第4話 打ち合わせ

 博物館に併設されたカフェテリアで、ハルキとニッタは遅い昼食をとっていた。


「ミイラが動くなんて作り話もいいところだろ」

 全くやる気のないハルキは、ニッタに言う。


「けっこう見た人が多いみたいっすよ」

 ハルキの言葉に対して、ニッタは軽く肩をすくめる。


「動くミイラなんかいるわけねえだろ。千年以上動いてないミイラが動き始めただ? 千年寝てたのかよ、ミイラ」

 不信感が隠せない声でミイラの動きを否定する。


「よくわからないんっすけどね。そもそもここのミイラっておかしいんっすよ。そもそも発見された時ミイラは海底にあって海から浮かび上がってきた島から発見されたって話ですし。ハルキさん、それってつまりこのミイラ自体が遺物って事じゃないんですかね? んで、博物館がその辺の経緯を隠してるとか?」

 ニッタは興味津々な様子で説明する。


「なるほどな。それで館長は事が大きくなりすぎて焦りまくってんのか、俺たちがそれを暴いちゃうとここに置けなくなっちまうしな」

「そゆことっす」

「うーん。どうすっかなあ、このまま夜に忍び込むか、あっさりイレイサー名乗って館長に話聞くか。ニッタ、どうするよ?」

「それはハルキさんが決めないとでしょ? イレイサーはハルキさんなんっすから」

 ハルキは悩む様子で意見を求めると、ニッタは考え込む素振りをするが最終的には笑顔で答える。


「めんどくせえな。まあとりあえずそのミイラを一回見とくか。んで、お前、なんでそんな恰好してんの?」

 ニッタは全身茶色のスーツに身を包み、帽子を目深に被っていた。ハルキは紺のスーツを着ていたが、ニッタと違い、ネクタイの代わりにスカーフを巻き、薄いサングラスを掛け、黒い手袋をはめている。


「いいじゃないっすか、遠出した時くらいいつもと違う格好したいじゃないっすか。そういうハルキさんはどこ行くときも変わんないっすよねえ、たまにはオシャレしたほうがいいっすよ、もう三十代後半なんすから。いつまでも独り身だと……」

「うるせえよ。いいんだよ俺は」

 そういうとコーヒーを飲み干し、立ち上がり、ニッタの頭を軽く小突くと二人は一旦宿に戻った。


 夜が更ける頃、二人は博物館に向かっていた。

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