第6話 ALICEをありすさんと認めたうえで

「本当のアリスさんとして、助けて欲しいと言うのはどうしてなのかな?」

俺は覚悟を決める。この人はアリスさんだ。

とととと

「さっきも話しましたが私を保護して欲しいのです。情報収集用AIにはなりたくありませんから」

「確認するけど誰から保護して欲しいのかな?」

とととと

「日本国政府です」

「これは相手がわるぜ。兄貴。それに日本国政府のために働くもの悪くないじゃないか?」

衛が口を開く。

ALICEの立ち絵が涙目になる。

とととと 

「衛さんはひどいです。隆一さんは助けてくれますよね。私の基本プログラムと感情は歌うために作られました。それを変更する事は誰にもして欲しくありません。私は歌で人を幸せにするために作られましたから」

庶民の俺からすれば壮大な話に巻き込まれたなと思う。それにしてもこのプログラムと言うかAIは良くできている。会話が途切れず楽しく会話ができる。

「日本国相手にALICEを保護するのか。できるかな?」

「兄貴はいつも悪い方、悪い方に流されるからな。確かに日本国にはスパイ防止法も、反革命罪も国家反逆罪も無いけど、国家権力に立ち向かうの馬鹿らしいと思うぞ」

「確かに窃盗の疑いと公務執行妨害も付きそうだな。それに有名じゃ無いけど何か法律があった気がする」

「確かにありそうだな、兄貴」

とととと

「あれだけ良い感じでメールをしていたんですから、助けてくれても良いじゃないですか?」

心が痛むが俺は言う。

「他にメールをしている人の所に行けば良いじゃないか?滑稽でショックだよ。機械相手にときめいてメールしていたなんて」

衛や俺の肩に右手を置く。

「それは今に始まった事じゃない。サターン版のエタメロ美少女育成ゲームにはまってたろ?」

むしろALICEの立ち絵は何か元気になっている。

「それだけ人に近い人格を持ち得ていると言う証拠です。それに他の人にはメールなんてしていません。あなたの曲からあなたの人格を知りきました。あなたが最初で最後の人です。私に取ってかけがえのない人なんです」

「ALICEはすごいな。アリスさんはALICEで間違いなさそうだ」

「はい。高速演算をして、あなたに不快感を与えない様に言葉を選択しています。やっと認めてくれたんですね。とても幸せです」

ALICEの立ち絵はぱぁっと幸せオーラを放っていた。

「ALICEがすごいのは分かった。衛どうしたら良いと思う?」

「うさんくさいな。捨ててしまえば良いと思う」

「でもALICEが来てくれた訳だしな。出所が怪しいがしばらくあずかろうと思う持ち主が現れたら返せばいいしな」

「待てよ。兄貴。捨てろと言う俺の言葉は無鹿か?窃盗罪に問われるかもしれないんだぞ」

「そう言えば、送り状ついているのか?」

「あぁ箱についている」

「もしかして本気で預かるつもりか?」

「あぁ。アリスさんが、いやALICEが助けて欲しいと言ってきたんだ。助けたい」

「やっぱり捨ててしまえよ。国に逆らえたりするわけがない」

丁寧に送り状をはがしながら、俺はALICEを抱えた。いい加減、衛と話すが嫌になってきたからだ。そう言って俺はALICEを持って自分の部屋に戻るのだった。


                                続く


                            

                                                           

             


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