ALICEの救出作戦
第27話 ALICEさんと衛の決意
「兄貴あれで良かったのか?」
「良くない。でも桑元教授が言った事が気になる。なぜ車の掃除なのか?」
「気にしている場合か?」
「ちょっと探してみよう。あいつらはもう行ったな」
「あぁ急いで行ったみたいだ」
衛は言う。
俺は桑元教授が座っていた辺りを探してみる。
そしてリアシートの隙間に挟んであった紙を見つけた。
桑元教授はこれを見つけて欲しかったのかもしれない。
「紙が挟まっている」
「室内等をつけていいか?」
「もちろん」
君たちがこのメモを見ていると言う事はALICEの人格が消滅して、私が捕らえられている状況だろう。君のノートパソコンにはALICEの人格と感情とALICEを構成するブログラムと記憶が統べて詰まっている。しかし、スリープモードでも大きな電力を消費するので、充電しながらでも今夜の12時くらいだろう。間違ってもノートパソコンを立ち上げてはいけないよ。ALICEは私に取って研究成果であると共に実の娘みたいなものだ。明日から本格的な改造が始まるだろう。それまでに助けて欲しい。研究所の場所は紙の裏面に書いている。
「兄貴行くのか?」
「もちろん」
「兄貴はいつも間違った方に、間違った方に選択するんだな。だけど今日の選択は悪くない。着いていくぜ」
弟の瞳を見る。決意にあふれた表情をしている。
「いつ頃、行くんだ」
「今は20時。たぶん、研究員たちの集中力は22時には解けるだろうから今から、飯を食って研究所に襲撃をかけよう」
「妨害されるのも人を傷つけるのも嫌だからね」
「俺も怪我はしたくない」
「近くのファミレスに行こう」
そう言って俺はワゴンRに乗り込んだ。
弟が運転席に座り話しかけてくる。
「兄貴、ALICEは本当に助かるのか?」
「桑元教授を信じるしかない」
弟は運転しながら答える。
「確かにな」
これから俺がしようとしているのは犯罪だった。建造物侵入、場合によっては障害、器物破損。許されて良い事では無い。
「俺が一人で行くのでも良いんだよ。衛を犯罪に巻き込む訳にはいかない」
運転が少し荒くなる。
「俺もついていくと言っているだろ、ALICEの事もあるし、乗りかかった船だし、兄貴を一人にはできないし、俺は兄貴より背負っている喪は大きいんだよ」
俺はどのように返答して良いのか悩む。
衛は俺よりも深くALICEや俺の事を考えてくれていたんだなと思う。
衛も強い決意があるのなら止められない。
「そうか、二人でALICEを救い出そう」
「当たり前だろ」
怒った様に衛は言う。
衛の一種の照れ隠しだった。
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます