第24話 憑き物落とし
(あれ? あの男、なんか違和感が……)
男がツリーの周りで遊んでいた子どもたちに話し掛けると、子どもの一人がツリーの根本に走って行き、そこに刺さっている剣を引き抜こうとする。
それを見ていた周りの大人たちが慌てて駆け寄り、すぐに子どもを叱りつけている。だが、次の瞬間、ツリーの照明が消えたかと思うと辺り一面真っ暗になった。
ガシャーン!
爆発が起こったかのような音とともにツリーのガラス部分が飛び散り、あたりからは悲鳴が上がり人々が逃げ惑う。
イッコとホリは驚いた表情を一瞬で納め動き始める。ハルキは素早く動くと逃げる人々の流れに逆らいながら走り、ツリーの傍まで行き男に向かって叫ぶ。
「てっめえ、何やってんだ!」
男の頭上には黒い球体が浮かんでいる。
(やっぱりこいつ憑き物!)
ハルキは男の胸に魔銃を向け有無をも言わさず銃弾を打ち込む。
しかし弾丸は見えない壁に弾かれてしまう。続けて二発目、三発目を撃つが結果は同じだった。
その時、暗闇からひときわ黒いモヤが一筋伸び、憑き物と暗闇が繋がると暗闇の中に巨大な影が広がり浮かび上がる。
そしてその影から無数の赤い目が光る。
「んなっ?! おい、ニッタぁ! お前あれ、なんとかしろ!」
「ええ?! 無理っすよぉ!」
「はあ? お前が見たがってたやつだろうが!」
「ええ? あんなの見たくないっすよおお」
「この野郎! ん?」
ハルキはニッタを怒鳴っている間も、黒い影はゆっくりと広場に近づき、炎の球を放ちはじめる。イッコとホリはその火の玉を水の魔法で防ぐと水と風の刃を放つが、それも見えない壁によって阻まれてしまう。
イッコとホリが焦り始めた時、ハルキの声がかかる。
その声は冷静そのもので、恐怖も何も感じられないものだった。
次の瞬間
ガンッ!!
と鈍い音が響く。
ガンッ、ゴンッ!
ゴンッ、バキッ!
激しい音を響かせながら魔銃で黒い影を殴り続ける。
イッコとホリは驚きのあまり、動けずその様子を見ている。
「おいニッタァ!! お前、ちょっとこっち来い!!」
「はーい! なんなんっすか?!」
何本も伸びる黒い影から逃れながらハルキのそばまで何とかたどり着く。
「攻撃、全然効かないっすねえ、どうすんです? これ」
「そうなんだよ、さっきからボコってるのにぜんっぜん効かないんだよ」
「ですよねえ」
「んでな、ニッタ」
「はい。なんすか? はい」
「ごめんな」
ハルキはそう言うとニッタを掴み放り投げた。
「ええぇぇぇ?!?!」
ニッタは叫びながら黒いゴーストの口に吸い込まれていくと同時にハルキがゴーストの口に向け魔銃を向ける。
ズキューーン!!
魔銃から放たれた青い光が黒いゴーストの口に吸い込まれていく。
数秒後、ニッタを口に入れた黒いゴーストが苦しみ始める。
グボオオオオオォォォォォ!!
苦しむような声を上げ、赤い目の部分から無数に青い光の筋が伸び体がどんどん縮み始め、最後には青い光を発する箱になった。
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