第二十二話

 私はちょっと不安になって、聞いてみた。

「え? どういうことですか?」

「うん。今日は私たち女子のはん山菜さんさいるんだけど、男子の班は魚をってるの。ペンションの近くの川で」

「え? そうなんですか?」

「うん。魚釣りって、運が必要なこともあるでしょ? 釣れる時はたくさん釣れるけど、釣れない時は全然釣れない、みたいな」


 私は、少し納得なっとくした。

「あー、なるほど……」

「だから比較的確実ひかくてきかくじつに採れる山菜は、しっかりと採っておきたいの!」

「なるほど、分かりました!」

「ま、でも楽しんでやることも必要よ。春花さん、あなた釣りをしたことはある?」

「いいえ。無いです」

「そう。二日目の女子の班は、釣りをするからね」


 私はちょっと、戸惑とまどった。

「え? そうなんですか?」

「そう。そして男子の班が、山菜を採るの」

「へえー」

「そして女子も男子も、山菜が生えている場所と魚の釣り方をおぼえるって訳!」

「なるほどー!」


 納得している私を見ながら、優希ゆうきさんは続けた。

「でも一番大切なのは、ケガや事故を起こさないこと! 安全第一あんぜんだいいち!」

「なるほど……」

「じゃないと、ちょっと面倒めんどうなことになるからねー」


 私は、またちょっと不安になった。

「どういうことですか?」

「うん。生徒がケガをしたり病気になったら『おとまかい』の会長、今年は、ななみさんね、が草間くさま先生に連絡れんらくすることになってるの。すると草間先生がむかえにきて『お泊り会』は一旦中止いったんちゅうしになるの」

「一旦ですか?」


 優希さんは真剣しんけんな表情で、説明してくれた。一旦中止するが生徒のケガや病気が治ったら、また『お泊り会』をやり直す。皆が無事ぶじ正味三日間しょうみみっかかんごすまで、何度でもと。

「何度でも、ですか……」

「そう。何度でも、やり直すの。はっきり言ってイヤでしょう、それは」

「そうですね……」


 優希さんの表情は、ちょっとくもった。

「だから『お泊り会』の会長には、すごいプレッシャーがかかるの……」


 私は、そうだろうなと想像そうぞうした。

「そうでしょうね……」

「ま、でも今年は安心だけどね」

「え? どうしてですか?」

「今年の会長は、ななみさんだからよ。ななみさんは今の大海たいかいの生徒の中で一番、たよりがいがあるから」


「なるほど……」と私はペンションにきてからの、ななみさんの的確てきかく指示しじを思い出して納得した。

「そして三日目は何をするかというと……。って、ああ。それを見てごらん、春花はるかさん」


 私は山道やまみちに、しゃがみんで見てみた。

「え? これが山菜ですか?!」

「いいえ、これは花よ。キクイモの」

「へえー。ヒマワリみたいな花ですね」

「うん、それが特徴とくちょうなの。さ、花の下をってみて!」


「はい!」と私は、地面を掘った。するとショウガのような形の、イモが出てきた。優希さんは、教えてくれた。

「それが、キクイモよ。ちゃんと食べられるから、たくさん採ってね!」


「はい!」と私は地面じめんを観察して、ヒマワリのような花を見つけるとその下を掘り、たくさんのキクイモを採った。布のふくろはキクイモで、いっぱいになった。 

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