第15話 よき友は人生のすべて

ところでちょっと話が逸れるが、ここで論じている友の有無やその功罪を語るに、かの大・正覚者たる仏陀の言葉でこういうものがあるので紹介したい。「良き友の存在は仏道修業のすべてである…と云ってもいい。お前たち(仏弟子)もこれからは良き友の為にひたすらに生きよ」というものである。浜田と高木はこれへの寓意として使わせてもらったとも云えるが、しかし実はそんな寓意どころではない、お釈迦様のこのお言葉の何たるかを、切ないほどに身で感じさせてもらえる人が、このあと数章を経て登場することとなる。はからずもそれは女性だったのだが、それを語るのは今はしばらくお待ち願いたい…。

 さてこんな理など未だつゆ知らず、迷妄の真っ只中にあった俺は何とかクラスメートの好意を得ようと、ただひたすら勉学に勤しむこととなった。予習復習を怠らず心中で『ちきしょう、ちきしょう』と毒づきながらの凄惨な行だったが却ってそれが励みになったものか、一年生の終り頃にはかなり結果が伴うものとなっていた。しかしその結果とは単に成績だけのことで、皆からの好意・厚遇は相も変わらず得られず、〝孤独の村田君”でしかなかったのだ。都度行われる全校的テストで好結果を出して、成績優秀者として廊下の掲示板に名が張り出されることがあってもそれは同じだった。呻吟の日々が続いたがそうこうする内に迎えたその年の期末テストでのこと、出題への読みがピタリと当たって、その試験結果には充分過ぎるほどの自信があった。いつものように廊下に模造紙で張り出された成績優秀者名簿を見ようと、俺は1階職員室横の掲示場へと赴いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る