第22話 セントレイスデイ

 そこにハルキのバディであるニッタが慌てた様子で事務所に駆け込む。


「ハルキさん、ハルキさん! 大変なんっすよお!」

「なんなんだよ今日は! なんでみんな俺の名前を見つめながら呼ぶんだよ。んで? お前はなんでそんな格好してんだ?」

 ニッタは赤いとんがり帽子のてっぺんに白いほわほわが付いた物をかぶり、赤字に白いラインの入った上下のスーツを着ている。


「え? 変っすかね?」

「変に決まってんだろ。なんだその格好は」


「なーんか最近流行ってんすよ、この格好。街で見かけません? 流行りみたいなんでオレも乗っかったんす。似合いません?」

 ハルキの言葉に、ニッタは少し恥ずかしそうに笑った。


「知らねーよ、興味ねえよ、似合うわけねぇだろ。いいからさっさと着替えろよ」

 ハルキの声には、まだ憤りと混乱が残っていた。彼は友人の奇抜な格好に戸惑いを感じている。


「いやそれがあ、これ、この格好、流行り始めたのはここ一月くらいなんすけど、明日ってセントレイスデイじゃないっすか」

 ニッタは真剣な表情で説明を始めた。彼の声には、その格好の意味と目的がにじんでいる。明日のセントレイスデイに合わせた格好だと説明する。


「ああ、そういやあもうそんな季節かあ。今年も終わるんだなあ。あー、平穏に年を越したかったなあ」


「なに言ってんすか? ツノダさん」


「ほっとけほっとけ、俺たちを騙した報いを受けてんだよ、この人は」


「そんなひどい事をしたんっすか、プロデューサー。いっつもオレたちに『過去の『遺物』(魔道具、武器や防具)の中に稀に「ある」者が憑りついている。イレイサーの仕事はの存在を消して、「憑りつかれている遺物」を「通常の遺物」に戻すことだあ』とか言って無茶なことさせてるからっすか?」


「させてないよ? ってかなにそのモノマネ。あーあ、この一年まっとうな仕事しかしてないよ俺は。なんでこんな事になったのかなあ」

 ツノダは口を尖らせながら言い返す。


「あ、そうだ、話戻しますけど。ハルキさん、セントレイスデイに街の広場で毎年行われるイベントがあるんすよ。それで街中イルミネーションとか飾ったり、あちこちにツリーを飾ったりするんすけどね」

 イベントの様子を興奮気味に語り始める。彼の話には、ワクワク感と期待がにじんでいる。


「ああ、知ってるよ。ま、俺には関係ねえけどな」

 イベントに興味がない様子を見せ、無関心な口調で応えた。


「いや、それがあ、今年の街の広場の大ツリーがあるじゃないっすか。そのツリーのイルミネーションが夜中には消えてるはずなのに明かりがついてゴーストが出るって言うんすよ。なんなんすかねえ、気になるっすよねえ。で、見に行きません?」

 ニッタは興奮しながら語る。ミステリアスな出来事にワクワクしている様子だ。


「行かないよ、なんで俺がお前と行かなきゃいけないんだよ」

 ハルキは不機嫌な様子で言葉を返す。


「なんでですか? 一緒に見に行きましょうよ」

「なんでですか? じゃねえよ! なんでおれがイブにお前と広場でツリー見るんだよ!」

「そこをなんとか、お願いしますよ」

 ニッタは手を合わせて頭を下げる。


「ふふっ。まあまあ、二人で行ってくればいいじゃないか」

 と、ツノダは吹き出しそうな顔をして言う。


「ツノダさん。あんたわかって言ってんだろ? いいかセントレイスデイって言うのはなあ」

「ああ、そっか。あれ、恋人同士が見に行くのかぁ」

 そう言ってニッタは笑っている。


「お前も笑ってんじゃないよ。まあそういう事だ、行くなら一人で行け、一人で」

「えー。行きましょうよお。そこで良い出会いがあるかもしんないっすよ」

 ニッタは子どものように頬を膨らませて文句を言う。


「あるわけねえだろ、恋人同士が見に行くところで何と出会うんだよ。行かないよ。絶対行かない」

 ハルキは頑として拒否するが


「なあハルキ、ゴーストが出るって話、気にならないか?」

「気にならないよ。知らねえよ」

 結局、ツノダの『これは指令だ!』というふざけながら言った一言で無理やりハルキとニッタに広場の大ツリーのイレイス指令を出すのだった。

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