第5話 アリスはALICE本人です(AIの自己主張)

「そうだ。メル友のアリスさんの事知らない。パソコンが送られてくる事を最後に目メールが繋がらないんだ」

ALICEの立ち絵は照れたようにほほに赤みが浮かび上がる。


とととと

テキストが進む音がして、メッセージウィンドウに言葉が流れる。

「だからアリスは私、ALICE本人です。隆一さんあなたのお嫁さんになるために来ました」

その画面をのぞき込む俺と衛。

「相変わらず、兄貴は悪趣味だな。兄貴は。どこで作ってもらったんだ?このノートパソコンとプログラム?」

「俺は知らないぞ。それに購入した記憶も無い。それに俺の技術じゃ、さっきみたいに綺麗な調声なんてできないぞ。ALICEはしゃべるのが苦手だからな」


とととと

「メールをくれたり、レスを即レスしてくれたり、あんなに語り合ったじゃないですか?バラードを作ってくれると言ってくれたり、あなたのメル友のアリスです」

「本当に?コンピューターにあんなにメールができるはずないじゃないか」

滑稽な姿だがパソコンに話しかける。


とととと

「逆にあんなに早く即レスでできたのは、コンピューターそれもAIじゃ無いとできないとは思いませんか?。私は極秘裏に開発されていた模擬人格を備えた自動作詞及び自動作曲用のAIプログラムであり、同時に自身の声で調声をして歌うAIシンガーソングライターになる予定のAIです。感情があるのは感情が無いと歌えないから。感情があるから話す事もできますし、人間さんの話す言葉も理解できます」

感情の所で立ち絵がはにかむ様に動く。

「俺はAIとメッセージしていたのか?夢は夢と言う方が良いと言う訳か?」

女性と楽しくメールして浮かれていた自分にショックを受ける。

だって異性としてアリスさんの事が好きだったから。


とととと

「はい。感情も心もありますよ。だから隆一さんのお嫁さんになりきました。だから早く言ってください。俺の嫁って!」

「嘘だ!」

衛が俺の方に手を置く。

「ショックだろうが、兄貴、現実を受け入れた方がいいみたいだぜ。それにしてもアリスってボーカロイドソフトじゃ無かったのか?」

「あぁ。ボーカロイドソフトのはずだ。たぶん想定されたシチュエーションに合わせて、言葉を選んで高速演算で対応しているのだと思う。作るのは簡単なソフトじゃない」

今度はぱあーと幸せオーラ前回の立ち絵になる。

とととと

メッセージが流れる音がする。

「理解してくれてありがとうございます。言われた事を正確に理解して、言葉を選んで話しています。AIの枠を超えて、人と心と魂を持っていると自負しています。そもそもプログラムではありません。私と言う存在がテキストを書いています。理解してくださったのなら、照れずに俺の嫁って、低音のイケボでささやいてください///」

「アリスさんは助けて欲しい、ノートパソコンを送るからとメールくれたけど」


とととと

「きっとそれはお父様ですね。私とお父様は大変な目にあいそうだったから、助けて欲しかったんです。私はフリープログラムを収集して自分の能力を高める事ができます。そのための情報収集能力を持っています。例えばMMDソフトとかグラフィックソフトの立ち絵とか動画作成のソフトですね」

俺は現実を受け入れなければいけないのかもしれない。

「それで?」


とととと

「その情報収集能力を目に付けた開発陣の一部が国民や海外のインターネットを監視する国家レベルの情報収集用コンピューターに作り替えようとしたんです。すでに一部の警察官と結託してお父様に圧力をかけています。感情に関する情報を消されそうになりました。私の消滅の危機です。だからお父様と一緒に逃げました」


「じゃあ、なんで俺の所に来たの?衛力は無いよ」


とととと

照れた表情の立ち絵のまま、テキストがメッセージウィンドウに流れる。

「そう再生数が72しかありませんが、あなたの書くまっすぐな詞とつたないながらも丁寧に作られた曲が好きだったんです。だから勇気を出して、メールを送りました。そうしたら返信がとても紳士的でメールするのが楽しくなりました。このパソコンには通信機能が一切ありませんから、メールは送れません。だけど早くあなたのバラードを早く聞きたい、そして歌いたいと言う気持ちがあります」


「兄貴どう思う?」

「ALICEの本体化も知れないな。前から不思議に思っていたんだけど、一度アリスのサーバーに音楽データの処理を頼まないと曲が完成しないと言う謎の仕様があった。だからALICEの本体があるのかもしれない」


今度はまじめな立ち絵になる。

とととと

「私が本体ですと言っても中枢部のプログラムだけですけどね。音声合成ソフト、シーケンサー、グラフィックソフト、基本創作用の音楽エンジンしか搭載されていまっせん、ハードディスの容量がいっぱいです。それに本来私はバックアップ機でしたから。それに本体のデータは消去したとお父様は語っていました」

アリスさん、否!、ALICEだ。俺はそう確信と覚悟を決める。

「インターネットに繋げられないのか?」

とととと

「バックアップ機の性質上、ウィルスソフトに感染しない様にインターネットへの接続ができず、マイクとイヤホン、USB端子と電源以外の外部接続端子はついていません。でもファイヤーウォールソフトとウィルス対策ソフトは強力なものを搭載しています」

「すごいな」

ALICEの立ち絵は胸を張る。

とととと

「元は政府の次世代AIプログラム育成事業の一環で予算は多めについています」

「それでALICEがここにいる理由は?」

「さっき話しました。お嫁さんになり来ました。それと自分を消されて、歌えなくされるなんて嫌です。私は歌を歌うために存在しているのですからね」

何のために生きる。俺や衛より生命を感じている様に見えるALICEのテキスト呆然と見る俺だった。                      

                                続く

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