第21話 魔女ミユキ
俺はもう何もかも判らなくなって足元を乱しながら闇雲にその場から離れようとした。しかし悪い時には悪いことが重なるものでちょうどこの時ミユキという名の、いつも花田に秋波を送っている女子生徒がやって来て、更なる引導をこの俺に渡してくれたのだった。子悪魔的な、コケティッシュな感じのする女の子だったが、その悪魔的な超能力でもあったものか、花田一派らの会話と側に隠れている俺の様子までちゃんと摑んでいて、花田にこうご注進に及んだのだった。「おーやぶん(とは花田の渾名)、末成り君、すぐそこにいるよ。ほら」と隠れている俺を指差してくれたのだ。のみならず「可哀そうに。末成り君、顔を真っ赤にしてるじゃない。脅かしちゃダメだよ。この子、親分に認められたいんだから。ね、末成り君」。頭の中がすっかり真っ白になった俺はミユキも誰も委細構わずにこの場からただ離れようとする。誰かの足に躓いて見っともなくも床に転んだ。「痛いわねえ。ちょっとお、気を付けてよ!」声で女子生徒と知れたが謝るでもなく立ち上がって、更に誰彼にぶつかりながら去って行く。その俺の背に「おい、末成り、どこへ行く?!謝らんか!首席のお前がいなくなってどうする。俺がガリ勉村田だと皆に宣言せんか!」と花田。それへ野口、佐藤、ミユキらの大きな嘲笑が重なった…。
こんな顛末のあとでは俺は勉学に対する一切の意欲を喪失してしまった。予習復習もしなくなり成績は下がり続けた。話を飛ばすが三年生になる直前の進路指導時に担任から「どうした?」と注意を受け「そもそも(大学に)進学するつもりはあるのか?」とも詰問されたが最早どうでもよかった。
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