第28話 ALICEさんを助けるために
俺は衛と一緒にワゴンRを大学の裏手の門につけてタイミングを見計らっている。
門と守衛室がある。守衛は一人。俺と同じくプロの警備員では無さそうだ。
大学の裏門は閉まっている。飛び越える必要があるけど、守衛に応援を呼ばれたり、警察に通報されるのはまずい。それに守衛が持つマスターキーが必要だ。建物に入るために必要な重要な鍵だ。
守衛室に入るためには、大学の敷地内からしか入れない。鍵は閉めていないようだ。
時計を見る。
21時3分。
そろそろ研究所の大学生たちの集中力も途切れているだろう。
「衛。門に上って敷地内に入ってマスターキーを盗めるか。俺は守衛の気を引いておく」
「兄貴、入れるよ。どうやって気を引くんだ?」
俺は何も言わずに車のダッシュボードから地図帳を取り出した。
そして俺はALICEがコピーされたリュックサックを背負う。
「道を聞く。先に出て、まっすぐ歩いてUターンをしてきて欲しい。ちょうど門の半分が植物の陰で暗くなっている。たぶん見えない。荒事は止めてくれ。衛を犯罪者にしたくない」
「もう遅い。行ってくるよ」
衛がそう言い、両手にサップグローブをはめる。、そして守衛室の死角に入った所で、車のキーを抜きドアを閉めてから、地図帳を持って守衛室に歩いて行った。
「夜分、それもお仕事中に失礼します。あのこの辺にコンビニはありませんか?。地図帳が古いのか見つからなくて。今この辺ですよね」
「コンビニはこの辺は少ないですよ。大きな道路に出る必要がありますよ。歩いててなら駅前に一軒ありますけど」
衛はその間に門を上り、門の上からジャンプして着地している。
守衛の視線が地図帳に引き付けられる。
そして、衛は守衛室の扉を開けて、左ストレートを守衛の頭の位置に持って来る。
「動くと死ぬぞ。騒ぐなよ。兄貴来てくれ」
俺も門をよじ登り、大学の敷地に入る。
「兄貴、どうやって拘束するんだ」
「本職じゃ無いけど、いろいろ学んだ事がある」
そう言って守衛がつけている笛を保持するための肩ひもを取り外す。
そして両腕を後ろに回すと、肩を入れる所に守衛の両腕を入れ、ぎゅうっと絞めめて外れない様に縛って拘束する。
「あった。これだ」
俺はそう言うとマスターキーを取り外す。
「さぁ、研究室を目指そう」
守衛を横に寝転がすと、守衛室のドアをマスターキーで閉めて歩き出すのだった。
「兄貴、これからどうする?」
「芸は無いけど、研究室の階段を上って研究室の三階まで行かないといけない。そこにALICEの操作端末があるみたいだかな。桑元教授の目もにも書いてあっただろう。警戒のために学生が警備しているかもしれない」
「正直、理系の大学生が何人かかかってこようが負ける気はしないよ」
衛は深い自信を持って言い放つのだった。
続く
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