第20話 花田のひとことが聞きたい
その野口が親分に「ところでさ、親分、気づいてる?これってさ、つまり奴が首席を奪ったのはお前への意志表示だぜ」と余計なことを云う。「ん?意思表示?意思表示って…何の?俺への挑戦、負けじ魂ってか?」「笑わすなよ。奴にそんな根性なんてあるかよ。そうじゃなくって、惚れてんだよ、お前に。女みたいに。ホントはお前に仲良くしてもらいたいんだけど、気が弱くって云い出せないもんだからこうやって成績でアピールしてお前に認めてほしいんだよ。声をかけてほしいのさ、お前からな。うふふ、可愛いじゃないか、花田。今度会ったらひとこと褒めてやれよ。そしたらアイツ、飛び上がって喜ぶぜ」やおら向かって行って野口の胸倉を摑む度胸は毛頭俺にはない。しかしこうまで白痴(コケ)にされればもう充分だった、すぐに立ち去ろうとしたがしかしどうしても花田のひとことが聞きたかった。絶対に彼らの目に入らないよう他生徒らの陰に逃げつ隠れつしながらかろうじて俺は踏みとどまる。だが豈図らんや結局それが俺に道を踏み外させるべく決定的な一撃と相なったのだった。
「つまらんことを云うな。俺と親しくしたいんだったら自分から声をかけてくればいいじゃないか。ふん、もしお前の云ったことが本当だったらそんなやつは男じゃない。前から虫の好かないやつだが、それなら今度会った時にこう云ってやろうじゃないか。おい、末成り、テスト頑張ったじゃないか。ご褒美に一つ、今度デートにでも誘ってやろうか?ってな。それで怒って向かって来るようなら見直してやるぜ」と花田はそう云ったのだった。デート云々を聞いて野口と佐藤が声を立てて笑う。野口が「無理、無理」と大仰に手を振ってみせる。
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