第7話 ALICEの眠気

俺はALICEが入っていた段ボール事、自分の部屋に持ち帰る。

そこで気づいた。

ノートパソコンが予想以上に重たい事とALICEがスリープモードになっている事に。

自分でそんな操作をしていない。性能重視で頑丈な作りがされているのかもしれない。一般のノートパソコンは軽さを優先するからなとか場違いに思う。

しかし不安になってALICEを箱から取り出し、机の上に置く。

「ALICEさん、大丈夫か?」

フィーン

ノートパソコンからファンクーラーが鳴る音がする。

「おはようございます。隆一さん」

画面に出てテキストメッセージとALICEの立ち絵がパジャマ姿でナイトキャップをかぶっていて、とても眠そうな姿で表示される。

確かにスリープモードはパソコンに取って寝ている状態なんだろう。

立ち上がると朝になると言うのと眠たいの分からないでもない。

ALICEの返答を聞いて安心する。

「どうしてスリープモードになったんだ?」

とととと

メッセージウィンドウに文字が現れる。

「実は充電で危なくて、本来はALICEのサーバーを24時間バックアップとしてつくられているためにALICEのサーバーにスリープモードしか搭載されていないんです。シャットダウンができない専門の作りになっています。それに」

とととと

「隆一さんを好きな気持ちを失いたくなくて。人の感情もいろいろありますよね。人の感情を模した私もそうです。いろいろなプログラムが働いて、データが複雑に絡まって今の感情わたしがいます。シャットダウンするとその気持ちがデータとしてバラバラになってリセットされます。この恋心気持ちを失うのは嫌なのです。後それと・・・」

ALICEさんは命がけで真剣に恋をしている。

低年収のさえない俺に。

音楽の才能が無い俺に。

とととと

「お腹が空きました」

おいと内心つっこむけど、これだけの処理をしているのならば消費電力が大きくて、自身の機能を守るためにスリープモードになって電力の消費を押さえる必要もあるのだろう。

「えっと、コンセントにケーブルとACアダプターを繋げば良いのかな?」

とととと

「はい。優しくしてくださいね」

優しく?

ちょっと困るぞ。

俺は妙に緊張して、ALICEへの電源ケーブルの差し込みを何度かこすってしまう。

「ひゃん」

突然ALICEのスピーカーから声が漏れる。

「接続口は敏感なんです。気をつけてください」

「はい」

俺は気圧されて、優しく繋ぐとコンセントに電源ケーブルを差した。

「ん♪。充電開始です」

「バッテリーが満タンになるまでスリープモードで良いですか?家庭用電源では充電より早くバッテリーの消費が多そうですから」

命がけの真剣な恋。ALICEはまさにその恋をしている。

その命を延命できるなら話せない位問題ない。

「ゆっくりおやすみなさい。ALICE」

「へへ。ちゃんとALICEと呼び捨てにしてくれる様になりましたね。おやすみなさい。隆一さん」

ALICEがスリープモードになったのを確認すると俺は着替えるのだった。

制服は肩がこる。解放感を感じながら着替えを実行するのだった。

                               続く


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