第2章 初めての世界
第10話 ALICEのためにバラードを
俺は朝早く目が覚めたので、シンセサイザーに向かっていた。
今日はALICEのためにバラードを書かないといけない。
約束したからな。
タイトル ALICEのためのバラード(仮)
タイトルは重要だけど今はまだいい。
自分の中にある旋律を探ってみる。
バラードは旋律と歌詞が大切だから丁寧に作らないといけない。
だめだ。
どうしても出だしのメロディが歌に形がないけれどになる。
俺はノートパソコンを立ち上げて、バラードと検索する。
たくさんの曲が出て来る。
片っ端から聞いていく。
良い曲ばかりだ。
バラード系は悲しい曲が多いと言う勝手なイメージを持っていたから避けていたけどバラードを学ぶ良い機会かもしれない。
やっぱりバラードは旋律だなとも思う。
それと同時に自分の才能の無さを思い知らされる。
それだけ努力してこなかったと言う事だろう。
ニコニコ動画に楽曲を投稿するようになったのは自分の作品を簡単に発表できる場所が与えられたと歓喜したからだ。自分の才能を試せる場があるって素直によろこんでいた。
だけど作る曲は駄目なものばかり。
周りからも評価されない。
才能が無いと俯いてばかりだった。
それでも小さな夢にすがって音楽を続けている。
そんな事を考えながら音楽を聴いている。
バラードがより切なく感じる。
パソコンんの時計を見る。
7時。着替えて仕事に行く時間だ。
今日は気合と入れていこう。
それとALICEを連れていくためにALICEの入っているノートパソコンを立ち上げる。妙に正義感の強い弟に勝って二捨てられたりするのを避けるためだ。それと古い携帯電話を取り出して、ALICEにつないだ。ALICEをカバンの外に出しておくわけにもいかない。携帯電話ケーブルででつないで外の世界の映像を見せてあげたかったのだ。仕事道具を持って歩く都合上、ALICEをリュックサックに入れる。そのためにケーブルと携帯電話を介して、外の画像を見せてあげる事ができると思う。
「アリス起きて」
フィーン。冷却ファンの音が鳴る。
「おはようございます。隆一さんっひゃ」
ナイトキャップをかぶったALICEのグラフィックが立ち上がる。
「今日は外の世界を見せてあげるよ」
「本当ですか?自己診断プログラム起動中」
「本当だよ。暑いけど外の世界を見てみよう」
「って人が寝ている間に何をしたのですか?このエッチ!」
「まぁまぁ。携帯電話のカメラとマイクは動いているかな?」
「はい。問題はありません」
「充電は大丈夫かな?」
「一晩ぐっすり寝たので12時間くらいなら充電は持ちますよ」
「家においておくと危険化もしれないからな。画面を閉じてもスリープモードにはならないかな?」
「ソフトが動いていれば大丈夫だと思います」
「隆一さんのエッチ。こんな状況で使うんですよね」
僕は制服に着替える途中にALICEに言われる。
仮想人格プログラムって性欲ってあるのかな?
着替えて準備するとリュックサックに荷物を入れる。
そして、リュックサックのチャックを少し開けて、ALICEと携帯電話を繋ぐケーブルを出して胸ポケットに携帯電話を入れる。
「それよりもリュックサックに入れて、ALICEは熱暴走したり、壊れたりしないかな?」
「バックアップ機として頑丈に作られていますし、急なエアコンの停止なども想定して熱にも強いです」
「だからこんなに重たいんだ」
「ないか言いましたか、隆一さん」
低い声が携帯電話から聞こえる。
親が用意してくれたトーストとコーヒーを飲むとリュックサックを背負い家の外に出る。
「えらいな。良く話す事を我慢できたね」
「会話するパソコンが存在しない事くらい知っていますからね。だから黙っていました。隆一さんと一緒にいたいですからね」
そして僕は家のドアを開けた。
「外の世界を見ようか」
「はい」
こうして俺とALICEのちょっとした冒険が始まるのだった。
続く
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