憑物落としイレイサー!

UD

イハインの動くミイラ

第1話 イレイサー

「くっそお! なんでこいつが襲ってくんだよ!」

「うへえ、知らないっすよおおお、助けてくださいハルキさん!」

 ニッタがパニックに陥り助けを求めている。


 突然、古びた鎧が二人に襲い掛かってきた。鎧の動きを止めた瞬間、黒い光が放たれ視界が一瞬にして歪み、足元を見るとそこにはなくなっていた。さっきまで地面があったはずなのに、それが存在しなくなり、自分たちは宙に浮いて赤黒い世界の中に取り残されていた。


「くそっ。おいニッタ! 先手を取られてるぞ!」

 ハルキが銃を抜き構えると鎧もそれに反応するように、ゆっくりと身を起こし始め、鎧の周りに黒い霧のようなものが集まり、どんどん大きくなり人型になると変化を止め、全身真っ黒で赤くギラギラと光る目だけが浮かび上がった。その身長はおよそ二メートルくらいで、禍々しいオーラを放つ大剣を手にしている。


 グルォォォォォォォ!!


 騎士の姿になった鎧が雄たけびを上げると、次の瞬間、騎士の姿が消え、同時にハルキの右腕から鮮血が噴き出した。


「っく!」

 いつの間にか背後に回られていたようだ。必死に身を翻すが、さらに左腕にも傷を負ってしまった。


 騎士が再び姿を消し、すぐさま目の前に現れる。


 速い! まずい、避けられない。


 ハルキは咄嗟に後輩のニッタを騎士に向けて投げ飛ばした。


「うわあああああ! ひどいっすよおおおおお!!」

 ニッタが騎士にぶつかると同時にハルキが魔銃を放つ。

 騎士鎧に命中し大爆発が起こり鎧から煙が広がった。


 数分後、煙も消え周囲が落ち着いてきたところでニッタが駆け寄ってきた。


「いやいやダメですって! ハルキさん! なんで消して無くしちゃうんすか!! てかあれに向かって投げつけましたよね?」

 ニッタは悲鳴を上げながらハルキに訴えた。


「ん? だって仕方ないじゃないか。襲ってきたんだから」

「今回の依頼、誰に頼まれたと思ってんですか!! いやそれもだけど、投げつけられた身にもなってくださいよ、で、射つし! ヤバいっすよお! どっちもヤバいすよお」

「うるせえなあ。イレイサーなんだから消すだろうよ。仕方なかったんだよ、緊急だったんだから。なんならお前も消すよ?」

「ひえーっ! 勘弁してくださいよお。でもこれ、プロデューサーになんて言えばいいんすか?」

「そんなもん適当に言っとけよ、知るかよ!」

 ハルキは無責任に応えた。


 彼らは通称『イレイサー』という国家情報保安局のメンバーである。この世界には「ある」物と「ない」物が存在する。彼らは「ある」物を「ない」物に戻す役割を担っている。


「マジでヤバいですってハルキさん。今回のこれ、そーとーヤバいっすよ?」

 ニッタは不安そうに言うがハルキは全く意に介さない。


「だから知らねえって言ってんだろ、お前ヤバいしか言ってねえじゃねえか、うるせえなあ」


 その時、ニッタの胸ポケットで通信機の音が鳴った。


「あ、ディレクターから連絡だ。どうすんすか? ハルキさん! あ、逃げた! ハルキさん! ハルキさんってばあ!!」

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