第2話 依頼
数日後、事務所の一室。
ハルキとツノダは緊張感が漂う事務所で対峙していた。
「ハルキ、お前は何をやってるんだ。今回の任務を理解してなかったのか?」
ツノダの声に憂いが混じり目を伏せる。
「いいえ。ちゃんとわかってますよ、ツノダさん。だからうちが人気があるんでしょうよ」
苦笑しながらハルキは自信を持って答える。
「そうなんだよ、なんでうちがトップレベルなのかさっぱりわからんよ」
ツノダは困惑した表情で頭を抱える。
「あんたのチームでしょうよ。よ、やるねプロデューサー!」
ハルキはツノダに笑顔で声をかけるが、ツノダは深いため息をつく。
「うるさいよ、俺が始めたときはもっとまともなことやってたよ? 真面目なイレイサー集団だったよ? どうしてこうなっちゃったんだろ」
「それが今じゃあこの世界では名の売れた名プロデューサー。てかツノダさん、あんたもこのチームの一員なんだからちゃんと関わってくださいよ」
「ホント困ってんだよ、この手のイレイス指令がガンガンうちに回ってくるんだよ」
ツノダは再び頭を抱える。
「それにお前、あれ。今回の鎧、あれどうすんだよ、鎧ごと消えてなくなりましたってどう報告すんだよ、依頼主はオーフィア帝国の軍閥貴族なんだぞ」
「じゃあどうしろって言うんです? 前のバディもあれに殺られてんすよ、あのままだったら俺らもあの鎧に食われてましたよ。依頼主にはそもそもなかった、偽物でしたって言えばいいじゃないすか」
ハルキは自分たちの選択を弁護する。
「それしかないよなあ。まあ千二百年も前のジンスレールの乱で初代皇帝が着けてた鎧なんて誰も存在するなんて思わないよなあ」
ツノダは諦めの様子で呟く。
「んじゃま、その辺はお任せなんで、よろしくです」
ハルキは軽やかな口調で返事をするが、ツノダは心の中でため息をつく。
「お前なあ、もっと真面目に仕事に取り組めないの? この世界にはな、過去の『遺物』が存在するの。魔道具だったり武器や防具だったりな。んで稀にその中に「ある」者が憑りついてる。俺らイレイサーの仕事はな、この憑りついている者の存在を消して、「憑りつかれている遺物」を「通常の遺物」に戻すことなの。お前、理解してる? 俺の言う事はお前には届かないの?」
真剣なまなざしでハルキに問いかける。
「いいえ、そんなことありませんよ、ガンガン胸に響いてますって。んで? 次の指令は? 次は何を消すんです?」
ハルキは自信に満ちた声で尋ねる。
「ああ。次はイハインに行ってもらう」
ツノダはハルキに次の任務を告げる。
「イハインって事は…… グネトラス考古学博物館? ああ、動くミイラすか? あれガセでしょ? なんで俺らが動くんです?」
ハルキは疑問を抱きながらも、任務の内容を確認する。
「ちょっと気になることがあってな。ま、ガセならガセで構わないんだが一応調べてみてくれ」
ツノダは謎めいた理由を述べる。
「へいへい、わかりましたよ。行きますよ、行きゃあいんでしょ」
ハルキは意気込んで頷き、イハインへの道に旅立った。
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