもう寝ちゃってるけどな。俺はまだまだぜんっぜん大丈夫」
「比べるところが小さいっすよ」
「なんだとこの野郎、最近生意気になってきたなあ。ま、良いことだけどな」
「え? 最後なんて言ったんすか?」
「なんでもねえよ。さて、明日は何を消すんだろうねえ」
夜の街は柔らかな光に包まれ、セントレイスデイイブの雰囲気が漂っている。広場にはキラキラと輝くイルミネーションが散りばめられ、幻想的な雰囲気が漂っていた。
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