第26話 ALICEを守るために
「痛い目に合いたく無かったら、桑元教授出てきてもらいましょう。私はボーカロイドなどに興味はありません。自己進化型プログラムを流用して、天下国家を狙うテロリスト予備軍の操作できるコンピューターを欲しているのです。どちらかが正しいか明白でしょう」
毒島教授は妙に間延びして甲高い声でしゃべる。
天下国家は大切かも知れないが、ALICEでなくも良いじゃないかと思う。
「断る」
俺は断言する。
「仕方がない。やれ。後は公安がもみ消しけてくれるはずです」
「さっきも言ったが、俺は人をころしてみたいだけなんだ。殺人罪何てつまらない法律で我慢するのは限界だったんだ。みんなでボコるぞ」
「車を背に戦おう。衛右側は頼んだ」
「任せろ、兄貴。俺のボクシングがどれだけ通じるか試してみる」
「そのうるさい奴から死ね」
そう言って配下のリーダー格の男がバールを衛に振り下ろす。
しかし、衛は右ステップで避けると躊躇なく、接近し、リバーブローを打ち放つ。
「あがっ1?」
「兄貴こいつら素人だ。言う事聞く事無い」
リーダー格の男は地面に倒れこむ。
俺は目に目に迫って来た男に向けて、接近すると警防型スタンガンを押し付ける。
俺が一撃で人を倒せないし、金属式警戒棒の訓練を少しだけ受けた事があるから選択した武器だ。
桑元教授はALICEを触っている。
衛は二人目を相手にしていた。縦方向に打ち下ろされるバールや金属バットに対して左右にステップを踏むことで対処している。そして左利き。
面白い様に戦い慣れていない学生を倒していく。
俺は三人に囲まれる。
スタンガンの威力は知っているのだろう。踏み込んでこない。
踏み込めばスタンガンを叩きこまれる事を知っているのだろう。
その間に、学生二人が桑元教授が座っている位置のドアを開けた。
くそっ
俺の力はここまでなのか?
何か方策は無いのか?
桑元教授はALICEと外付け型のハードディスクを持って車を降りた。
「やぁ毒島助教授。降伏するよ。自分の目の前で若者が殺されるのは忍びない」
「それもこれも私を認めなかったあなたが悪いのですよ」
「それに掃除の行き届いていない小さな車に詰め込まれるのも飽きた」
「あの隆一さんと最後にお話させてください。どうせ消えてしまうのなら」
ALICEが立ち上がる。きれいに話していた。
「それは私からも頼もう」
「教授となり研究所所長なる身です。それくらいは許してあげましょう」
「隆一さん、私は消えてしまうかもしれませんけど、幸せでした。例えOSが消えても私の仮想人格が消えても私たちの記録が消えても隆一さんの事は覚えています。どうか私を助けに来てください。隆一さんとを愛した事と思い出は必ず覚えていますから」
「機械が愛とかふざけた事を言いますね。これは初期化しないといけませんね。ボーカロイドとか感情とかの不要なデータは徹底的に消去してあげましょう」
「行くなALICE」
「愛した人が傷つくのはみたくないんです。どうせこの人格は消えてしまうのだから。でも必ず隆一さんを愛した事とあなたへの想いでは覚えています。だから助けに来てください」
「分かった行く。必ず行く。約束は必ず守るよ」
「桑元教授にも来ていただきますよ」
「私も藤堂君と少し良いかね」
「まぁ良いでしょう」
「ALICEの思い出をありがとう。でもALICEの事はわすれた方が良い。後汚い車に人を乗せるは止めたまえ。掃除くらいして起きない。さぁ行こうか」
そう言い名が俺のポケットの中に入れる。
「おやおや悪あがきはいけませんねぇ。USB[デバイスも渡していただきましょう」
「仕方がない」
「ALICEと桑元教授をつれてきたください、みなさん」
「私を忘れないでくださいね。わがままばかりですね」
ぶつん。ALICEが機能を停止した。無理もない。ほとんどの充電も無く、あれだけ達者に話したのだから。
「仮想人格は消えたか、自己進化プログラムとOSさえ手に入れれば何とかなる。桑元教授からALICEを奪って、こちらにお連れしろ。後けが人も運んであげてください」
「はい」
学生たちはてきぱきと動き、車に運んでいく。
俺と衛が無にもできないまま、ALICEと桑元教授は連れ去れるのだった。
続く
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます