第15話 ユッギャの仮面

 イッコはその仮面を両手で包み込むようにして持つと、祈るような姿勢になり、じっとその仮面を見つめながら話し始めた。


「私はずっと疑問だったんです。どうしてあなたは、ハルキさんはイレイサーなのかと。それはハルキさん、あなたが物の価値を全く考慮しない人だったからなのですね!!」

 ハルキはイッコの言葉に驚きと戸惑いが入り混じった表情を見せる。


「いや、そうは言うけどよ。そうしないと俺たちはその仮面に殺されてたよ?」

 イッコの口元が引き締まり、憤りの情を込めて言葉を続ける。


「死ねばよかったのに……」

 その言葉に、ハルキとニッタの両者が同時に

「え?」

 と声を上げる。


 部屋の空気が一気に重くなり、不穏な静寂が広がる。


「んなこと言ったって仕方ねえじゃねえか。いきなり襲われたんだぞ! 応戦するしかねえだろうが」

 ハルキの怒りを込めた声は部屋に響き渡り、緊張が一層増す。


「まあまあハルキさん、落ち着いて。そっかどっかで見たことあると思ったんすよ、その仮面。あー、前に買った本に絵が載ってたんすよねえ」

 ハルキの怒りを受けながらも、ニッタが落ち着かせるように声をかける。


「なんだあ? お前、なんだってそんな本買ってんだよ」

 ハルキが突っ込むように言うと、ニッタは得意げに答える。


「いいじゃないっすか! オレだって本くらい読むんすよ。こないだ買った本も面白かったなあ、あ、今度ハルキさんにも見せてあげるっす!」

「いらねえよ、ってそうじゃねえだろ。話がずれてる。んで、そもそもなんであの仮面を追ってきてるんだ?」


「カタデリー信仰が奪った遺物だということは、何か重要な情報を隠している可能性が高いのです。その仮面が持つ力や意味を解明すれば、カタデリー信仰を潰す何かの手がかりになるかもしれませんので」


「なるほどな。おいニッタ」

 ハルキはしばし考え込んだ後、納得の様子でうなずく。


「その本にはこの仮面のことをなんだって言ってんだ?」

「ハルキさん」

「ん?」

「オレが覚えてると思ってるんすか?」

「え? 覚えてないの?」

「はい!」

「はい! じゃねえよ、なんだよそれ。おい、イッコ。この場所にその仮面が現れたってことはなんかあるってことだよな?」

 イッコは何も答えない。


「お前もかよ。まあいいや。イレイサーは売られたケンカは買うんだよ」

「え? ケンカ売られたんすか?」

「いきなり襲われたんだよ、それを黙ってやり過ごすわけにはいかねえよな、ニッタ」

「ああ、まあそうっすねえ」


 イッコは再び仮面を見つめると大きくため息をつき

「まあイレイサーを止める権限は私にはありません。でもです! これ! この穴! やってしまったものは仕方ありませんが! 今後、このような事がないように注意してください!」


「へいへい、わかったよ。ところでイッコ、さっき、死ねばいいのにっていったよね?」

「はい、言ったっす」

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