第二十五話

 午後九時。男子サイド。

 男子用の寝室しんしつの中で、隆太りゅうたは聞いた。

「なぜ世界には、男と女がいるんだと思う? 答えてみよう、翔真しょうま君!」

「ええ?! えっと~、うんと~。……分かりません~」


 すると隆太は、自信満々じしんまんまんに答えた。

「なぜ世界には、男と女がいるのか? 答えは簡単かんたんだ。男と女は夜になったら、同じ部屋でイチャイチャするためにいるんだ~!」


 翔真は、目をかがやかせた。

「おお~! なるほど~!」


 隆太は、続けた。

「今は夜である! そして向こうの寝室には女子がいる! ならばすることは一つ! これから女子の寝室に行って、女子とイチャイチャするんだ~!」


 翔真のテンションは、上がった。

「おお~! すごいです、隆太さん!」


 隆太は、大きな声で聞いた。

「さあ、僕と一緒に女子の部屋に行きたいという、勇者ゆうしゃはいないか?!」


 すると翔真が、手を上げた。

「はーい!」


 それを見て、隆太はつぶやいた。

「む。翔真君、一人だけか。しょうがない、二人だけで行こう。女子と遊ぶためのトランプを持ってと……。さあ、行こう、翔真君!」


 すると健太けんたが、真剣しんけん口調くちょうで聞いた。

「あの、隆太さん。まさか本当に女子の部屋に、行くんじゃないでしょうね?……」 


 それに気圧けおされた隆太は、ごまかした。

「え? あ、いや、違うよ! ちょっと翔真君と一緒にトイレに行くんだよ! ね、翔真君?!」


 翔真は、正直に答えた。

「え? 僕はトイレなんかに、行きたくないですけど……」


 翔真の口を手でふさいで、隆太は続けた。

「いや、翔真君はちょっと寝ぼけているんだよ、きっと。さあ行こうか、翔真君!」


 健太は、冷静れいせいに聞いた。

「トイレに行くのに、どうしてトランプを持って行くんですか?」


 すると隆太は、動揺どうようした。

「え? これ? これは、ええと、うん、ひまつぶしだよ。翔真君のトイレを待つあいだの!」


 表情をくもらせて、健太はクギをした。

「どうしてもトイレに行くって言いるのなら止められませんけど、隆太さんは一応、副会長ふくかいちょうなんです。軽率けいそつな行動をされると、こまるんですが?」


「しないしない、軽率な行動なんて! さ、行こう、翔真君!」と隆太は翔真と一緒いっしょに、男子の寝室を出た。翔真は、聞いてみた。

「隆太さん。結局けっきょく、どこに行くの?」


 ニヤリと笑った隆太が答えた。

「男のロマンを求める、冒険ぼうけんだよ!」


 そして二人は、女子の寝室の前まできた。


 隆太は小声こごえで、翔真にげた。

「ちょっと待っててね、翔真君。今、女子に話しかけて寝室のドアを開けてもらうから」

「はーい!」


 隆太は取りあえず、ドアをノックした。 

 すると女子の寝室の中から、ななみの大きな声が返ってきた。

だれ?! そこにいるのは?!」

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