第12話 戦闘開始
二人は宿を出ると町の中心部から少し離れた丘の上へと向かった。
墓地を抜けるとすぐに大きな木に囲まれた古い建物が見えて来た。
ニッタは小走りで建物の前まで行くと、扉に手を掛けて引いた。
ギイイイイイィィィィ
という音と共に開いたドアの奥を見ると、そこは真っ暗な空間が広がっていた。
ニッタが懐中電灯のような魔道具を取り出すとスイッチを入れ、暗闇の中で光る魔道具の明かりを頼りに二人で中に入る。
天井は高く壁に階段が連なっており、上にはたくさんの窓がある。かつては窓から明かりが室内を照らしていたのだろうと想像できる。
ハルキはあたりを見渡したが、特に変わったところはなく、元々時報塔だった、ただの廃墟のように思える。
入り口から正面の壁まで歩いて行き、壁に沿って一周すると、上に登る階段とは別に地下へと続く階段があり、下からは冷たい空気が流れてきている。
「時報塔に地下施設は必要ないはずだが」
ハルキが考え込むように言う。
二人は顔を合わせてうなずき、ゆっくりと階段を降りていくと、降りた先には木製の重厚な両開きの扉が待ち構えており、そこを開けると中は大きな広間になっている。
ニッタが魔道具の灯りで周囲を照らすと、床に何かが落ちているのが見えた。
それは黒いローブを着た骸骨だった。
「ハルキさん、これって」
不安そうにニッタが言う。
ハルキは驚きつつも冷静に考え
「おそらく、昔の時報塔の守護者の遺骸なんだろう。でも、何故こんな場所に遺骸があるんだ? そうか? いや、間違いねえな。こりゃあカタデリー教団の法衣だ」
ニッタは心臓の鼓動を感じながらも、探求心に押されて骸骨の周囲を調べ始めます。すると、骸骨の手には小さな箱が握られていることに気付く。
「ハルキさん、これを見てください!」
ニッタが箱を手に取ろうとすると
バンッ!
突然、後ろの扉が勢いよく閉まり、驚いて振り返るといつの間にか法衣の骸骨に闇のモヤが集まり、骸骨の瞳から赤い光が放たれ、二人を睨みつけています。赤い目から白い硬質の物質が広がり、顔を覆い隠すと、その骸骨は白い仮面をかぶった姿に変わっていく。
ハルキとニッタはその急な出来事に戸惑いつつも、不気味な仮面をかぶった骸骨を警戒する。
「なんなんすかあ! うへえ!?」
ニッタが声を荒げながら後ろに下がる。
「おい、ニッタァ!」
「はい! はいっす!!」
ハルキは骸骨から素早く身を引き、後ろに下がると魔銃を構えながら叫ぶ。
「先手を取るぞっ!」
「了解っす!! ハルキさん!」
ニッタもそう言うと魔導ライフルを構え、二人がほぼ同時に引き金を引くと、銃弾が黒い影、法衣を着た白い仮面に向かって飛んでいく。
それに合わせるように、ニッタはさらに二発撃ち込んだ。
しかし、その瞬間、ハルキの放った弾丸は闇の中へ消え
キィィィン!
という甲高い音を響かせながら消えてしまう。
「なに!?」
ハルキが驚きの声を上げる。
ニッタも混乱しながら
「なんで弾丸が消えるんすか!? こんなの聞いたことないっすよお!」
次の瞬間、目の前にいたはずの法衣を着た白仮面は、まるで煙のように霧散して消えてしまった。
「なっ?!」
闇の中から赤い目が光ると白仮面が現れ指先を鉤爪のように伸ばし打ち込んでくる。
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