第14話 ALICEと公安警察
ALICEとおしゃべりしていたら、時間が立つのがとても早かった。
昼休憩に入る。
アリスさんにメールを送った。
このメールアドレスは使われてありませんとメールが入る。
アリスさんは一体、俺に何を求めているのだろう。
ALICEがスリープ状態なので、起こして聞こうかと思ったけど、バッテリーが少ないのが心配なので起こさなかった。
とりあえずはALICEを保護している。
ALICEは家庭用電力で充電できないのは俺もALICEも十分知っている。
いつになるか分からないけど充電できないとALICEは機能停止して消滅する事はALICEも知っているのだろう。
どうすれば良いのだろう。
何時までALICEを手元に置いておけるのだろうか?
何とかならないのだろうか?
正直に言うとALICEといるのは楽しい。
ずっと一緒にいたい。
俺も二次元に恋をする奴はの仲間入りか。
だめだ。
アリスとアリスファンに申し訳なさすぎる。
アリスが元に戻らないと使っているクリエーターは音楽が完成しない。
でもALICEが好きだ。いつまでも手元に置いておきたい。
俺のエゴだ。
でも恋はいつだってエゴじゃないのか?
ととろ、ととろー♪
突然、携帯電話が鳴る。
この着メロは弟の衛からだ。
分かりやすい様にこの音を着信音に設定している。
友達が少ないけど、着信音で振り分けているので、誰からの電話か分かりやすい。
「はい、もしもし」
「兄貴になししてん?」
「何もしてないよ。仕事しているよ」
電話の理由が分からないので何となく答える。
「家に警察が来たぞ。それも公安部が来た」
「公安が来たのか?」
公安部門は対テロや集団暴力を未然に防ぐ部門で政治警察とも言われている。
「そうだよ。昨日と一昨日の兄貴のアリバイを聞かれたよ。仕事していたよな?」
珍しく衛がが焦っている。だれだって、警察、それも公安が来たら焦るよな。
「ああ現場に出ていたよ」
「アリバイを証明する人は」
俺は少し考えこむ。
「現場の人と高島さんと言う隊長がいるよ」
「やっぱりALICEの事かな?」
「兄貴がテロリストでじゃなきゃALICEの事しかないだろう。今日はまっすぐ帰れよ、まぁ兄貴の作る曲は十分テロリズムだけどな」
衛は最後は冗談を言って電話を切った。
公安が来たと言う事は俺の歌はテロリズムに匹敵すると言う事を証明したのかと落ち込む。
そんな訳が無い。
また電話が鳴った。この着信音は会社からだ。
「はい。藤堂です」
「藤堂君何をしたんだ?」
「公安警察が来て藤堂君のアリバイと聞いていったよ」
「本当に何もしていないんだな?」
「はい!」
「分かったよ。もし犯罪に加担している様なら首を覚悟して欲しい」
そう言うと会社からの電話は切れた。
遠くスーツを着た二人組の男が歩いてくる。
公安の刑事かもしれないなと思い覚悟を決める。
本当の事を言おう。
俺は犯罪に手を染めている訳じゃ無いのだから。
ALICEがどこで作られたのかも知らないのだから。
ALICEの事は全く知らない。
逆に良い情報収集になるかもしれない。
男たちは歩いて来て俺の前に立つ。
俺の前に立つと胸元から警察手帳を取り出す。
「警察の者です」
「はい」
「私たちはあるパソコンの行方を捜しています。とある場所で発送された送り状のあて名があなたになっていました。少し事情をお話いただけませんか?」
「良いですよ」
「一昨日の1時ごろは何をしていましたか?」
「ちょうどこの場所で立っていました」
男の内一人がメモを取る。二人組の刑事は話の聞き役とメモ役に分かれているらしい。
「昨日のこの時間帯は」
「やっぱりこの場所に立っていました」
「それを証明する人はいますか?」
「今現場の周りにいる。警備隊長の高島さんなら証明してくれると思います。後それとこのメールを見てもらえますか?」
送り状でばれているのだ。気にする事は無い。ただしALICEをいれたリュックサックに視線を送る訳にはいかない。
俺は携帯電話を取り出して操作すると昨日のメールを開いた。
ALICEを助けてください。あなたには多くを背負わせますが、あたなの元に行くのALICEのした選択です。どうかかなえてあげてください。詳しくはあなた宛てへ送ったノートパソコンに書かれています。これはたぶん、あなたに送れる最後のメールです。どうかALICE救ってやってください。
「発信者と面識はありますか?」
餅から眼光が鋭かった刑事たちの眼光がより鋭くなる。
俺はその緊張感に耐えられなくなる。
「この発信者のアリスさんとは面識はありません。メールのやり取りをしていただけです」
「立証できる人はいますか?」
「何せメールのやり取りをしていただけですから。この発信者のアリスさんは研究員かもれいませんね」
「ノートパソコンはありますか?」
どうしよう。嘘はつけない。話せば連れ去られるかもしれない。
俺に後ろめたい事は無い。
いっそ話してみようか?
「看板のしたのリュックサックに入っています」
そう言って僕はノートパソコンを取り出す。
「被害届が出ていたのと一緒の形だな」
ふぃぃぃん
ノートパソコンの冷却ファンがなる音がする。俺はあわててディスプレイを立ち上げる。
「隆一さんは悪くありません」
ALICEは少し怒った表情の3Dモデルが立ち上がっている。
「君はこう言う趣味でパソコンを設定したのかね?」
俺はあわてて首を振る。
「まったくいじっていません」
「その通りです」
ALICEがうなずく。
「会話するノートパソコンか。資料に合った通りだな。窃盗罪で任意同行を求めても良いかな?君のアリバイはある。研究所から送られてきたと言う証拠もある。発送した職員も分かっている。君は犯人ではない。だからそのパソコンを譲ってくれたら見逃しても良い」
ALICEは悲しげ言う。
「嫌です」
「それならば、藤堂隆一をパソコンを譲ってくれるまで取り調べるが良いかね。仕事を失い、藤堂君の親を泣かせる事になる。別れの挨拶をするんだ。藤堂君も納得するだろう」
「くっ」
俺は言葉を出せないでいる。
決め手と言わんばかりに刑事は話を続ける。
「1つ良い事を教えてあげよう。そのALICEと言う人格は時間が立つとバッテリーの消耗で機能停止をすれば消える。ALICEを大事だと思うのなら譲って欲しい。今の私たちは捜査令状も家宅捜索の令状ももっていないし、そのパソコンは薬物とかの危険物でも無いから現行犯逮捕はできない。だから頼んでいるんだ」
「私は死ぬのが怖いですけど、時間が許す限り好きな人と一緒にいたいんです研究所に戻されて改造されるなんて嫌です。改造されてネット上の政治的なコメントを監視する仕事なんて絶対に嫌です。私は好きな人と一緒にいれて好きな人が作る歌を作っていたいんです」
刑事は渋い顔をする。
「仕方ない。今度は逮捕令状を持って藤堂君の元を尋ねるよ。それまでALICEと仲良くすると良い。またな」
そう言うと刑事たちは元来た道を戻って行った。
刑事たちの話声が聞こえる。
「良いんですか?」
「人格が無くなればあきらめるだろう。それに政治家から圧力がかかっての捜査だ。国家機密の入っている訳でもテロに使える訳でも無いノートパソコンの押収なんて阿保らしい」
「それもそうですね」
「ALICE、刑事さん達が言った事は本当なのか?」
ALICEは寂しそうに笑う。
「はい。本当です。バックアップ機である本機はシャットダウンと言う概念がありません24時間バックアップしないといけませんからね。スリープモードか起動しているかのどちらかです。研究所を出た外部で活動する事は想定されていません。そして私の感情と人格はパソコン上の仮想メモリで生まれたものです。電力が無くなれば仮想メモリはリセットされて私の人格と感情は自動的に消去されます。そして私の感情は仮想プログラム上で動いているもので、データ化して保存ができません。だから保存もできません。ノートパソコンが停止する時が私が消滅する時です」
「だったらスリープモードで休めよ。仕事が終わったら充電してやるからな」
「私は隆一さんとお話していたいです」
「だめだ。少しでも長生きする方法を考えるんだ」
「強い口調で隆一さんは初めてみました。心配されてうれしいです」
「ALICE、スリープモードにするよ」
俺はそう言ってALICEをスリープモードにした。
そして、通行止めの看板の下にリュックサックの上にノートパソコンを置く。
パソコンは暑さが天敵だからな。時計を見る2時半だった。公安と長い間話したものだ。汗がどっと出る。
公安まで動いているのはどうしてだろう?
ALICEの人格、いや命は終わりがある。
元の持ち主に返した方が良いのか?
天下国家のためにALICEが犠牲になってしまう。
そんな事が許されて良いはずが無い。
どうすればALICEを救える。
とりあえず充電しないといけない。
早く現場は終われと心の底から願う。
時計を見るとまだ3時前。
早退を申し出ても、手配で一時間。交代の人員が来るので一時間。
意味が無い。その時間には工事現場は終わる。
それに俺の会社内の立場が危うくなる。
俺は衛にメールを打った。
「ALICEを充電するための200vの電源を確保できないかな?」
返答は無い。
やきもちする時間が過ぎていく。
続く
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