第6話 ミイラとの戦い

 気配を感じ、三人が身構える。


 展示ケースの奥の暗闇がモヤとなり、赤い光が現れる。そして、周りの黒いモヤが徐々に大きくなり人の形のようになり、それはゆっくりとこちらに向かってきた。


「んなっ?!」

 その姿を見たハルキが驚きの声を上げる。


 黒いモヤは一歩ずつ歩き出し、ガラスケースの前に立つと展示物に触れることなく通り抜け、棺の中に入り込む。


 棺の扉が開き、全身包帯に包まれたミイラの目が赤く光を放つと瞬間、そこには白銀色の包帯に覆われたミイラが立っていた。その体はまるで人間のような関節を持ち、首、肩、腕、足などは人間の骨格と同じ形状をしている。

 しかし胴体の部分は巨大な蛇のように長く伸びており、体の周りを無数の骨が取り囲んでいる。頭も顔の部分には目や鼻がなく、代わりに口が二つ付いていた。その二つの口からは鋭い牙が伸び、手にはナイフのようなものが握られている。そしてその背からは巨大な翼が生えていたのだ。


 それを見たホリは言う。

「まさか……」


「おい、やべえぞ!」

 その様子を見たハルキが叫ぶ。


 次の瞬間、ミイラがガラスを破り立ち上がり、ニッタめがけて突進する。ニッタは手に持ったカメラを投げ捨て逃げようとするが、それよりも早くミイラの手がニッタを捕らえ、展示ケースの中へと引きずり込んでいく。


 ガラスの破片が飛び散り、辺り一面に展示品が散乱する。


 ハルキは目を見開き、ホリと眼鏡の女性も怯えながらその様子を見つめている。



 ホリはナイフを両手に構えミイラに向かって行く。だが、ミイラは攻撃を軽々とかわし体当たりをする。ホリは数メートル飛ばされるが、すぐに起き上がりミイラに掴みかかる。

 ホリは焦りと怒りを抱えながらミイラに襲い掛かるが何度攻撃してもミイラの傷は回復してしまう。


 その間に、ハルキは眼鏡の女に話しかける。

「よう眼鏡。お前らの目的はなんだ? どうしてこんなことをしている?」


「ふふふ、そうですね、目的は言えません。ただ、私たちの仕事はあなた方の物とは違ってます。あ、それから眼鏡ではありません、私はイッコです」

 眼鏡の女が微笑を浮かべながら答えるとハルキはすぐさま


「そうか、まあ違ってるなら気を使わなくてもいいよな。んじゃ、あいつをイレイスするわ」

 そういうとハルキはゆっくりとミイラに近づいていく。


 ホリはハルキに気付き声をかける。

「何やってんだ! そいつは危険だ! 戻ってこい!」


 しかしその言葉を無視してさらに近づく。

 ミイラがハルキの方に向き直るとホリはナイフを構えもう一度ミイラに攻撃を仕掛ける。


 今度はミイラの腕を切りつけることに成功したが、ミイラはすぐに切り落とされた腕を拾い上げ、元の位置に戻し、腕が元通りになり再びホリを殴り飛ばす。


 その隙をついてハルキがミイラの後ろに回り込み背中の翼の付け根をつかむとそのまま力任せに引きちぎろうとする。が、皮膚は硬く簡単には引き裂けなかった。


 ハルキは舌打ちをすると、ポケットから銃を取り出し、その銃を翼の付け根に押し当てる。

 すると、銃口の先端が青く光り、溶け始めると翼の繊維を溶かしていく。そしてそのまま銃を動かし、翼を切り離しにかかる。


 その様子に気付いたホリが叫ぶ。


「おい! もう止めろ!」

 ハルキは答えず作業を続ける。


 ミイラが暴れだすがハルキは振り落とされないように必死にしがみつくが、翼を振り回し勢いのまま床に落ちると展示品の壺を割りながら転げまわりハルキを引き剥がす。


 やがて、ミイラの動きが止まるが一時すると再び立ち上がりハルキに向かって牙を向ける。

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