第5話 侵入

 夜中、博物館の入口には閉館を知らせるプレートが掲げられドアの鍵は掛かっていたがいつものようにハルキが鍵を開け侵入する。


 博物館の中は薄暗く展示物を見るために用意された明かりが等間隔に灯されているだけで人影はない。

 二人は入口正面奥にあるミイラの展示ケースの前で立ち止まる。

 展示ケースの中には一際大きな棺がありその中にはミイラが横たわっている。


 ふと見ると、展示ケースの隅には館長が書いたと思われるメモが貼ってあった。


『ミイラが動いた、これは間違いない。私はこれからミイラと共に行動する。このミイラがなぜ動くようになったのか調べたい。もし、これが私の勘違いだった場合、責任は全て私が持つ。そっとしておいてくれ』


 そう書かれた紙が貼られており、その下には館長のサインが書かれている。ハルキはため息をつきながらニッタに言う。


「どうやら俺たちが来ることがわかってたらしいぞ。もう取り込まれちまったか……」

 それを聞いたニッタはポケットから小さなカメラを取り出すと展示ケースの中に向けてシャッターを切る。



 その瞬間、ニッタの首筋にナイフが当てられる。いつの間にかニッタの背後に二人の人物が立っていた。一人は黒いジャケットを着た大柄の男、もう一人は青いスーツに眼鏡をかけた細身の女。


 ハルキはその二人に見覚えがあった。大男は昔会った事があるスキンヘッドの巨漢のホリ、もう一人の眼鏡は国家情報保安局の職員だ。


「っち。お前らがいるってことは当たりかよ、ホリさん」

 ハルキが残念そうに言うとスキンヘッドの巨漢が嫌そうにつぶやく。


「こっちのセリフだ。てめえ何やってんだ、ハルキ」

「まあ落ち着いてください。こんなところでやりあってもしょうがないでしょう」

 一触即発の二人を見て眼鏡の女性が取りなすように言う。


「そうだな、まずは言い分を聞こうじゃねえか。ま、お前らがここに来た理由はなんとなくわかってるよ。こいつが目当てなんだろ? 俺らは別に邪魔するつもりなんてなかったんだけどよ、こっちも仕事だからさあ」

 ハルキがミイラを指さしながらいうと、ホリはニッタの首筋のナイフをさらに押し当てる。


「ちょ、ちょっと待って下さいよ! オレは写真を撮りたかっただけなんすよお」

 ニッタは必死に説明しようとするが、ホリと眼鏡の女性は警戒心を見せている。


「写真? このミイラが動いてるところをか?」

 ホリは黙ったままニッタを見つめる。


「まあ、確かに動き始めたミイラっていうのは面白いかもしれませんけれど」

 眼鏡の女性がそう言ってホリに目線を送り、ホリはナイフを下げてすぐに女性の横に立つ。


「おい、お前ら、もしかして。んじゃこれはと繋がってんのか?」

 ハルキが睨みつけながら言う。


「まあ、そんな感じです。ミイラが動いているところを撮影したいというのはわかりませんけど。それにしてもあなた方の動きは雑すぎますよ、正面から侵入とか。そのまま破壊でもしたら遺物までにしてしまいます」

 と言いかけたところで、ハルキ、ホリ、そして眼鏡の女性が同時に後ろに飛び身を低く構える。


 緊迫した空気が漂い三者の気迫が交錯する中、警戒心を高めていた。

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