番外編「ある二人の日記(※現代語訳)」

 ×月×日

  かや姫様がつめたいので

  一人で剣のたんれんをした。

  宮本武蔵さんのようにつよくなりたくて

  二刀流をたんきゅうしていると、

  父上にゲンコツをもらった。

  まじめにやってるのに!

  皆どうしたことだろうか!


 〇月〇日

  たまには三十郎に何かあげようと、

  姉上といっしょにししゅうをしました。

  てぬぐいに赤いお花をいれました。

  ひみつにしようと思って、隠すのに苦労しました。

  三十郎にはあしたあげるつもりです。

  きっとびっくりします。


 ×月×日

  かや姫様が何やらくれました。

  これは一体何なのだろう。

  てぬぐいのようだが、なぜわたしに?

  たんれんのとき、頭にまくてぬぐいが

  よごれていたので、使うことにした。

  へんな赤い紐がこびりついていたので、

  ちゃんと取っておいた。


 〇月〇日

  くそ! くそ! ばか! ばかばか!

  三十郎なんて大嫌いです

  もう二度と遊びに行ってやりません

  谷の小さいお屋敷にだって、

  もう行きません。絶交します。


 ×月×日

  きのうは死ぬかとおもった。

  よくわからないが、おこる姫様に

  ぜんざいやおだんごをおごることになった。

  姫様はめちゃめちゃいっぱい食べた。

  こんなほんぽうなおなごに付き合って

  やるなんて、わたしはなんてやさしいんだろ。

  店のむすめさんも、わたしの気持ちが

  わかるようで、わらっていました。


 〇月〇日

  三十郎があんまり泣くので、

  許してあげることにしました。

  三十郎が奢ると言ってくれたので、

  たくさん食べるとはしたないと思い、

  ちょっとで我慢しました。

  私はなんて優しいんでしょう。

  でも、店の娘がにやにやしてたのは嫌。

  三十郎もそっちを見ていました。

  許すのやめようかしら。

  

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