第8話 アリスさんが寝ている間に

着替え終わると予備のノートパソコンを立ち上げ、ニコニコ動画の自分のサイトを確認してみる。

一番最後に作った曲の再生数わっと!

総裁整数23、コメントは変わらず、マイリスト数の1も俺が自分でマイリストしている分だ。

何をしているのだろう?

気を取り直してバラードだ。

音楽制作するためにノートパソコンを片付けて、机に置かれたデスクトップパソコンとパソコンに繋がれたシンセサイザーの前に座る。

マイナー調の方が良いのか?

引いた事ないぞ?

ドアが乱暴にノックされる。

「兄貴やっているか?ALICEはどうした?」

「家庭用電源では起動電圧は低いから、スリープモードで寝ているよ」

「もし本当にこのノートパソコンが本物のALICEのバックアップ機だとしたらどうするんだ?」

「まぁ、これだけ高性能で市販品でないノートパソコンを見ると本物かもしれない」

「そのノートパソコンをどうするんだ」

「アリスさん、いやALICEが本人が助けを求めているなら保護して助けたい」

「変な押し売りじゃないのか?」

「俺の所に来るにはピンポイント過ぎるよ」

ボーカロイドソフト、ALICEを使っている人は数多い。わざわざ俺の所に送ってくくるなど考えもつかなかった。

「それにこれはメル友だったALICEが助けて欲しいと尋ねて来たんだよ。そう言うメールがあったんだ」

衛の表情は怒りに満ち溢れている。

「ネットの世界、それもメールで知り合った人間なんか信用するなよ!兄貴は正直に言うと素直で疑う事を知らないからな!いつも危ない方向、間違った方向に行く。そこを心配しているんだ!人の話を聞けよ。パソコンの電源落として、シンセサイザーいじるなよ」

俺には分からないが衛はキレている。

「そうかな?」

シンセサイザーを触っていたのは、反論ができなかっただけ。

「自覚無かったのかよ。人が真剣な話している時にパソコンを触るなよ。こっち向けよ」

俺は仕方なくパソコンとシンセサイザーの電源を落とし、衛の方に向く。

「警察に届け出た方が良いのかな?」

俺は暢気に答えた。ALICEと一生の別れにはならないだろうと考えている。

「捨ててしまえよ。そんな悪趣味なもの!」

「何に切れているんだよ」

ALICEに頼まれた事だし、助けて欲しいと言われている人を見捨てる事は出来なかった。ALICEに恋心の様を感じている俺もいる。

「さっき、フリーソフトのALICEをダウンロードしようとしたら、サイトが閉鎖されていんだよ」

「マジか?」

俺は驚いて声が裏がえる。本物のALICEだと思っていたけど、そこまで大きな話になっていたとは思わなかった。

「そのノートパソコンはやばい。捨てた方が良いよ」

「俺は本物のALICEなら助けるよ」

俺は覚悟を決めた声を出す。

「そう言うと思ったよ。どうなっても知らないかなら。危ない橋を渡るんだからな。そのノートパソコン絶対に捨てろよ」

ばたん

衛は勢いよく部屋のドアが締め、部屋から出ていった。

俺はそれを確認すると、気分転換をする意味でも楽曲作成をしようと思う。

バラードね。

シンセサイザーの鍵盤を押してみる。

どうやら俺の中にはバラードは存在していないようだ。

作曲家とか作詞家とかシンガーソングライターとかボカロPとかいつもすごいと思う。

俺は恋するボーカロイドと言う曲に影響を受けて、ALICEをキャラクターと見立てたラブソングを作った事もある。

まずはバラードを耳コピしてみるか?

そう思いながら、ノートパソコンの電源を入れて、ニコニコ動画にアクセスしてボカロバラードのタグをクリックして曲を探すのだった。

                                  続く



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