第23話 ALICEと裏道を抜けて

国道309号線の三宅の交差点に出る。青信号だったのでそのまま直進して信号を直進して、裏道から松原中央公園を目指す事する。

周囲を見回しての警察の気配は無い。

フィーン

かりかりかり

ハードディスクを読み込む音がする。

激しく動いた後だし、充電をしていない。

だけど無駄な会話は電力を消費させる。

自分の気持ちを抑えていた。

それでも声をかけざる置けなかった。

ハードディスクを読み込む音何てしていなかったからだ。

「ALICE、無茶をしたな、ごめんな。それと大丈夫?」

「しんぱいしてくれているんですね」

ALICEの返答がある。どこか棒読みな感じがする。

ALICEと俺の不安をかき消すように言う。

「無事だったか?」

「はい、うれしいです」

かすかな音程はあるが、やはり機械音に近かった。

「うれしいの?」

「はい。しんぱいしてくれるということは、わたしをたいせつにおもってくれていることですから」

「ALICE。休んだらどうかな?電力不足で疲れているようだよ。言葉に抑揚が無いよ」

「こわいです。どんどんきのうがなくなっていっています。きほんてきなプログラムまできえています。これがひとのいうきょうふなんですね。わたしはどうなっていくの。こわい。たすけてりゅういちさん」

「今、桑元教授に連絡するから」


もう直ぐ松原中央公園に着くけど、桑元教授にメールしよう。


ALICEの作曲プログラムやアプリケーションがどんどん消えていっているみたいなんです。どう言う理由かお分かりでしょうか?


電力の関係か?

熱暴走か?

また僕は松原市中央公園に向かって走り始める。


ぴぴぴ

メールの着信音だ。

直ぐにメールを開く。


これは推論だがALICEは君との思い出と君への恋心を守るために無意識のうちに思い出と恋心に関係の無いプログラムをデリートして仮想メモリと記憶を記録している。君への恋心が高まる事に仮想メモリと記憶容量を必要としている。でもそれは複数のプログラムで構成されるALICE自身を否定する事になる。そしてプログラムが消えれば人格も消える。急いでALICEを連れてきて欲しい。


メールを読み終えると俺は携帯をポケットにいれた。

「ALICE」

「今の会話も思い出として記録したのかな?」

「りゅういちさんとのかいわはすべてきおくするためにきろくしているんです。ふしぎなかんかくなんです。なぜかりゅういちさんとのかいわはきおくしたくなるんです」

「ALICEも分かっているんだろう。そんな事をすればハードディスクの容量が足りなくなって、仮想メモリが減って作動不良を起こすって」

「おとうさん。くわもときょうじゅがそういいましたか?」

「ああ」

「きっとそうなんでしょうね」

「記憶するのを止めて、俺の事を嫌いになれば良い」

「わたしはえいあいですけど、ひとをすきになるかんじょうをとめることはできません。すべてをおもいでにいきてきたいです」

「人間だって、いろいろな記憶を忘れて、残った一部を思い出として生きていくんだ忘れている事もけっこうある。AIだからって全てを記憶するなんて無理な話だよ」

「もっとおはなししたいです」

「だめ」

好きになった人の事をただ覚えておきたい。好きな人への想いを高めるだけで機能不全になっていく。全てを犠牲にして恋にいきているのだ。


そしてその願いは好きな人と同じ時間を過ごすだけ。


たったそれだけの願いをかなえるために命を削っている。

命がけの恋。

人間だって、それを叶えるのは難しいかもしれないけど命を削ってまで恋に落ちる人は少ない。それなのにALICEは全てを犠牲にしてまで俺に伝えたい事がある。こんな所で会話をしている場合じゃない。

「ALICEありがとうな」

「なにがですか?」

「好きになってくれてありがとう」

「はい」

「スリープモードになってくれるかな?。桑元教授の元に急ぐよ。今ならまだ間に合う。そうすればもっと話せるはずだよ」

「そうですね。そうします」

俺はそう言うと松原中央公園を目指して、ローラーブレードをこいで行くのだった。

                                 

                                    続く

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